競馬サロン

2024/12/23 21:00
【ホープフルステークス2024 血統展望】「初めてのGI挑戦」に強い名門牝系が絶好の舞台で躍進!

▼上位独占を狙う名門牝系とは!?
皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。
この記事では、2024年最後のJRA重賞・ホープフルS(GI、中山芝2000m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。
■レースのポイント
同名のOP特別だった時代はマイネルチャールズ(父ブライアンズタイム)、アリゼオ、サトノネプチューン、エアアンセム(いずれも父シンボリクリスエス)などロベルト系が強いレースだったのだが、2014年の重賞昇格後はディープインパクト産駒が4勝、ハーツクライ産駒及びその孫が3勝、キングカメハメハ系が3勝と、来年のクラシックを見据える王道血統が順当に強さを発揮するレースに変貌を遂げた。
マイルの朝日杯FSとの棲み分けが進み、皐月賞、ダービー路線を目指す有力馬が距離を求めてこちらへ矛先を向けるようになった結果だろう。奇をてらわずにクラシック血統を狙うイメージを持っておきたい。
■各馬の個別検討
▼クロワデュノール
父はキタサンブラック。英国産の母ライジングクロスはGIIパークヒルS勝ちの実績に加え、英オークス2着、愛オークス3着とクラシック戦線で活躍した。
東京芝1800mのデビュー戦で記録した後半1000mの区間ラップ57秒3は極めて優秀なもの。これだけでGI級と言える素材で、プラス24キロで仕上がり途上に見えた前走東スポ杯2歳Sも終わってみれば余裕の勝利だった。
かつてのイクイノックスがそうだったように走るキタサンブラック産駒は馬体を薄く見せることが多いのだが、クロワデュノールもそのパターンに見える。「強靭な体幹だけあれば余計な筋肉はいらない」というアスリート体型で、いかにも走るキタサンブラックと言う感じ。
本来は大箱ベターなタイプだとは思うものの、地力はここでも一枚上手の印象。コントレイルのようにポテンシャルだけで薙ぎ払うシーンは十分に考えられる。
▼マジックサンズ
札幌2歳Sを制したキズナ産駒で、母コナブリュワーズは芝短距離で4勝。祖母アンブロワーズは函館2歳Sの勝ち馬で、阪神JFの2着馬だ。
牝祖(4代母)バレークイーンは日本ダービー馬フサイチコンコルドや皐月賞馬アンライバルドを送り出し、その他にもヴィクトリーやリンカーン、アリストテレスなど活躍馬多数の牝系を築いた名繁殖牝馬。
サドラーズウェルズのフォルリとペティンゴのフェアトライアルを介してレディジュラー的な機動力を伝える傾向にあるのが特徴で、皐月賞を制したアンライバルドやヴィクトリーのように、この牝系の馬は小回りコースでパフォーマンスを上げる機動力型が多い傾向にある。
マジックサンズの前走札幌2歳Sも4コーナーで動いて勝負をつける内容で、あの機動力はまさしくバレークイーンの感。当然ながら中山替わりも問題なく、パフォーマンスレベルは上がりこそすれ、下がることはないと見る。
またバレークイーン牝系は「初めてのGI挑戦に強い」特徴がある。同牝系のGI戦歴を調べてみると、GI初挑戦時が【3-3-1-9】で複勝率43.8%に対し、2回目以降の挑戦だと【0-3-3-31】で複勝率15.0%に留まる。しかも2回目以降のGI挑戦で馬券になった6回のうち、実に5回がリンカーンによるものだったり。
フサイチコンコルド、ヴィクトリー、アンライバルドによるバレークイーン牝系のGIタイトルはいずれも初めてGIに挑戦した時であり、ほとんどのバレークイーン牝系はGI初挑戦時にしか好走できていないのだ。
一世一代の大駆けをファーストストライクから狙うのがこの牝系との付き合い方なのだとすれば、狙うべきタイミングはまさにここ。絶好の舞台でクロワデュノールを逆転する目も見ておきたい。
▼マスカレードボール
父は二冠馬ドゥラメンテ。半姉にローズSと阪神牝馬Sを制したマスクトディーヴァがおり、祖母は短距離重賞で活躍したビハインドザマスクという血統背景。
半姉も祖母も末脚の切れを武器に活躍した馬だったが、その特徴はマスカレードボールにも受け継がれた模様。初戦も2戦目も上がり最速の素晴らしい末脚で快勝した。
ただ気になるのは、中山芝の重賞において、同馬が属するヴァインゴールド牝系の成績があまり芳しくない点。これまでの成績は【0-1-0-13】複勝率7.1%で、コイウタのダービー卿CT2着があるのみ。長い直線で瞬発力を活かしたいファミリーなので、中山の短い直線は鬼門のようだ。
牝系の影響も強く、ワンターンのマイルから1800mがベストに見えるマスカレードボールにとっては、コーナー4つの中山2000mへの舞台替わりをこなせるかどうかがポイントに。
ドゥラメンテ×ディープインパクトという血統背景はクラシックを意識させるのに十分なものがあり、アイビーSの勝ちっぷりからも力量上位だとは思うものの、牝系のキャラクターからはやや不安要素がある点も押さえておきたい。
▼アマキヒ
