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血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/12/16 21:00

【有馬記念2024 血統展望】ドウデュースは強いけれど… 敢えて別の馬から入るなら?

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≪今週の動画・有馬記念≫
▼敢えてドウデュース以外から入るなら…?


皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。

この記事では、週末の重賞・有馬記念(GI、中山芝2500m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

レースのポイント
小回り&非根幹の中山2500mということで、基本的には位置を取った馬の方が有利なレース。そして「リファールな先行馬」が強いレースでもある。

古くはハーツクライ(母母父リファール)がディープインパクトを下した05年が代表例。最近だとジェンティルドンナ(リファール4×4)やキタサンブラック(リファール4×4)、イクイノックス(リファール5+5×4)もそうだし、直線向いた時点で好位置にいたということであれば、ドウデュース(リファール4×4)もこれに当てはまる。

令和の時代ともなるとリファールも血統表の奥の方に引っ込んでいることがほとんどで、リファールを1本引いているからどうこうという話ではないものの、例えばディープやハーツを使ってリファールのクロスをデザインした先行馬はかなり推せる印象。

同じ中山が舞台のセントライト記念の動画や予想でも似たような話をしたのだが、ここも正しくそのイメージ。リファールクロスの粘り強さを評価する方向性で検討を進めたい。

各馬の個別検討
せっかくの有馬記念なので、今回は月曜時点で出走予定の全16頭について取り上げてみよう。

アーバンシック
今年の菊花賞馬。スワーヴリチャードの牡馬は3歳夏以降に成績を良化させる傾向が出ていて、アーバンシックのセントライト記念→菊花賞の連勝もスワーヴリチャードの男馬らしい成績。ハーツクライの成長力を感じさせる戦歴と言えよう。

スワーヴリチャード×ハービンジャーという配合からは大箱の12Fベストの印象があるので、今回は内回り中山2500mへの対応がポイントに。中山なら外回りの2200mベターなタイプなので、小回りの2500mでは勝負どころでの捌きが鍵を握る。

ちなみにアーバンシックにはリファールのクロスがあるので、個人的にはルメール騎手がいつぞやのハーツクライのように先行させるシーンも見てみたいところだったりする。

シャフリヤール
21年の日本ダービー馬は今回が引退レースの予定。「空飛ぶダービー馬」と(勝手に)呼んでいるように、古馬になってからは国外のレースを走った数の方が多い国際派だ。

エゲつないほどの瞬発力でダービーを制した馬ではあるが、古馬になってから全兄アルアインに似た立ち回りの上手なタイプにモデルチェンジ。「距離適性長めのアルアイン」というイメージがピッタリで、良馬場の2400m前後のレースでは常に安定して力を発揮してくれる。

昨年の有馬記念では絶好枠を引きながら5着。あと一歩足りない結果に終わったものの、予定していた香港Cを使えず、結果的にカラ輸送を挟んでの競馬場調整となったためコンディション面で厳しい部分があったのも事実。今年の方が調整の順調度は上なので、再度好枠を引けるようなら侮れない存在になるはずだ。

シュトルーヴェ
同コース日経賞の勝ち馬で目黒記念も制したGII2勝馬。キンカメ×ディープインパクトという組み合わせでタイプとしては同配合のヒートオンビートに近い。だとすれば東京の方がベターと見える。

有馬記念で好走する中山巧者はマツリダゴッホにしろ、ゴールドアクターにしろ、ヴィクトワールピサにしろ、4角でフワッと動く機動力を見せたうえで中山重賞を勝っていた馬がほとんど。4角で鞍上の手が動いて、ようやく直線になってエンジンがかかったように見えた日経賞のシュトルーヴェのそれは毛色が異なる気がするのだが……。

スターズオンアース
父はドゥラメンテで、祖母スタセリタは欧米の芝でGIを数多く制した名牝だ。

昨秋は8枠の不利にもメゲずジャパンCと有馬記念で連続2着と力を見せたものの、今年に入ってから順調にレースを順調に使えないモロさを露呈している。去年の有馬が終わったときに「2024年の芝王道路線はスターズオンアースの年になる!」と思ったのだが……。

個人的には差して味があるタイプだと思っているところ、川田騎手が鞍上とあっては今回も先行策を取ってきそう。モンズンが入ってスタミナに心配はないので、ドウデュースのマクリをいかにして突っぱねるかがポイントになるだろう。

