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競馬サロン

覆面馬主7号

2010/01/01 00:00

◎老馬主vsツウ「え?グルなの?編」

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それにしても、老馬主シリーズ好きな人多いよな。
それだけインパクトのあるじーさんな訳だが、そんな老馬主の口癖は、
 
「アンタ働きすぎだー。それじゃダメだぁ」
 
である。
 
この言葉は、年々響いてくる。
最初の頃は「何言ってんだよこのじーさん、働かなくちゃメシ食えねーだろうが!」などと思っていたが、ぶっちゃけ、今その言葉が俺に重くのしかかっている。
 
と言うのも、老馬主。
彼は、生まれてこの方働いた事がない。
 
いや、「働かない」と、確固たる意志で決めているようだ。
 
働かずとも飯を食うためにはどうすればいいのか?という事を徹底的に考えたそうだ。
 
だからこそ、「働きすぎな俺」に対して、「コイツは馬鹿なのか?」と思っていたに違いない。そして、俺も、その言葉の重みがじわじわと効いてくる。
 
俺が働きすぎれば部下は甘える。
甘えりゃ、育たない。
育たないから、俺が働く。
 
物凄い負のスパイラルだ。
 
そもそも俺は仕事がきらいじゃない。
それは、老馬主も同じなのだが、働き方が違うわけだ。
 
正確に言えば勿論老馬主だって働くワケだが、「KSF」への嗅覚と、ゴールへの意識がハンパ無い。
 
KSF=Key Success Factor。
日本語に直せば、主要成功要因、って事になる訳だが、
 
「ここさえ抑えていれば自分が働かなくとも誰かがやってくれるっしょ!」
 
というのが老馬主の信念であり、「アンタ働きすぎだー」の根源である。
 
KSFの中には「KBF(Key Buying Factor)」=主要購買要因というものも含まれるが、なんにしても「買わせる為のツボ」をしっかり心得ているのが、このじーさんだ。
 
そんな事を自らが体感することになるとは露も知らず、
 
「そんな事よりね、アンタのしゃぶしゃぶの肉、なんだか脂が溶け出しちゃってるよ。料理屋ってのはね、出されたら美味しそうな内に食べなくちゃいけないんだわ。それが、礼儀っしょ!」
 
と言われ、おいおいおいおい!と思いながらも、ようやくしゃぶしゃぶに箸をつけはじめて、〆のうどんに突入するころ…
 
 
 
老馬主「あ、そうだ、アンタ今週馬見に行くってさっき言ってたけど、その帰り、ススキノで寿司食う?」
 
俺「え?ススキノですか?」
 
老馬主「そうそう。私の行きつけが有るから、そこで寿司くいましょ」
 
俺「あ、はい。ありがとうございます。では、土曜日に帯広から日勝峠超えて浦河入って、それから、馬見て、そのまま札幌入りますね」
 
老馬主「はいはい、それでいいですよ。それじゃ、待ち合わせはジャスマックの風呂に17時半ね」
 
俺「え?風呂ですか?」
 
老馬主「そう、風呂」
 
俺「え?風呂のロビーかなんかで待ち合わせってことですか?」
 
老馬主「いやいや、風呂場ね」
 
えー?マジ?
今日初めて会ったじーさんと次回の待ち合わせ場所が風呂場?いきなりフルチンの付き合い?まぁ、いいけど、斬新なじーさんだなぁ。
 
老馬主「風呂ざぶっと入って、風呂上りに一杯ビール飲んでから、すし屋行きましょ」
 
奥方「ツウさん、ごめんなさいね。ウチの旦那、ホントに風呂好きで、札幌での待ち合わせは大体お風呂なのよー。面倒だったら、はっきり言っちゃってくださいね」
 
っておい!
奥さんしゃべれるんか!ニコニコしながら座ってるだけかと思ったら突然しゃべりだしたからビックリしたじゃねーか!
 
俺「あ、奥さん、お気遣いありがとうございます。僕も風呂大好きなんで、逆に嬉しいですよ!」
 
奥方「あらそう!それは良かった。お風呂といっても、違うほうのお風呂いっちゃ駄目よ!」
 
って、シモネタか?
そんな着物姿でしっとり貴婦人感出しまくってるのに、シモネタなのか?違うほうのお風呂ってそういうことだよな?
 
老馬主「ははははは!まぁ、アンタもまだまだ若いから、そっちもお盛んだろうし、予約しといてやろうか?」
 
俺「いえいえいえ、そんな事大先輩にさせるわけにはいかないじゃないですか!そもそも僕、あんまりそういう系の店は行かないんで」
 
老馬主「は?そうなの?変な人だねー」
 
え?変?奥方の居る前で「喜んで!」とか言ったら、おかしな展開になるんじゃねーのか?だから気を使ってそう言ってんのに、変な人って何だよ・・・
 
老馬主「アンタ、あれか?ホモか?」
 
えええええ?どストレートだな。
今ならその発言問題になるぞ!
 