父はブラックタイドで、母は三冠牝馬アパパネ。秋華賞馬アカイトリノムスメの同血の半弟にあたる(父が全兄弟で母が同じ)。
ソルティビットの牝系は、牝馬だとアパパネやアカイトリノムスメのような運動神経の良いスピードタイプが多いのに対し、牡馬に出るとラインベックやジナンボー、セイウンパシュートのような渋い先行馬が多い印象。アマキヒの前走も逃げ切り勝ちだった。
今回は先行脚質の馬が多くいる点をどう考えるか。末脚勝負で良い脚を使える保証がないので、できれば位置を取りたいのだが、果たしてそれが叶うだろうか。
▼ジョバンニ
母ベアフットレディはイギリスのマイルGI・コロネーションSで3着の実績があるマイラーで、母としてジョバンニの他にチューリップ賞やローズSで好走したセキトバイーストを送り出した。
マイラー色の強い母ではあるが、エピファネイアを父に迎え、オリオールのクロスをデザインしたジョバンニについてはもう少し長めの距離が向いた印象を受ける。2000mまでは守備範囲だろう。
ただマルゼンスキー≒ストームキャット≒カーリアンの組み合わせで大箱向きの印象があるのも事実。馬体も比較的ゆったりした形で広いコースの方が走りやすいのでは。
また、ここまで3走はいずれも少頭数だったわけだが、小回りフルゲートの中山2000mだとなかなか難儀しそう。ここ2戦のように最後方から外を回す形だと距離ロスが重くのしかかることにならないか。
馬群を割れれば良いのだが、気難しいオリオールのクロスがあって馬群に突っ込む形で力を発揮できるかどうかはやや不透明。ヌルっと先行できれば良いのだが、ここ2戦は後ろからの競馬を選んでおり、それがGIへの格上げ戦でいきなり前受けできるかどうかは何とも言えず……。
▼ジュタ
東京の新馬戦を勝って臨むドゥラメンテ産駒で、母シャンパンエニワンはアメリカでダートのGII勝ち。アルゼンチン血統に遡る牝系で、3代母からはアルゼンチンのGI3勝馬ミスローレンをはじめ複数の重賞勝ち馬が出ている。
アルゼンチン牝系にドゥラメンテという配合は一昨年の勝ち馬ドゥラエレーデと同じパターン。スパッと切れるというよりは、長くジワジワと脚を使うようなイメージの配合で、切れ味の求められる東京よりも適度に上がりのかかる中山の方が向いている印象だ。
前走後に矢作師が「ダートも合う」と言っていたように、やはりドゥラエレーデ的な芝とダートの二刀流がジュタの完成形に見える。
前走、4コーナーからの立ち上がりで狭いところにサッと切り込んだセンスの良さも中山で活きてきそうなイメージがあって、相手は強くなるがここでも一枚押さえておきたい。
▼ピコチャンブラック
父はクロワデュノールと同じくキタサンブラックで、母トランプクイーンは皐月賞馬アンライバルドの全妹。ということでこの馬もバレークイーン牝系の出身となる。
福島芝2000mが舞台だった新馬戦ではノーステッキで7馬身差の圧勝。人気を背負った2戦目のアイビーSではマスカレードボールに遅れを取ったわけだが、これは大箱適性の差だろう。
ドゥラメンテ×ディープインパクトのマスカレードボールに対して、キタサンブラック×ネオユニヴァースのピコチャンブラックでは東京の切れ味勝負で劣るのはやむなし。舞台が替わってバレークイーン牝系由来の機動力が活かせる小回り中山2000mなら逆転の目は少なからず存在する。
「初GIのバレークイーン牝系」はマジックサンズと共通する今回のテーマ。前走の敗戦で人気を落とすようならしめたもの。得意の小回り中距離替わりを見直す手は大いに考えておきたい。
▼ジェットマグナム
父はヘンリーバローズで、母ビビットオレンジは未出走ながら、牝祖はマジックサンズと同じく名繁殖牝馬バレークイーンに遡るファミリーの出身だ。
父の全兄シルバーステートはロベルトの影響で小回り向きの産駒を多く送り出す傾向にあるが、恐らくはヘンリーバローズにもそういった傾向があるだろう。牝系のキャラクターを考えても、コーナー4つの中距離は成績どおりベストコースだ。
大敗に終わった2戦目のコスモス賞は心房細動によるもので度外視可能。新馬戦で下したリトルジャイアンツが、その後中山芝2000mの葉牡丹賞でレコード決着にタイム差なしの3着に好走したことを思えば、それに半馬身差をつけたジェットマグナムの実力も高く評価できよう。
そしてこの馬も「初GIのバレークイーン牝系」該当馬。マジックサンズやピコチャンブラックと同じく狙うならここ。一見地味な血統ながら小回り中距離への高い適性を秘める血統とあわせて、一発の期待を寄せたい存在だ。
■まとめ
クロワデュノールの強さは重々承知でこれがアッサリ勝つパターンも想定すべきではあるが、妙味がありそうなのは「バレークイーン三銃士」のマジックサンズ、ピコチャンブラック、ジェットマグナムの3頭。いずれも中山2000mに向いた配合をしており、持ち前の機動力でクロワデュノールに迫るシーンがあっても驚けない。
枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。
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