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Q.宝塚記念の思い出を教えてください。

さーて、今回の質問はさっぱりした質問だな。
宝塚記念の思い出か。

大昔はPATも無いし、東西の平場のレースはそれぞれの商圏でしか販売してなかったり、現場でレースを見るのが好きだった俺としては、関西圏のレースってのは思い入れが少々少ないんだよね。

ただ、１つ。
大学の２年だった頃かな、3年だったかな？
まぁ、その頃からある意味「博打の権化」みたいな状況だった俺は、大学も行かずに土日は中央競馬に、その合間合間に「麻雀」「地方競馬」「パチンコ」を毎日のようにハシゴしてたわけだ。そんな年の３月、博打三昧を一緒に過ごしてた悪友が、「なぁ、7号･･･。俺、スゲーネタ仕入れちゃったよ。一緒に稼ぎまくらねーか？」と声をかけてきた。

まぁ、なんて事は無いパチンコの攻略ネタだったんだが、どうせ眉唾物だと思っていたらこれがまぁ「相当使えるネタ」でね。多少修行は必要なんだが、1週間もすればゴリゴリに出し放題なネタだった。

今でこそ、こんなネタが出りゃ、即島閉鎖でメーカー側が損失補てんするような話にまで発展するような状況だろうけど、その頃はまぁピンフでな･･･もとい、平和でな。ゴリゴリに抜ける攻略法があるにもかかわらず、島閉鎖はおろか、普通に打たせてくれる店舗も沢山あったわけよ。

とはいえ、1日で楽に「10万ー20万」は抜けるから、大学2年だか3年にして手取り月収「300万オーバー」とかになっちまった訳だ、俺。

もう、大学なんて行ってる暇は無いよね。
好きだった競馬も、好きだった麻雀もしばらく中止！ってな感じで、朝から晩まで「ホール」に通い、マークされないように、A店では「2万」、B店では「3万」、ってな感じで、都内の10店舗くらいをローテーションで回ってたんだが、2ヶ月くらいたつと、そりゃマークも厳しくなる訳よ。

もうね、大人ってエグイわけ。
いたいけな青年に対して、いかにもチンピラ風情でシャツの隙間から刺青が見え隠れするようなスキンヘッドの兄ちゃんにさ、「よー青年！景気よく出してやがんな！その玉俺にくれよ！」とか絡まれるようになってきてな。店が雇ってるんだよね、そういう人。まぁ、俺もアホだったし、腕っ節には自信があったから「は？オカシイのは風貌だけにしてくれよ！」とか言い返したりしちまってね。

俺、何店舗で出入り禁止になったかわからんし、ぶっちゃけ5店舗くらいで事務所まで連れて行かれて軟禁された事もあるからね。今でも上野の現オリパサのある所にあったパチ屋の事務所に連れて行かれてボコボコにされたチンピラの顔忘れねーもんな。

で、どうにもこうにも東京じゃ打つ店が無くなっちまって旅打ち始めるわけ。
最初は関東近郊だったんだが、次第に「名古屋」「大阪」ってな感じで関西方面に流れてね。

まぁ、関西･･･
関東の非にならないほどエグイね（苦笑）
流石に、派手に打ってたら、相当エグイ珍獣が鬼の形相で追いかけてくるわけ･･･
ヤバ！と思って、大当たり中に玉もそのまま、必死で逃げたよね。

そんな、抜いては逃げ、抜いては逃げの生活も終止符を打つんだよね、いつかは。

ある日、悪友と一緒に神戸の店舗で打ってた時かな。
まだ出してもいない段階から、スゲーおっかねーオッサンに、両サイドに座られてさ･･･。
こりゃあただ事じゃない殺気だったから、しれーっと、トイレに行く振りして逃げようと思ったんだけど、どうやら写真が出回ってたみたいでね･･･。

財布の中にある金だけじゃなくて、宿にまでこられて今まで稼いだ金全部持っていかれたんだわ。
まぁ、どこから漏れたか･･･と思ってたら、前日行った神戸のキャバクラのネーちゃんからのチンコロだったわけ。若造が偉そうに飲んだくれてるもんだから、おだてられてツイ稼ぎのネタを話しちまったんだよね･･･。
そういう所が、青いよね。

