競馬サロン
血統サイエンティスト ドクトル井上
2024/11/04 21:00
【エリザベス女王杯2024 血統展望】牝馬の切れ味勝負でチェックしたい●●の血脈
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≪今週の動画/エリザベス女王杯≫
▼スローの切れ味比べならお任せ!
皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。
この記事では、週末の重賞・エリザベス女王杯(GI、京都芝2200m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。
■過去のレース傾向
牝馬限定戦かつ外回り芝2200mという条件とあって、スローの末脚勝負というレースになりがちな京都のエリザベス女王杯。良馬場だと勝ち馬は上がり33秒台が求められることも少なくない。
そんなレースにあって注目したいのが「リヴァーマン」の血。現役時代に仏2000ギニーなどを制したリヴァーマンは、種牡馬になってからキレッキレ系牝馬を数多く送り出した。
代表産駒は凱旋門賞制覇のデトロワや、"鉄の女"の異名をとったGI9勝のトリプティク。直仔ではないが凱旋門賞連覇のトレヴもリヴァーマンっぽい切れが武器の馬だった。抜け出すときの一瞬の脚が速いのがリヴァーマンの特徴だ。
過去10回の京都開催のエリザベス女王杯において、血統表にリヴァーマンを内包する馬は【4-2-3-21】で、勝率13.3%&複勝率30.0%。昨年も該当のブレイディヴェーグが勝ち切った。
単純にリヴァーマン内包馬を狙うだけでも狙いは立つのだが、セットで考えてみたいのは王道・ディープインパクトの血。
ディープインパクトとリヴァーマンを併せ持つ馬の京都のエリザベス女王杯における成績は【2-0-3-5】で、複勝率50.0%。回収率も単勝176%&複勝率105%なので、ベタ買いOKの数字となっている。
中距離向きの切れを伝えるディープに対して、さらにリヴァーマンの切れを重ねることで、よりエリザベス女王杯向きの適性にカスタマイズできるということだろう。
今年の出走馬でリヴァーマンを内包するのはコスタボニータ、シンティレーション、ホールネス、レガレイラの4頭。このうちディープインパクトの血を直接併せ持つ馬は1頭もいないが、レガレイラの祖母ランズエッジはディープインパクトの半妹(3/4妹)にあたる点を押さえておきたい。
■各馬の個別検討
▼レガレイラ
父はスワーヴリチャードで、母父はハービンジャー。祖母がランズエッジなので、菊花賞を制したアーバンシックの同血のいとこにあたる。
初めて牝馬限定戦を走った前走・ローズSでは、スローペースを最後方から進め結果は5着。流れが全く向かなかったもので大きく割り引く必要はないだろう。
ここまで6戦連続で上がり600m最速をマークしているように末脚の切れに特化したタイプ。そしてストライドの大きい走りをする大箱向きのタイプでもある。陣営サイドの使い分けはあったにせよ、内回りの秋華賞をスキップして、外回りのエリザベス女王杯を目標にしたのは合点がいく。
スワーヴリチャードは牝系にリヴァーマンを内包し、牝系はディープインパクトと同じウインドインハーヘア牝系。リヴァーマンの有無を基準にしたときに、今年の出走馬で最も京都のエリザベス女王杯適性が高いのはこの馬だろう。
ステレンボッシュ、アーバンシック、そしてこのレガレイラと「結局3歳世代は祖母ランズエッジ世代なんでしょ?」という感があって、終わってみれば「やっぱりランズエッジやんけ!」となっている気も。強い3歳世代の代表としてここは巻き返しに期待したい。
▼ホールネス
父のロペデヴェガは仏2冠馬。種牡馬になってからも活躍を見せ、今年の仏ダービーを制したルックドゥヴェガなどが代表産駒。
母ミスユナイテッドは芝14FのGIII・リリーラングトリーSを制し、4000mのアスコット金杯で2着、3100mのロワイヤルオーク賞で3着の実績があるスタミナ牝馬。ホールネスの半兄イーグルスバイデイも2800mのGIII・イギリス・シルヴァーCを勝っており、基本はスタミナ牝系という理解で問題ないだろう。
