競馬サロン
血統サイエンティスト ドクトル井上
2024/11/11 21:00
【マイルチャンピオンシップ2024 血統展望】絶好の条件替わり! 大箱マイルで輝く穴馬を狙い撃ち
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≪今週の動画・マイルCS≫
▼絶好の条件替わり!な穴馬に熱視線
皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。
この記事では、週末の重賞・マイルCS(GI、京都芝1600m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。
■過去のレース傾向
京都開催過去10回分のマイルCSを振り返ると、中団以降でレースを進めた馬が8勝を誇る。2着馬、3着馬についても同様で中団以降の馬が多数を占める。10月からの連続開催で芝のコンディションが悪化するため、だんだんと外差し傾向になるのがこの結果に表れているのだろう。
久々に京都が舞台となった昨年も道中ほぼ最後方にいたナミュールが豪脚を見せつけ勝利。リニューアルを挟んでも傾向としては変わっていないものと考えたい。
思考回路としては「前より後ろ」で検討すべきレースと言える。
■各馬の個別検討
▼チャリン
気の抜けた名前の響きとは裏腹に、その正体はバリバリの欧州マイル王。3歳時はセントジェームスパレスSとサセックスSでの3着の実績がある程度の馬だったのだが、3歳のキャンペーンを早めに切り上げて休養入りしたのが功を奏し、4歳になってから成績が急上昇。
今年7戦してクイーンエリザベス2世Sやジャックルマロワ賞など、GI3勝を含む5勝2着2回というパーフェクトな成績を残している。ちなみに敗れた2戦はいずれも大逃げした馬を捕まえ切れずというレース内容。展開のアヤに泣いたレースで力負けではない。
チャリンの父ダークエンジェルは2歳時に6FのGIを制し、3歳から早くも種牡馬入り。ジュライC勝ちのリーサルフォース、ナンソープS連覇のメッカズエンジェル、短距離GI4勝のバターシュなど、代表産駒も軒並み短距離向きの傾向。日本における代表産駒も高松宮記念を制したマッドクールなのでそのイメージは伝わるはず。
チャリンの配合を見ると高松宮記念を制したマッドクールに似た部分があり、母にデインヒルとアホヌーラの血が入る点が共通する。さらに細かい話をすれば、マッドクールの母父インディアンリッジとチャリンの3代母の父スタトブレストは「アホヌーラにスカイマスターを入れて牝馬ディシプリナーのクロスをデザイン」という配合の骨格が共通している。
2頭の父ダークエンジェルにもアホヌーラが入るので、チャリンとマッドクールは「母が抱えるディシプリナーの牝馬クロスを父ダークエンジェルのアホヌーラを使って継続した」点が共通している。
この2頭が種牡馬入りした暁には、30年後の血統評論家が「チャリンとマッドクールのニアリークロスがあるから短距離向きに出るんだ!」と言っているはずだ。
少々話が逸れたが、チャリンに関しても日本で走るならマッドクールと同じく少々時計がかかった方が良いタイプと見る。あまりにも高速決着になってしまった時は少々心配でもあり、現状、週末の京都に雨予報があるのはプラスだろう。
高松宮記念やスプリンターズSに香港馬が意気揚々と参戦していることからも分かるように、今の日本の短距離・マイル路線がかなり手薄なのは事実。そこに欧州トップマイラーが参戦するわけだから、さすがに敬意を表す必要があるだろう。アッサリ勝たれても何ら驚けない。
▼ソウルラッシュ
ルーラーシップ×マンハッタンカフェという一見すると中距離馬のような配合ながら、マイルの距離で結果を残しているのは祖母の父ストームキャットの威光のお陰。
ただどこまでいっても父と母父が中距離血統である事実もついて回り、それがマイルでの末脚性能不足に表れている。高速マイル戦を真正面から追走すると、どうしても1600mベストの馬より道中の追走力で見劣ってしまう。それが最後の脚を鈍らせるという図式。
なので高速馬場になりがちな安田記念よりも、馬場の荒れたマイルCSの方が狙いやすいタイプ。京都外芝1600mは向こう正面のスタートから3コーナーに向かって坂を上っていくコース設定なので、比較的テンが緩みやすいのもプラスに働くようだ。実際に京都マイルでは3戦して【1-1-1-0】とパーフェクトな成績。コース相性は屈指の存在と言える。