俺「いえいえ!僕はどこからどう見ても女大好きですよ!」
 
老馬主「ああそう。そんな人いきなり風呂に誘っちゃったら、襲われちゃうかと思ったよ。ははははは!」
 
って、なに笑ってんだ。
心配するところが違うだろ!
で!仮に俺が男色傾向の人だとしてもだよ、アンタには行かねーよ!
 
俺「さすがに、もしそうだとしても、老馬主さんを口説いたら、奥さんに怒られちゃうじゃないですか!」
 
老馬主「そんな事より、さっきのアフリートの件だけどさ、気性がちょっと悪いみたいなんだけど、アンタ、去勢の話詳しい?」
 
おいおいおいおい!だから!そこで、話を掛け合わせるのやめてくれよ!俺はチンチンもタマタマも付いてるし、去勢してねーし・・・
 
俺「老馬主さん、俺、玉も竿も改造してないっすからね。ましてや、馬主に成り立てなんで、今のところ去勢しなくちゃいけない馬には出会ってないですよ」
 
老馬主「ははははは!そうか、アンタ、そっちの人じゃないか!」
 
俺「……」
 
遊んでやがる。
完全に手の平の上で転がされてるわ…
 
俺「それはそうと、老馬主さんはそのアフリートはもう見てるんですか?」
 
老馬主「うん、見てるよ。もう手付けも打ってあるし、あとはアンタとの持分比率決めるだけだよ」
 
えーーーーーー!
もう買うことになってる?
見てからって言ったのに、買う事になってる?
 
奥方「あれ?ウチの旦那は、気に入った人としか馬を一緒に持たないって決めてるのに、めずらしいねー。ねぇ、ポンコツブリーダーさん、そんな話聞いたこと無いね?」
 
ポンコツ「確かに、そういう話は聞いたことないですね。」
 
老馬主「アンタ、面白いからいっしょに馬持とう!」
 
駄目だ、もう駄目だ、こんな流れで断れるほど俺の心臓には毛が生えては居ない。ヤラレタ…、これは先に10%くらいの乗りでごまかすしかねーぞ、どうする?どうするんだ俺?
 
老馬主「まぁ、見に行く必要も無いんだろうと思うけど、半々でいいかな?」
 
おいおいおいおい、少し時間を止めてくれ。このじーさんエスパーかなんかなのか?俺の思ってることの先回りしてズバズバ先手打たれちまう。さっきまで、老夫婦ともに、話すテンポはもっとゆるかっただろ?なんで、こんなに畳み掛けられてんだよ・・・
 
俺「え?あ、はい・・・。そうですね、半々ですか?そんな、いきなり老馬主さんと対等な割合だなんて、恐縮しちゃいますよ。」
 
老馬主「ははははは!恐縮なんてしてする人じゃないっしょ!まぁ、もし無理なら、25%でもいいけどね」
 
あああああ・・・・
言葉選びを間違えた・・・
恐縮なんてフレーズ使うんじゃなかった。
確かに、恐縮なんて1ミリもしてねーけど、なんか俺おかしな精神状態になってるぞ。
これか?これが、犯罪も犯してないのに、自供しちまう時の心理状態なのか?冤罪みたいなもんは、こうやって生まれるのか?
耐えろ、耐えるんだ俺!
 
俺「それはそうと、そのアフリートですが、浦河の牧場にいるとは聞きましたが、どこの牧場の馬ですか?」
 
老馬主「ポンコツのとこっしょ」
 
俺「え?」
 
老馬主「だから、ポンコツ君のところの馬っしょ」
 
俺「えええええええ?ポンコツさんの所の馬だったんですか?」
 
ポンコツ「あれ?言ってませんでしたっけ?この前、電話で話したと思ってましたが?あれ?あれ?あれ?」
 
おいおいおいおい、言ってませんでしたっけ?じゃねーよ…
ヤラレタ・・・
完全に全員グルだ。
マジで、この人たちにオレオレ詐欺やらせたら日本一だぞ。
もう駄目だ、この流れは完全に逃れられない。
効いてるのは奥方の一言だ。
「気に入った人としか馬を持たない・・・」
あのフレーズ言われて、初対面の老馬主からの誘いを断る勇気はない・・・
なんだよ、奥方・・・
完璧かつ最強のタイミングで逃げ道塞がれてんじゃねーか。
駄目だ、俺の脳みそフリーズしてる。
 
ええい!ままよ!なるようになれ!
 