母の血統を見ると、ミルリーフにリヴァーマンにカーリアンにプリンスリーギフトにサーゲイロードだから、これはいかにも京都の外回りで良さが出そうな配合。ミルリーフ≒リヴァーマンについては父シャマルダルからも引く形になっており、ますますタフな大箱で斬れそうに見える。
ここまで上がりのかかるレースで結果を残してきたのでそういった展開になれば当然評価すべきだろうが、エリザベス女王杯当日の馬場が果たしてどうなるか。この馬にとっては「先週の大雨が1週遅ければ……」と言った感。あの馬場なら自信を持って◎を打てたのだが。
先週の競馬で馬場がどこまで荒れたのかがポイントになるが、普通に回復して例年どおりの良馬場エリザベス女王杯になった際に切れ負けする危険性は考えておいて良いのかも。
前走が余裕残しだったのでその分の上昇度は見込みつつ、馬場状況によって印の濃淡を検討したい。
▼シンリョクカ
父はサトノダイヤモンド。母のレイカーラはマイルCSを制したダノンシャークの半妹にあたる。
これまで散々触れてきたようにサトノダイヤモンドはカーリアンの血と相性が良く、サトノグランツもスズハロームもこのパターン。同産駒が芝の重賞で馬券に絡もうと思えば基本はこのパターンだ。
この血統らしく長く良い脚を使えるので京都の外回りは合っているのだが、切れ味に欠けるきらいのあるサトノダイヤモンド産駒なので、上がりの時計はかかった方がベター。33秒台の切れ味勝負になると、去年の府中牝馬Sのように露骨に切れ負けする格好になりかねない。
新潟記念は上がりのかかる最終週の外回りに加えて、離れた2番手となった隊列がドハマリした感も。そして競走中止明けでマークが薄かったのも味方した。
今回はフルゲートになるうえ、牡馬相手に重賞を勝ってしまった以上、ある程度マークを受ける立場になるはず。前走よりタイトな競馬が想定されるなか、後ろの切れる馬に負かされるシーンは考えておいても。
こちらもホールネスと同じく上がりがどれくらいかかる想定かで印の濃淡を考えたい。
▼スタニングローズ
父はキングカメハメハ、母父はクロフネ。祖母のローズバドはオークス、秋華賞、エリザベス女王杯で2着に好走した実力馬だった。ジャパンCなどを制した伯父ローズキングダム(父キンカメ×母ローズバド)とは3/4同血の関係にあたる。
ローズキングダムはミルリーフ5×4のイメージ通りの大箱12F向きのストレッチランナーだったが、スタニングローズはそこにクロフネが入る分、ヴァイスリージェント的、ロベルト的、北米的な小回り・パワー要素が足された印象。個人的にはローズキングダムの切れ味や大箱適性を減衰する代わりに、コーナーで器用に動ける機動力と坂をこなす馬力を足したようなイメージで捉えている。
実際にスタニングローズが手にした重賞タイトルの舞台は、いずれも直線が短い・コーナー4つ・直線急坂の3点セットを満たしていた。オークスでの2着があるとはいえ、本質的な適性は阪神内回り2000mや中山中距離向きだろう。
そんなタイプなので上がりの脚には限界がある。3歳秋以降、上がり600m3位以内を計時したことはなし。基本は内回りを好位でうまく立ち回って抜け出すキャラクター。
確かにC.デムーロの手綱は怖いが、それだけで人気に推されるのならさすがに疑問を呈しても。
▼サリエラ
父はディープインパクト、母は独オークス馬のサロミナ。兄弟にはサリオス、サラキア、エスコーラなどがいる活躍馬多数の優秀なファミリー出身だ。
サロミナは高い競走能力とドイツ血統らしい揉まれ弱さを伝えるため、概してその仔は外枠向き。最内でも揉まれないように注意して運べば何とかなるのだろうが、前走はイン前有利の馬場を意識した鞍上が敢えて積極的に出していった結果、マトモに揉まれ戦意喪失という格好になった。
イン前有利になりがちな秋の中山の馬場傾向だけを考えると100点満点の騎乗だったが、サロミナ的には疑問符と言わざるを得ないレースだった。あの形で揉まれるとサロミナはレースを放棄してしまう。
姉のサラキアがGIで好走したエリザベス女王杯と有馬記念はいずれも大外から直線だけでドカンと追い込む競馬。サロミナの理想はあの形だ。
