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血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/09/02 21:00

【京成杯オータムハンデ2024 血統展望】待望のコース替わり 大惨敗からの巻き返しを狙い撃て!

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≪今週の動画・京成杯AH≫
▼大惨敗からの巻き返しを狙え!


皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。

新潟記念は8人気▲シンリョクカが新馬戦以来となる復活V。◎キングズパレスも最低限の3着を確保してくれたお陰で、3連複4530円を9点で的中とあいなりました。

「新潟記念のキンカメ内包馬はミルリーフ&ニジンスキークロスを狙え」理論を提唱した身としては、ドンピシャの決着となってひと安心。あと全てのカーリアン持ち繁殖牝馬はサトノダイヤモンドを付けましょう(←突然の極論)。

直前まで1人気だったライトバックは放馬による四肢挫創のため取り消し。レース直後は断片的な情報しか入ってこなかったのでヒヤヒヤしていましたが、ひとまず人馬ともに無事だったようので安心しました。また立て直してターフに戻っていただきたいところ。スローの直線勝負想定ならドカンと張りますゆえ。

さて、この記事では週末の重賞・京成杯オータムハンデ(GIII、中山芝1600m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

過去のレース傾向
野芝開催の開幕週とあって、逃げ・先行馬が強いというのが大前提。中山開催過去10回分の京成杯AHにおける脚質別の成績を調べてみると、逃げ先行馬が【5-6-6-34】で複勝率33.3%、複勝回収率141%に対し、差し追込馬は【5-4-4-83】で複勝率13.5%、複勝回収率45%に留まる。まずは前に行ける馬を中心に組み立てたい。

逃げ先行馬のなかで特に注目したいのが、ディープインパクト産駒トニービン内包馬

前者は【1-4-0-3】で連対率62.5%&複勝回収率286%と高打率&ハイリターンなのだが、残念ながら今年は該当馬なし。

よって必然的に注目すべきは後者ということに。

同じく中山開催過去10回分の当レースにおける「トニービンの血を内包する逃げ先行馬」の成績は【3-0-2-5】で勝率30.0%、複勝率50.0%。単勝回収率181%&複勝回収率145%なので、ベタ買いOKの数字となっている。

特に近年の躍進には目を見張るものがあり、19年&20年連覇のトロワゼトワルや20年13人気3着のボンセルヴィーソ、昨年の勝ち馬ソウルラッシュなど、活躍馬を次々と送り出している。

位置を取ったうえで長く脚を使って押し切るような競馬がこのレースにおける理想形。トニービンの長く良い脚を使える特徴が活きるということだろう。

各馬の個別検討
アスコリピチェーノ
父はダイワメジャー、母アスコルティはJRAで2勝。近親にはローズSを制したタッチングスピーチや菊花賞2着のサトノルークス、ホープフルS3着のキングズレインなどがいる。

予告されていたとおりではあるが、ここまでの実績がある馬、しかも3歳馬が京成杯AHで始動するのはなかなか驚きだったり。よもやグレナディアガーズのようにBCを目標にしているのか……?

ダイワメジャー産駒はこのレースと取り立てて相性こそ良くないものの、勝ち馬を出した実績(13年エクセラントカーヴ)はあるし、晩成傾向に出やすいリッスンの牝系で早枯れということはないだろう。実績を考えれば、当然ここは主役級の評価が必要な存在だ。

とはいえ、ここはあくまで叩き台で本番はこの先だろうし、試走と考えるとルメール騎手も脚を測るような乗り方をしてくるのでは? それにリッスン、サドラーズウェルズの重厚さも結構出ている感じがあって、差す競馬なら東京や阪神の外回りの方が良さそう。中山なら先行した方が結果には繋がるイメージも。

力を評価しつつの対抗評価が妥当なのでは? という感。取りこぼしての配当ハネまで睨んで馬券を組んでみたい。

ディオ
父はリオンディーズ、母がエターナルブーケなので、昨年のこのレースを制したソウルラッシュの半弟にあたる。

位置を取って押し切る競馬を得意にしている点は、このレースの傾向とマッチしている。そして兄もそうだったように、晩成傾向のある兄弟なので今がまさに充実期だろう。

その一方で懸念材料を挙げるとすれば気性的なややこしさ。

リオンディーズ的、スペシャルウィーク的、突き詰めればオリオール的に揉まれ弱いところがあって、基本的に好走するのは直線に向いたときに外から被されていない形。

大敗したダービー卿CTもその形を取ろうとしたのだが、当時はインが強い馬場だったので外を回したロスで最後は失速という内容だった。

恐らく今回も4角で外を回すことになるだろうが、開幕週で外を回すと間に合わない馬場になっているようだと、ラストで踏ん張り切れない危険性は考慮すべき。中山の馬場を見ながら取り扱いを考えたい。

コラソンビート
コスモチェーロの牝系出身で、近親には香港ヴァーズ、日経賞、オールカマーなどを制したウインマリリンや、先日の札幌クイーンSを制したコガネノソラ、福島でラジオNIKKEI賞を制したウインマーレライなどがいる。

この牝系は牝祖エイプリルワンダーが持つフェアトライアル≒フェロッシャー2×2という強烈なニアリークロスが特徴的。フェアトライアル的、レディジュラー的な機動力を受け継ぎやすいため、コーナリング性能が高く、直線の長い大箱よりも小脚が活きる条件で輝く傾向にある。先に挙げた3頭の重賞勝ち鞍を見ても、そのキャラクターはお分かりいただけるはずだ。