キンカメとマンハッタンカフェの組み合わせなら雨が降るのは歓迎で、京都のこの条件なら東京の高速上がり戦よりも条件が向く。日本馬のなかでは重い印を回したい存在だ。
▼ナミュール
父はハービンジャー。母サンブルエミューズはフェアリーS3着など早期から活躍し、繁殖牝馬としてもナミュールの他、ヴェスターヴァルトやラヴェル、アルセナールなどを送り出している。
春の成績を振り返ると、1800mのドバイターフで2着に好走→コンクシェルの暴走気味の逃げによりハイラップで推移し、1400m向きのテンハッピーローズが勝ったヴィクトリアマイルで8着→稍重馬場で追走の絶対スピードが求められなかった安田記念で2着という恰好。
前半1000mを59秒5で通過し、上がり600mを33秒0の脚で突き抜けた昨年のマイルCSと合わせて考えると、マイル戦ならば前半1000mをゆったり入れるレースで好走を重ねていることが分かる。ゴリゴリにマイルの追走力を求められる条件より、前半が緩んで追走が楽なマイル戦、1800m風味なレースで切れ味を活かしたいタイプと見る。
ナミュールにしろ、ペルシアンナイトにしろ、ハービンジャー産駒が京都のマイルCSで強いのは、前半が登り坂でテンが緩む京都外1600mの特性によるところが大きいのだろう。
自身はキングジョージ勝ち馬で、中距離向きの産駒が中心のハービンジャーなので、マイル戦らしい追走力、高速ペースでの巡行力を要求されると苦しくなる。反対にゆったり追走して33秒台で上がる中距離風味なレースでも間に合うマイル戦ならハービンジャーはOPでも戦える。
世代限定戦の芝マイル、しかもGI以外のOPクラスでハービンジャー産駒が妙に強いのもそのあたりに理由がありそう。
世代限定戦(=2-3歳早期)かつ芝マイルのGII、GIIIなど、十中八九、中盤が緩んでからの上がり勝負になる。これは正しくハービンジャーが好走できるマイル戦のラップ構成。そして喜び勇んで臨んだマイルGIで、中盤の締まった流れを追走できずにすっ飛ぶところまでがワンセット。
「ハービンジャーのマイル戦は前半1000mのペースに注目」と整理しよう。スケールに惚れて桜花賞でチェルヴィニアを買っていた自分に教えてあげたい……。
鉄砲巧者のナミュールにとって安田記念以来の実戦は心配する必要なし。当時は渋った馬場をこなしたように多少の雨も問題ない。
いつもどおり前半がゆったりな京都のマイルCSになるのであれば、この馬の適性は当然高く評価したい。
▼ブレイディヴェーグ
父はロードカナロア。母のインナーアージはJRA4勝。伯母にオークスと秋華賞を制したミッキークイーンがいる。
前走の府中牝馬Sは衝撃的な内容だった。故障で1年近い休み明け、そのうえ1頭だけ57キロを背負っていたのにも関わらず、終わってみれば上がり32秒8の脚で突き抜け楽勝。しかも加速ラップのおまけつき。
父が1400mベスト、母が2000mベストの配合なので、ブレイディヴェーグ自身は1800mベストだろう。適性としてはナミュールと近いところにあるはず。ナミュールを高く評価するのなら同じ文脈で評価すべきだ。
▼ジュンブロッサム
父はワールドエース。祖母のゴールドティアラはマイルCS南部杯を制した砂の名牝だ。
その祖母がそうだったように、この牝系は比較的完成が遅い、体質が安定するまでに時間がかかるのが特徴。祖母がマイルCS南部杯を制したのは4歳秋だったし、いとこのステファノスがGI戦線の常連になったのも4歳に入ってからだった。
そこに晩成なドイツ血統のニュアンスが入るワールドエースを父に迎えたわけで、ジュンブロッサムの完成がここまで遅れたのも「そりゃそうですわな」という感じ。今が最盛期と見て問題ないだろう。
富士Sを上がり上位で制した馬は、本番のマイルCSでも好走する傾向あり。良馬場でレースさえできれば、初めてのGIでもチャンスがあるはずだ。
▼オオバンブルマイ
父がストームキャット系のディスクリートキャットで、母父はディープインパクト。そして3代母アジアンミーティアがアンブライドルズソングの全妹なので、配合のパーツ自体はコントレイルと似たような組み合わせ。
サクラバクシンオーが入る分だけ、中距離ベストだったコントレイルより距離適性は短めに寄っているが、それでもさすがにここ2走の1200mは適性外だろう。
ダノンプラチナ・ラウダシオン・レッドベルオーブなどがそうだったように、ディープとアンブライドルズソングの組み合わせからは、広いコースのマイル戦で結果を残した馬が多いことを考えると、オオバンブルマイも本質的にはそういったタイプなのでは?