血統的にも京都外回り適性は高いし、鞍上に鎮座ましますR.ムーア大明神の文字列は強烈。ゼッフィーロやプラダリアに先着した目黒記念だけ走ればこのメンバーなら十分に足りる。そういえばその目黒記念も8枠からの発走だった。
外枠必須の条件が付くので穴馬というには超えるべきハードルは厳然として存在するわけだが、それでも枠の問題さえクリアできるようなら一発狙う価値あり。
▼シンティレーション
父はロードカナロアで、母ファシネートダイヤはJRAのダートで1勝。伯父に青葉賞勝ちのアドマイヤコマンドがいる。
4代母のベーシイドは朝日杯3歳S(現・朝日杯FS)をレコードで制した快速リンドシェーバーを産んだ繁殖牝馬。基本的にはニアークティックな北米スピードを伝える牝系で、祖母トコアも自身の競走成績は芝1200m以下で3勝を挙げたスプリンターだったのだが、繁殖牝馬に上がった途端にガラっとキャラチェンジ。
トコアに関してはもっぱらカーネギー・サドラーズウェルズのスタミナを伝える繁殖牝馬になった。先述のアドマイヤコマンドはその代表例だろう。
ただでさえヌレイエフ≒サドラーズウェルズを標的にした組み合わせをデザインするとスタミナ化した産駒が出やすい種牡馬ロードカナロア。それを5×3で抱えるシンティレーションなので、カナロア×タキオンという字面の文字列より距離はこなせるはず。2200mも問題ないと見る。
前走の府中牝馬Sは勝ち馬ブレイディヴェーグこそ力が抜けていたが、シンティレーションもブレイディヴェーグと同じ上がり600m32秒8の脚を使って2着に追い込んだ。
ブレイディヴェーグが好走したレースで似たような走りができたうえ、血統表を見るとロードカナロア×サンデーサイレンス系×スペシャル血脈×リヴァーマンの組み合わせ。母父がディープインパクトの分、ブレイディヴェーグの方が王道の大箱向きで、シンティレーションはタキオンからロイヤルスキーが入る分、大箱に特化できていないという違いはあるが、キャラクターの方向性は似ているのでは。
前走の好走がフロック視されるようなら逆張り的に狙ってみたい。
■まとめ
まずは「ディープ血脈&リヴァーマン」のレガレイラの切れ味に注目。唯一の3歳馬として古馬の壁を超えられるか。
カナロア産駒ながらシンティレーションは距離は問題ないと見る。前走を見ても切れ味は屈指。末脚の活きるレース質なのでこの馬の適性は高いと見る。
最後に「ロマン枠」としてオールカマー大敗のサリエラを取り上げたい。外枠から揉まれない競馬で地力を発揮できれば十分に巻き返せる。
枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。
▼スローの切れ味比べならお任せ!
皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。
この記事では、週末の重賞・エリザベス女王杯(GI、京都芝2200m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。
■過去のレース傾向
牝馬限定戦かつ外回り芝2200mという条件とあって、スローの末脚勝負というレースになりがちな京都のエリザベス女王杯。良馬場だと勝ち馬は上がり33秒台が求められることも少なくない。
そんなレースにあって注目したいのが「リヴァーマン」の血。現役時代に仏2000ギニーなどを制したリヴァーマンは、種牡馬になってからキレッキレ系牝馬を数多く送り出した。
代表産駒は凱旋門賞制覇のデトロワや、"鉄の女"の異名をとったGI9勝のトリプティク。直仔ではないが凱旋門賞連覇のトレヴもリヴァーマンっぽい切れが武器の馬だった。抜け出すときの一瞬の脚が速いのがリヴァーマンの特徴だ。
過去10回の京都開催のエリザベス女王杯において、血統表にリヴァーマンを内包する馬は【4-2-3-21】で、勝率13.3%&複勝率30.0%。昨年も該当のブレイディヴェーグが勝ち切った。
単純にリヴァーマン内包馬を狙うだけでも狙いは立つのだが、セットで考えてみたいのは王道・ディープインパクトの血。