後は有馬記念の先行馬でことごとく結果の出ていない鞍上が奮起してくれれば……。当日まで取捨選択に悩みそうな存在だ。

ジャスティンパレス
父はディープインパクト。母パレスルーマーはジャスティンパレスのほかパレスマリスやアイアンバローズなどを送り出した。ロベルト由来のスタミナを産駒に伝える名繁殖牝馬だ。

今秋2戦はスローペースに泣き4着、5着。母父に入るヌレイエフの影響も強く、持続力の土俵で勝負がしたいタイプ。終わってみればいずれも展開が厳しかった。

とはいえどこまで行っても東京>中山のストライド型なので、有馬記念では小回りコースをどうやって誤魔化すかがポイントになる。

大箱向きのステイヤーが有馬記念で好走しようと思うと、19年のワールドプレミアのように道中はなるべく何もしないで、直線で大外に出して前に届くのをお祈りするパターンが王道。要は昨年のジャスティンパレスの競馬が理想形。今年もあの形の競馬で、さてどこまでやれるか。

スタニングローズ
エリザベス女王杯で復活Vを遂げた秋華賞馬も今回が引退レースの予定。

父がキングカメハメハで、祖母がローズバドなので、ジャパンCを制したローズキングダムとは3/4同血の関係にあたる。あちらはミルリーフクロスの影響が強いストレッチランナーだったが、こちらは母父のクロフネが入る分、小回り&急坂適性が増した印象だ。

そのローズキングダムもそうだったように、キンカメ直仔は有馬記念とそれほど相性が良いとは言えず、この10年で【0-2-0-14】、複勝率12.5%。もっと遡ってもトゥザグローリーの2年連続3着とルーラーシップの3着があるくらい。

キンカメ直仔で有馬記念で馬券になるのは、トゥザグローリー&トゥザワールド兄弟のように牝系から有馬記念適性を受け継ぐパターン(※兄弟の母トゥザヴィクトリーは01年有馬記念3着)か、レイデオロ&ルーラーシップのようにその年の古馬王道GIでバリバリ活躍していたパターンのどちらか。それを考えるとスタニングローズはどちらにも当てはまらない印象があって……。

ダノンデサイル
今年の日本ダービーを制したエピファネイア産駒で、母はBCジュベナイルフィリーズの2着馬。

前走の菊花賞は6着に敗れたが、勝負どころで進路が塞がり、ズルっとポジションを下げたのが敗因。それでも直線で押し上げた内容は十分に評価できる。最後の最後で帰ってきたダノンデサイルを見た時はさすがに仰天しましたもの。

前走は「この血統のエピファネイアは3000mはこなせない」ということで無印にしていたのだが、距離が2500mになる今回はさすがに無印にはしないつもり。

配合を見るとロベルト4×5、シアトルスルー5×4、サドラーズウェルズ≒ワイルドアプローズ4×4などが共通する父母相似配合になっており、適性としては父エピファネイア似の印象。ベストはやはりダービーと同じ東京コースだろう。

3歳馬相手の京成杯では力の差で外々を回して勝ち切ったものの、あの競馬で古馬の一線級相手に勝負を挑むのは少々しんどい。同じ3歳のアーバンシックと同じく小回りへの対応がポイントに。

ダノンベルーガ
ハーツクライの産駒で、母コーステッドはBCジュベナイルフィリーズターフ2着馬。半妹に秋華賞2着のボンドガールがいる。

距離適性に関しては母の影響も強く、ベストは大箱の1800-2000mと見る。また右トモにウィークポイントがあるため、右回りは走りづらい。右回り&小回り&2500mのこの舞台では厳しい戦いを強いられそうで……。

ディープボンド
父はキズナで、母ゼフィランサスは芝短距離で3勝。牝系はローレルゲレイロやノースブリッジなどが出る村田牧場自慢のモガミヒメ一族。この牝系は京都の坂下りに強い一族(※リキサンマックスのきさらぎ賞はいつ見ても掲示板の面々の文字列が強い)で、ディープボンドも最近はもっぱら京都の坂下りレースでしか好走がない。

また古馬になってからは上がり性能に限界が出てきたようで、ラスト1000mが59秒0以上かかった時にしか好走できていない。今回はスローペース濃厚のうえ、ドウデュースのマクリが入ってラスト1000mがある程度速くなる想定。勝負どころでついていけるかどうかはやや心配。