そして、結局、ケツの毛までむしりとられて、1文無しね。

と思ったらさ、悪友が腫れた顔のまま「おい、7号、あと10万だけある。どうせなら競馬でヒト勝負ぶってから東京帰ろうぜ」と来た。

悪友ね、俺よりアホなのさ。
帰りの新幹線代も、宿代も、全部考慮に入れたら、2万くらいしかのこらねーのに、全部使っちまおう！って言うヤツだった訳。

まぁ、悪友が死守した金だし、ぶっちゃけ東京なんて神戸にいる知り合いに車で送ってもらえばいいから、いっちょ全部賭けたおしてやるか！って事になったのが、1992年の宝塚記念ね。

悪友「パチンコで残った金だから、ここはジャンボだよ！」
7号「は？バンブージャンボ？来るわけねーだろ」
悪友「じゃぁ、安全に神頼みで、カミノクレッセあたりか？」
7号「そうだね･･･っていうか、今の神頼みって言うフレーズでケチ付いたな、俺その馬ヤダ。神頼みなんて絶対ヤダ。つーか、俺ら最近競馬見てなかったから、よくわかんねーよな」
悪友「確かにね･･･じゃーどする？」
7号「どうせ、金輪際パチンコなんて打たねーし、こんな逃げるような事ばかりじゃ辛いしよ、大穴にどーんと張って、綺麗に散ろうぜ！」
悪友「そっか、そうすっか！」

なんて馬鹿な会話だろうね。
二十歳そこそこのガキじゃぁ、そのくらいの思考力が限界だったかな。

でもね、正解には辿り着いたんだよ、俺ら･･･。


もう逃げる生活は止めようぜ。
だから、最後は俺らの変わりに逃げてくれる馬に賭けよう。

メジロパーマー。

新潟大章典で逃げ切り勝ちした直後なのに全然人気が無かった。
当時、9人気。

悪友「お前、たまにポエムだよな」
7号「は？たまにポエムってなんだよ」
悪友「詩人みたいな事言うじゃん！俺らの変わりに逃げてくれる馬に賭けよう･･･って、よく恥ずかしくも無くそんな事言えるなｗｗｗ」
7号「お前、俺からも殴られたい？」
悪友「事実だろうが！ポエマー7号！」

とまぁ、こんなやり取りをしながら◎メジロパーマーに決めた。

悪友「で、相手はどうする？」
7号「まぁ、そうだよな･･･。単複じゃ味気ねーし、折角去年から馬連も開始されたワケだし、一丁馬連でデケーの狙うか！」
悪友「いいね！そうしよう！どうする？相手はカミノクレッセにでもするか？」
7号「だから、俺その馬ヤダ！って言ったじゃん。神頼みなんてしねーの！俺ら2人で逃げ回ってる訳だから、ここは行った行っただろ」
悪友「また、ポエムかよ」
7号「うるせーよ！そもそもパーマーが逃げ残る可能性考えりゃ、後ろは硬直パターンだろ！だから、パーマーから入るなら、行った行ったは有りだべって話しだよ！」
悪友「わかった、怒んなよ、だな。それで行こ。」

そして選んだ相手が、ダイタクヘリオス。

逃げ馬2頭を自分たちに重ねて、勝負した宝塚記念。

さて、何回「そのまま」「そのまま」と呟いただろうかね。
恐らく、その時は一生分の「そのままー」を口にしたと思っていたが･･･なんてこたーない、今も毎週「そのままー」って言ってるわ。

結果は、メジロパーマーが1着、ダイタクヘリオスが5着。

悪友「あーあ･･･駄目か。まぁ、俺がパーマーで、お前がダイタクだな」
7号「は？お前がダイタクで、俺がパーマーだろうよ！」
悪友「いやいやいやいや、俺がパーマーです」
7号「おいおいおいおい、俺がパーマーでしょ」
悪友「つーかよ･･･、『俺がパーマーだろうよ！』って･･･、多分一生言わねーだろうな･･･」
7号「･････････」

そういや、最近悪友に連絡とってねーなぁ。
久しぶりに、飲みにでも誘うかな。

7号、了。