ならば中山芝1200m→京都外1600mに替わるのはオオバンブルマイにとって好材料と見る。
しかもスプリンターズSのオオバンブルマイは直線でモズメイメイが外に寄ってきた影響を受け、進路をカットされ内に切り替える不利があった。
鞍上としては、オオバンブルマイが大箱向きなので、コーナーを敢えてタイトに回らず勢いに乗ったまま直線に向く意図だったのだろうが、それが完全に裏目に出た格好。適性外の1200mかつ、捌き捌きな直線の進路取りにも関わらず、勝ったルガルと0秒6差なら力を見せた内容と言える。
また、以前触れたようにリニューアル後の京都外マイルはカロ内包馬と好相性。今年のマイラーズCではソウルラッシュが勝ったし、米子Sは該当馬のワンツーだった。オオバンブルマイは4代母の父がカロ。お守り程度かもしれないがこの点でも評価を上げたい。
そのうえ鞍上は"淀の達人"武豊。ここも後ろで脚を溜めて外に出す競馬になるだろうが、その戦法がハマるのが京都のマイルCS。想定されるオッズ的にも妙味はバツグンだ。
■まとめ
欧州マイル王のチャリンには敬意を表しつつ、日本馬からはナミュール、ソウルラッシュ、ブレイディヴェーグが上位評価に。
特にナミュールの連覇の可能性は十分。いつものマイルCSならこの馬の末脚性能が輝くと見たい。
その一方で強力な上位陣を相手に高配当を狙うなら、オオバンブルマイから振り回す手を考えたい。
「力はあるが大箱マイルがベスト」と決め打って、キーンランドC&スプリンターズSで無印でやり過ごしてきた身としては、その大箱マイルに出てきた以上は重い印を打たざるを得ないだろうと。キーンランドCで3連複をブチ割られた分をここで返してくれんかね?
枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。
▼絶好の条件替わり!な穴馬に熱視線
皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。
この記事では、週末の重賞・マイルCS(GI、京都芝1600m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。
■過去のレース傾向
京都開催過去10回分のマイルCSを振り返ると、中団以降でレースを進めた馬が8勝を誇る。2着馬、3着馬についても同様で中団以降の馬が多数を占める。10月からの連続開催で芝のコンディションが悪化するため、だんだんと外差し傾向になるのがこの結果に表れているのだろう。
久々に京都が舞台となった昨年も道中ほぼ最後方にいたナミュールが豪脚を見せつけ勝利。リニューアルを挟んでも傾向としては変わっていないものと考えたい。
思考回路としては「前より後ろ」で検討すべきレースと言える。
■各馬の個別検討
▼チャリン
気の抜けた名前の響きとは裏腹に、その正体はバリバリの欧州マイル王。3歳時はセントジェームスパレスSとサセックスSでの3着の実績がある程度の馬だったのだが、3歳のキャンペーンを早めに切り上げて休養入りしたのが功を奏し、4歳になってから成績が急上昇。
今年7戦してクイーンエリザベス2世Sやジャックルマロワ賞など、GI3勝を含む5勝2着2回というパーフェクトな成績を残している。ちなみに敗れた2戦はいずれも大逃げした馬を捕まえ切れずというレース内容。展開のアヤに泣いたレースで力負けではない。
チャリンの父ダークエンジェルは2歳時に6FのGIを制し、3歳から早くも種牡馬入り。ジュライC勝ちのリーサルフォース、ナンソープS連覇のメッカズエンジェル、短距離GI4勝のバターシュなど、代表産駒も軒並み短距離向きの傾向。日本における代表産駒も高松宮記念を制したマッドクールなのでそのイメージは伝わるはず。
チャリンの配合を見ると高松宮記念を制したマッドクールに似た部分があり、母にデインヒルとアホヌーラの血が入る点が共通する。さらに細かい話をすれば、マッドクールの母父インディアンリッジとチャリンの3代母の父スタトブレストは「アホヌーラにスカイマスターを入れて牝馬ディシプリナーのクロスをデザイン」という配合の骨格が共通している。