起死回生があるとすれば、21年の有馬記念(2着)のように、内枠を引いたうえでスタートを決めて先行できたパターン。リファールのクロスがあるので位置さえ取れれば舞台適性は問題ない。22年は大外枠、23年はブリンカーが合わなかったということにして押さえる手も。

ドウデュース
アメリカのダート短距離重賞で活躍した母の回転力を父ハーツクライを使って中距離向きに転じさせた印象で、スローペースになった天皇賞・秋とジャパンCは他馬との爆発力の違いを見せつける内容だった。

先行して敗れた昨年の秋2戦を見ても、脚を小出しにする競馬は苦手なので、昨年の有馬のように道中は後ろで脚を溜め、4コーナーで捲り切ってケリを付ける競馬が理想だろう。

不覚を取るシーンがあるとすればハイペースを追いかけざるを得ない展開だと思っていたのだが、逃げたいメイショウタバル&ホウオウビスケッツの2頭が揃って除外対象というのも追い風。これなら道中は得意とするゆったりした流れになるはず。

「スローペースの申し子」がゼンノロブロイ以来の秋古馬三冠を成し遂げるか注目が集まる。

ハヤヤッコ
出走するたび「白い」のコメントで溢れかえるハヤヤッコ翁だが、まだまだ衰えは見せておらず前走アルゼンチン共和国杯で重賞2勝目。ハイペースが向いたとはいえ、白い馬体が飛んできたのを見た時はさすがにたまげた。

ソダシと同じ「キンカメ×クロフネ」の配合形ながら長丁場向きに出たのは、クロフネに入るロベルトがより強く出たせいだろう。クロフネ産駒にマイラーが多かったのは事実なのだが、牡馬だとたまに思い出したかのように、ゴールデンハインドやドリームセーリングといったステイヤーを出していた。母父クロフネのハヤヤッコはこのパターンを踏襲したと見ている。

ここも前走と同じく最後方待機で前崩れを待つ格好になりそう。ジャスティンパレスと一緒になって「ハイペースお祈り隊」を結成したい。

ブローザホーン
宝塚記念の勝ち馬で、天皇賞・春の2着馬。長距離実績のある牝系に加えて、母父デュランダルからアリシドンを拾いオリオール≒アリシドンにしたのが、ブローザホーンのステイヤーとしての適性に繋がっている。

近2走は不本意な成績に終わっているが、ステイヤーなので2500mの距離は歓迎。京都のような直線平坦コースがベターなタイプとはいえ、上がりのかかる中山に替わるのはプラスだろう。実際に条件戦とはいえこのコースでは2戦2勝なので、少なくともジャパンCよりは買いやすい印象がある。追い切りの動き次第で評価を上げても。

プログノーシス
昨年の天皇賞・秋以来の国内GIに挑むディープインパクト産駒。半姉にはイギリスの2歳GI・チヴァリーパークS勝ちのヴォルダがいる。

母からヴェイグリーノーブルを入れて「バークレア≒ヴェイグリーノーブル」のニアリークロスにしたディープインパクト牡馬は、トーセンラー&スピルバーグ兄弟やヨーホーレイクなど古馬になってからの成長力に強みがある。

また男馬にスタミナを伝える組み合わせであるためか、このパターンの牡馬は2000m以上のレースで結果を残す傾向も。上述の3頭はいずれも2200m以上の重賞で好成績を残していたし、この他にもステイヤーズSを筆頭に長距離重賞で好走を続けたファタモルガーナや、今年の大阪-ハンブルクCを制したレッドバリエンテなどが出ている。

なのでプログノーシスも2500mは守備範囲なのでは? と考える次第。加えて母からマクリ血統ロベルトが入るうえ、ディープ×短距離向き母の組み合わせは機動力を活かせるコースでこその印象も。初の舞台とはいえ中山2500mは十分に対応できると見ている。

幾度となく挑んだ香港のGIではいずれも地元の雄・ロマンチックウォリアーに跳ね返されてきたわけだが、それぞれの着差を見てみると昨年のQE2世Cが2馬身差、昨年の香港Cが1馬身差、今年のQE2世Cがクビ差という結果。

ちなみに今年の香港Cにおけるロマンチックウォリアーと3着タスティエーラの着差は2馬身3/4差。そのタスティエーラは秋天でドウデュースと1馬身1/4差だったので、単純計算ではドウデュースとプログノーシスはほぼ横並び。