俺「なるほどー!そういうことだったんですね!わかりました、乗りましょう!とはいえ、いきなり対等ってのは、失礼ですから25%でどうでしょうか?」
 
老馬主「はいよ、25%ね!わかりましたよ!いやぁー楽しみだねー。そしたら、今週末は馬見た帰りにススキノで祝杯だね!」
 
奥方「良かった良かった!ポンコツさんも良かったね!」
 
ポンコツ「ありがとうございます!」
 
ありがとうございますじゃねーよ、ポンコツの野郎・・・。
 
・・・って、あ!
ヤバイ・・・、さっき御代の話振った時、話さえぎられて、値段聞く前に25%とか、言っちゃった…
 
俺「あ、あのぉ、それはそうと、このアフリートっておいくらなんですか?」
 
老馬主「ん?値段?2000だったね?」
 
ポンコツ「あ、はい、2000です」
 
えええええ?アフリートで2000万????
嘘だ、アフリートで2000って高くねーか?俺まだ、ブラックタイプも見てねーし、馬も見てねーんだぞ、それで500万も払わなくちゃいけねーのか?でも断れねーし、もうなるがままじゃ!
 
俺「ほう!アフリートで2000ですか!中々の値段ですね。とはいえ、この根付けは自信の表れですね!ってことは自分は500払えばいいってことですね?」
 
老馬主「アンタ、稼いでるから、余裕っしょ!」
 
余裕っしょじゃねーよ!
マジで、なんだこの購買プロセスは・・・
もうこうなったら、馬の事はいい。
それよりも、老馬主に恩着せがましく値打ちつけてやる!
 
俺「余裕ってことはないですが、老馬主さんと馬持てるのは光栄ですし、その為の金額だと思えば安いもんですよね!」
 
老馬主「ははははは!嬉しい事言うねー。それなら、3000って言っておけばよかったな。なぁ、ポンコツ君」
 
ポンコツ「いやぁ、老馬主さん流石ですね!」
 
ん?何だ?この老馬主とポンコツの会話、何か凄い引っかかるぞ。
なにか、俺の心の端っこの方で、何かが引っかかる会話だ。
なんだ?何が引っかかってる?
 
あ・・・、いま、「それなら、3000って言っておけばよかったな、ポンコツ君」って言ったよな?そこだ・・・。これ、絶対に2000万の馬じゃねーわ。恐らく老馬主は1000くらいでポンコツから馬買ってるぞ、これ・・・。じゃなけりゃ、ポンコツが「流石ですね!」なんて返しをしないよな・・・。
もうしょうがない、馬の値段なんて有って無いようなもんだし、いくらでも良いや・・・。
 
俺「流石に3000って事は無いでしょうけど、なんで僕とこの馬持とうと思ってくれたんですか?」
 
老馬主「いやー、アンタ気風がいい人だから、種明かしするとさ、ポンコツが馬が売れないって泣きついて来たから、じゃぁ、俺が売り方教えたあげるよ!って、言ったのさ。おかげで、私のメンツも保てたよ!ははははは!」
 
俺「………」
 
うおおおおおおおおおおお!
 
こうして始まった老馬主との共有馬主ライフ。
ここから、更に俺は振り回される事になる・・・。
 
この物語はフィクションです。
 
 
後日談
半ば諦めかけて馬を見に行った俺は、正直ビックリした。
馬自体はめちゃくちゃいい馬だったのだ。
牧場でポンコツに「お前にハメられたと思ったけど、めちゃくちゃ良い馬じゃん」って伝えると、ポンコツから、老馬主がこう言っていたと聞いた。
 
「私もいい歳だからね、私にゃ子供もいないし、若くてイキのいい馬主さん紹介してくれりゃ、私が人物像判断して、もし合格ならこの馬一緒に持ってさ、今までの人脈やら、帝王学やら、残してあげたいんだけど、そんな若いの居るか?」
 
って聞かれたから、ツウ君を紹介したんだよ。
 
ツウ君がどう思ったかは分からないし、あの時の僕を見る目はちょっと怖かったけど、でもね、老馬主さん嬉しそうだったよ。ツウ君あの時「老馬主さんと馬持てるのなら、500万なんて安いもんだ!」って言ってたでしょ。あれ、相当嬉しかったみたいだよ。
 
そして、この時購入したアフリートの牡馬は、スゲー走ってくれた。
馬を見るのも大事だが、人との繋がりが持たしてくれた「縁のある馬」は、なぜか、その後の馬主生活に於いても本当に良く走ってくれている。
 
人と馬。
競馬ってホントおもしれーわ。
 
この後日談もフィクションです。
 
じゃーな!

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