その一方で、3歳春までの牝馬のビッグレースは基本的に大箱ばかり。コラソンビートにとって適性からズレる条件だったと言わざるを得ない。

今回は中山マイルに替わるのが何よりの好材料。コスモチェーロ的な機動力を活かせるコースであれば十分に変身が見込めるはず。

軽快なスピードが武器のヘイローの血を4本引いており、開幕週の良好な馬場でフワッと先行させればここはチャンス。内を捌く競馬もフィリーズレビューで経験済みで、枠がどこだろうと競馬ができそうなのも魅力的だ。

そのうえスワーヴリチャードの産駒で、注目ポイントとした「トニービン持ちの先行馬」にも合致するとくれば、これはまさに条件ドンピシャ。前走16着もお構いなしに狙うしかないだろう。

オーキッドロマンス
父はダービー馬ロジャーバローズ。母エキナシアはJRA3勝。祖母のニシノマリアはJRA5勝の実績。

ゴールドシップ産駒の半姉ジュニパーベリーも、千直2勝を含む短距離で4勝を挙げているように、エキナシアの仔は種馬が何であれ短距離に適性が寄りがち。これは祖母ニシノマリアが持つトムロルフ3×4が由来だろう。

北米的なパワー加速が表現されやすいトムロルフのクロスなので、これがエキナシアの繁殖としてのキャラクターに繋がっている。ついでに母エキナシアにはダンジグの4×4もあり、ますます短距離向きの適性が表現されやすい。そりゃあ千直巧者が出ますわな。

さらにオーキッドロマンスの場合、父ロジャーバローズの母父リブレティストがダンジグ×トムロルフ系アレッジドという組み合わせ。母エキナシアのポイントであるダンジグとトムロルフを継続する形となり、さらにスプリント適性を強化する結果となった。

なので今回のポイントはマイルの距離を誤魔化せるかどうか。個人的には1ハロン長いと考えており、坂で止まる危険性は織り込んでおくべき。

とはいえ位置を取れるのはこのレースにおいてアドバンテージ。ジュニパーベリーより配合レベルそのものは上で、重賞のここでも万が一の雪崩れ込みがあっても。ディープ直仔ではないものの、ディープ孫の先行馬でもあり、うっかり3着に粘り込むようなシーンはあり得るだろう。△で押さえておいても。

ディスペランツァ
父はルーラーシップ、母父はアメリカで中距離のGIを3勝したメダグリアドーロ。祖母のプロミシングリードはハービンジャーや凱旋門賞馬レイルリンクなどを送り出した種牡馬ダンシリの同血のいとこにあたる。

父ルーラーシップという点は昨年の覇者ソウルラッシュと同じだが、決定的な違いがその脚質。このレース、トニービン持ちの逃げ先行馬は好相性を誇る一方で、差し追込馬は複勝率10.5%と振るわない成績に留まる。昨年も1人気だったインダストリアが末脚不発で7着に敗れた。

そのうえディスペランツァの血統からはマイルがベストという感じはなく、個人的には1800mとか2000mくらいあって良いのでは? と思っているところ。12Fを走っていたって驚きやしない。

マイルで勝った2戦はいずれも前半の1000mを60秒以上のゆったりした追走で入って、後半600mを中距離馬としてのキレで差し切るという内容。純粋なマイラーとしての追走力を求められないラップでしかマイル戦を勝っていないのだ。

今回の出走予定馬を見渡してみると、短距離で好走してきたオーキッドロマンスをはじめ、ある程度スピードのある面々が揃っており、前半からペースは流れそう。ディスペランツァの追走力だとポジションは相当に悪くなることが想定される。

NHKマイルC&関屋記念の動画や記事でも散々触れてきたように、この馬の血統は「強いマイラー」ではなく「強い中距離馬」だというのが私の見解。末脚の破壊力は認めつつ、純粋なマイラーとして距離適性を求められると苦しいのでは。

ジューンオレンジ
前走のマーメイドSでも注目していたものの、さすがに距離が長かった感じの止まり方で結果は12着。ツィンクルブライドやペールギュントの牝系なので、適距離はマイル前後ということだろう。

このファミリーは中山と福島で重賞3勝のミッキースワローをはじめ、小回りでパフォーマンスを上げる馬が多いのが特徴。牝祖ツィンクルブライドは旧阪神内回り1600mの桜花賞で2着と好走したし、その仔ペールギュントは中山マイルの朝日杯で3着、改装前中京の高松宮記念で2着の実績がある。

それを思うとトリッキーな中山マイルはジューンオレンジにとって合いそうだ、というのが第一感。スタートに難があるのがネックながら、うまく先行できるようならトニービン内包馬という点を含めて、オッズ以上にチャンスはあるのではなかろうか。

エエヤン
父はシルバーステートで、半兄には2014年の京成杯を制したプレイアンドリアルがいる。

とにかく中山マイルに強い馬で、このコースでは4戦して3勝2着1回で連対率100%。血統表を見るとさもありなんで、シルヴァーホークにウッドマンにダンジグにアリダー。要はだいたいざっくりグラスワンダーみたいなもので、小回りを馬力に任せて走らせたらそりゃあ強いよといったところ。

エエヤンが小回り・内回りのマイル以下で唯一連対を外した阪神カップも14着と見た目の着順はヒドいが、勝ち馬との差は0秒8差。先行馬に厳しい展開でもあり、見た目ほどの大敗ではない。

前走のマイラーズCは最下位の17着と大敗しているものの、そもそも外回りで何かできる馬でもないのでノーカウントで無問題。

コース相性抜群かつディープ孫の先行馬とくれば、前走の大敗に目をつぶって狙う価値がある

まとめ
人気サイドでは機動力コース替わりのコスモチェーロ牝系・コラソンビートの巻き返しが最有力候補。トニービン内包の先行馬という点も後押しになる。

コース得意のエエヤンの大変身もチェックしておきたいところ。この馬も機動力が活きるコースでこそ。だってダンジグにロベルトにアリダーだもの。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。

<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上

在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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