2頭の父ダークエンジェルにもアホヌーラが入るので、チャリンとマッドクールは「母が抱えるディシプリナーの牝馬クロスを父ダークエンジェルのアホヌーラを使って継続した」点が共通している。
この2頭が種牡馬入りした暁には、30年後の血統評論家が「チャリンとマッドクールのニアリークロスがあるから短距離向きに出るんだ!」と言っているはずだ。
少々話が逸れたが、チャリンに関しても日本で走るならマッドクールと同じく少々時計がかかった方が良いタイプと見る。あまりにも高速決着になってしまった時は少々心配でもあり、現状、週末の京都に雨予報があるのはプラスだろう。
高松宮記念やスプリンターズSに香港馬が意気揚々と参戦していることからも分かるように、今の日本の短距離・マイル路線がかなり手薄なのは事実。そこに欧州トップマイラーが参戦するわけだから、さすがに敬意を表す必要があるだろう。アッサリ勝たれても何ら驚けない。
▼ソウルラッシュ
ルーラーシップ×マンハッタンカフェという一見すると中距離馬のような配合ながら、マイルの距離で結果を残しているのは祖母の父ストームキャットの威光のお陰。
ただどこまでいっても父と母父が中距離血統である事実もついて回り、それがマイルでの末脚性能不足に表れている。高速マイル戦を真正面から追走すると、どうしても1600mベストの馬より道中の追走力で見劣ってしまう。それが最後の脚を鈍らせるという図式。
なので高速馬場になりがちな安田記念よりも、馬場の荒れたマイルCSの方が狙いやすいタイプ。京都外芝1600mは向こう正面のスタートから3コーナーに向かって坂を上っていくコース設定なので、比較的テンが緩みやすいのもプラスに働くようだ。実際に京都マイルでは3戦して【1-1-1-0】とパーフェクトな成績。コース相性は屈指の存在と言える。
キンカメとマンハッタンカフェの組み合わせなら雨が降るのは歓迎で、京都のこの条件なら東京の高速上がり戦よりも条件が向く。日本馬のなかでは重い印を回したい存在だ。
▼ナミュール
父はハービンジャー。母サンブルエミューズはフェアリーS3着など早期から活躍し、繁殖牝馬としてもナミュールの他、ヴェスターヴァルトやラヴェル、アルセナールなどを送り出している。
春の成績を振り返ると、1800mのドバイターフで2着に好走→コンクシェルの暴走気味の逃げによりハイラップで推移し、1400m向きのテンハッピーローズが勝ったヴィクトリアマイルで8着→稍重馬場で追走の絶対スピードが求められなかった安田記念で2着という恰好。
前半1000mを59秒5で通過し、上がり600mを33秒0の脚で突き抜けた昨年のマイルCSと合わせて考えると、マイル戦ならば前半1000mをゆったり入れるレースで好走を重ねていることが分かる。ゴリゴリにマイルの追走力を求められる条件より、前半が緩んで追走が楽なマイル戦、1800m風味なレースで切れ味を活かしたいタイプと見る。
ナミュールにしろ、ペルシアンナイトにしろ、ハービンジャー産駒が京都のマイルCSで強いのは、前半が登り坂でテンが緩む京都外1600mの特性によるところが大きいのだろう。
自身はキングジョージ勝ち馬で、中距離向きの産駒が中心のハービンジャーなので、マイル戦らしい追走力、高速ペースでの巡行力を要求されると苦しくなる。反対にゆったり追走して33秒台で上がる中距離風味なレースでも間に合うマイル戦ならハービンジャーはOPでも戦える。
世代限定戦の芝マイル、しかもGI以外のOPクラスでハービンジャー産駒が妙に強いのもそのあたりに理由がありそう。
世代限定戦(=2-3歳早期)かつ芝マイルのGII、GIIIなど、十中八九、中盤が緩んでからの上がり勝負になる。これは正しくハービンジャーが好走できるマイル戦のラップ構成。そして喜び勇んで臨んだマイルGIで、中盤の締まった流れを追走できずにすっ飛ぶところまでがワンセット。
「ハービンジャーのマイル戦は前半1000mのペースに注目」と整理しよう。スケールに惚れて桜花賞でチェルヴィニアを買っていた自分に教えてあげたい……。
鉄砲巧者のナミュールにとって安田記念以来の実戦は心配する必要なし。当時は渋った馬場をこなしたように多少の雨も問題ない。