さらにはジャパンCでドウデュースとクビ差だったドゥレッツァをプログノーシスは金鯱賞で(斤量差があったとはいえ)5馬身千切っているのだから、打点の高さでドウデュースに迫れる馬がいるならば、この馬がその筆頭候補だと思うわけで。

海外遠征からの帰国初戦や主戦からの手替わりなど不安要素はあるものの、最高打点だけ追いかけるならば、この馬を外すわけにはいかないだろう。

そして何より気になるのがリファールのクロスを抱えている点。それが前走のコックスプレートでは突如として先行策に打って出たわけで。あの積極策が「前受けリファール」としての覚醒の序章だったのでは……? ともちょっと思ったり。

もちろん先行しないにしてもドウデュースの後ろをくっついていって4角5番手くらいに陣取れれば十分にチャンスはあるだろう。騎手としての初勝利を中山芝2500mで挙げた三浦皇成が、念願の初GI勝利を同じく中山芝2500mで挙げるシーンに期待する手も。

ベラジオオペラ
父はロードカナロアで、母父はハービンジャー。アイドリームドアドリームの牝系は、エアシャカールやエアメサイアのようにコーナーで動ける機動力が武器で、この牝系が勝利したGIはエアシャカールの菊花賞を除き、いずれも小回り、内回りコースが舞台。ベラジオオペラも阪神内回り2000mの大阪杯を制している。

カナロア産駒とあって確かに2500mは若干長い印象はあるものの、折り合いのつく馬なので、小回り中山でスローペースになれば距離は誤魔化せる範囲。イメージとしてはディープインパクトが勝った2006年の有馬記念で3着に粘ったダイワメジャーのパフォーマンスが理想形。あのパターンに持ち込めればここでも戦える。

夏の暑さに弱く毎年秋の立ち上げがデリケートになる弱点があるベラジオオペラは、昨年も下半期の始動戦が12月のチャレンジCまでズレ込んだし、今秋の始動戦だった天皇賞・秋でも陣営のトーンは全く上がっていなかった。今回はそこを叩いてから寒くなっての有馬記念。コンディション面での上積みは大きいはずで、内枠を引けるようなら一発の期待も。

レガレイラ
父はスワーヴリチャードで、母父はハービンジャー。祖母がランズエッジなのでアーバンシックとは同血のいとこ同士にあたる。

スワーヴリチャードの産駒は牡馬だと3歳夏以降の成績が良いのだが、逆に牝馬は成績を落とす傾向。実際にレガレイラも不利があったとはいえローズS、エリザベス女王杯と牝馬相手にいずれも5着と結果を残せないでいる。

ただ、近年の有馬記念で穴をあけた牝馬はジェンティルドンナにしろ、クイーンズリングにしろ、サリエラにしろ、ダンジグの血を引くパターンが目立つ。今年出走する牝馬でダンジグを引くのはレガレイラだけなので、その点はそそられる要素。

アーバンシックと同じく大箱ベターだろうが、距離が延びるのはプラスと見る。ジェンティルドンナとは正反対の脚質ながら、エスコートするのは同じく戸崎騎手。無欲の追い込みがハマるか。

ローシャムパーク
ハービンジャー×キンカメは18年の勝ち馬ブラストワンピースと同じ組み合わせ。こちらは母母がサンデー×エアグルーヴなので、より持続力に振れた組み合わせになった。

大阪杯もBCターフも道中自ら動いて長く脚を使う競馬で好走。今回も同様の競馬をするとなると、ドウデュースと一緒に動くパターンになりそう。毎日王冠のような3F勝負になると鋭さ負けするので、早め早めに動いていく競馬が理想。距離ロス承知で強気に踏んでいってどこまでやれるか。

想定されるレーススタイルからは、ピンかパーかになりそうなイメージあり。

まとめ
ドウデュースが最右翼なのは間違いないだろう。秋古馬三冠の可能性は十分にある。

それ以外で穴っぽいところではプログノーシスベラジオオペラの一発に期待。プログノーシスは香港で見せた最高打点を評価して。ベラジオオペラは内枠必須にはなるが、スローの好位で脚の速さと小脚性能が活きるレースになれば。

ここまで色々語ってきたが、お祭りの有馬記念は「好きな馬を買いましょう」というのが大前提。配当はあくまでオマケで、思い入れのある馬の馬券を手に、この豪華メンバーの一戦を楽しむ気持ちを忘れずに。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。

<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上

在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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