いつもどおり前半がゆったりな京都のマイルCSになるのであれば、この馬の適性は当然高く評価したい。
▼ブレイディヴェーグ
父はロードカナロア。母のインナーアージはJRA4勝。伯母にオークスと秋華賞を制したミッキークイーンがいる。
前走の府中牝馬Sは衝撃的な内容だった。故障で1年近い休み明け、そのうえ1頭だけ57キロを背負っていたのにも関わらず、終わってみれば上がり32秒8の脚で突き抜け楽勝。しかも加速ラップのおまけつき。
父が1400mベスト、母が2000mベストの配合なので、ブレイディヴェーグ自身は1800mベストだろう。適性としてはナミュールと近いところにあるはず。ナミュールを高く評価するのなら同じ文脈で評価すべきだ。
▼ジュンブロッサム
父はワールドエース。祖母のゴールドティアラはマイルCS南部杯を制した砂の名牝だ。
その祖母がそうだったように、この牝系は比較的完成が遅い、体質が安定するまでに時間がかかるのが特徴。祖母がマイルCS南部杯を制したのは4歳秋だったし、いとこのステファノスがGI戦線の常連になったのも4歳に入ってからだった。
そこに晩成なドイツ血統のニュアンスが入るワールドエースを父に迎えたわけで、ジュンブロッサムの完成がここまで遅れたのも「そりゃそうですわな」という感じ。今が最盛期と見て問題ないだろう。
富士Sを上がり上位で制した馬は、本番のマイルCSでも好走する傾向あり。良馬場でレースさえできれば、初めてのGIでもチャンスがあるはずだ。
▼オオバンブルマイ
父がストームキャット系のディスクリートキャットで、母父はディープインパクト。そして3代母アジアンミーティアがアンブライドルズソングの全妹なので、配合のパーツ自体はコントレイルと似たような組み合わせ。
サクラバクシンオーが入る分だけ、中距離ベストだったコントレイルより距離適性は短めに寄っているが、それでもさすがにここ2走の1200mは適性外だろう。
ダノンプラチナ・ラウダシオン・レッドベルオーブなどがそうだったように、ディープとアンブライドルズソングの組み合わせからは、広いコースのマイル戦で結果を残した馬が多いことを考えると、オオバンブルマイも本質的にはそういったタイプなのでは?
ならば中山芝1200m→京都外1600mに替わるのはオオバンブルマイにとって好材料と見る。
しかもスプリンターズSのオオバンブルマイは直線でモズメイメイが外に寄ってきた影響を受け、進路をカットされ内に切り替える不利があった。
鞍上としては、オオバンブルマイが大箱向きなので、コーナーを敢えてタイトに回らず勢いに乗ったまま直線に向く意図だったのだろうが、それが完全に裏目に出た格好。適性外の1200mかつ、捌き捌きな直線の進路取りにも関わらず、勝ったルガルと0秒6差なら力を見せた内容と言える。
また、以前触れたようにリニューアル後の京都外マイルはカロ内包馬と好相性。今年のマイラーズCではソウルラッシュが勝ったし、米子Sは該当馬のワンツーだった。オオバンブルマイは4代母の父がカロ。お守り程度かもしれないがこの点でも評価を上げたい。
そのうえ鞍上は"淀の達人"武豊。ここも後ろで脚を溜めて外に出す競馬になるだろうが、その戦法がハマるのが京都のマイルCS。想定されるオッズ的にも妙味はバツグンだ。
■まとめ
欧州マイル王のチャリンには敬意を表しつつ、日本馬からはナミュール、ソウルラッシュ、ブレイディヴェーグが上位評価に。
特にナミュールの連覇の可能性は十分。いつものマイルCSならこの馬の末脚性能が輝くと見たい。
その一方で強力な上位陣を相手に高配当を狙うなら、オオバンブルマイから振り回す手を考えたい。
「力はあるが大箱マイルがベスト」と決め打って、キーンランドC&スプリンターズSで無印でやり過ごしてきた身としては、その大箱マイルに出てきた以上は重い印を打たざるを得ないだろうと。キーンランドCで3連複をブチ割られた分をここで返してくれんかね?
枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。
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