ディープインパクトとリヴァーマンを併せ持つ馬の京都のエリザベス女王杯における成績は【2-0-3-5】で、複勝率50.0%。回収率も単勝176%&複勝率105%なので、ベタ買いOKの数字となっている。
中距離向きの切れを伝えるディープに対して、さらにリヴァーマンの切れを重ねることで、よりエリザベス女王杯向きの適性にカスタマイズできるということだろう。
今年の出走馬でリヴァーマンを内包するのはコスタボニータ、シンティレーション、ホールネス、レガレイラの4頭。このうちディープインパクトの血を直接併せ持つ馬は1頭もいないが、レガレイラの祖母ランズエッジはディープインパクトの半妹(3/4妹)にあたる点を押さえておきたい。
■各馬の個別検討
▼レガレイラ
父はスワーヴリチャードで、母父はハービンジャー。祖母がランズエッジなので、菊花賞を制したアーバンシックの同血のいとこにあたる。
初めて牝馬限定戦を走った前走・ローズSでは、スローペースを最後方から進め結果は5着。流れが全く向かなかったもので大きく割り引く必要はないだろう。
ここまで6戦連続で上がり600m最速をマークしているように末脚の切れに特化したタイプ。そしてストライドの大きい走りをする大箱向きのタイプでもある。陣営サイドの使い分けはあったにせよ、内回りの秋華賞をスキップして、外回りのエリザベス女王杯を目標にしたのは合点がいく。
スワーヴリチャードは牝系にリヴァーマンを内包し、牝系はディープインパクトと同じウインドインハーヘア牝系。リヴァーマンの有無を基準にしたときに、今年の出走馬で最も京都のエリザベス女王杯適性が高いのはこの馬だろう。
ステレンボッシュ、アーバンシック、そしてこのレガレイラと「結局3歳世代は祖母ランズエッジ世代なんでしょ?」という感があって、終わってみれば「やっぱりランズエッジやんけ!」となっている気も。強い3歳世代の代表としてここは巻き返しに期待したい。
▼ホールネス
父のロペデヴェガは仏2冠馬。種牡馬になってからも活躍を見せ、今年の仏ダービーを制したルックドゥヴェガなどが代表産駒。
母ミスユナイテッドは芝14FのGIII・リリーラングトリーSを制し、4000mのアスコット金杯で2着、3100mのロワイヤルオーク賞で3着の実績があるスタミナ牝馬。ホールネスの半兄イーグルスバイデイも2800mのGIII・イギリス・シルヴァーCを勝っており、基本はスタミナ牝系という理解で問題ないだろう。
母の血統を見ると、ミルリーフにリヴァーマンにカーリアンにプリンスリーギフトにサーゲイロードだから、これはいかにも京都の外回りで良さが出そうな配合。ミルリーフ≒リヴァーマンについては父シャマルダルからも引く形になっており、ますますタフな大箱で斬れそうに見える。
ここまで上がりのかかるレースで結果を残してきたのでそういった展開になれば当然評価すべきだろうが、エリザベス女王杯当日の馬場が果たしてどうなるか。この馬にとっては「先週の大雨が1週遅ければ……」と言った感。あの馬場なら自信を持って◎を打てたのだが。
先週の競馬で馬場がどこまで荒れたのかがポイントになるが、普通に回復して例年どおりの良馬場エリザベス女王杯になった際に切れ負けする危険性は考えておいて良いのかも。
前走が余裕残しだったのでその分の上昇度は見込みつつ、馬場状況によって印の濃淡を検討したい。
▼シンリョクカ
父はサトノダイヤモンド。母のレイカーラはマイルCSを制したダノンシャークの半妹にあたる。
これまで散々触れてきたようにサトノダイヤモンドはカーリアンの血と相性が良く、サトノグランツもスズハロームもこのパターン。同産駒が芝の重賞で馬券に絡もうと思えば基本はこのパターンだ。
この血統らしく長く良い脚を使えるので京都の外回りは合っているのだが、切れ味に欠けるきらいのあるサトノダイヤモンド産駒なので、上がりの時計はかかった方がベター。33秒台の切れ味勝負になると、去年の府中牝馬Sのように露骨に切れ負けする格好になりかねない。
新潟記念は上がりのかかる最終週の外回りに加えて、離れた2番手となった隊列がドハマリした感も。そして競走中止明けでマークが薄かったのも味方した。
今回はフルゲートになるうえ、牡馬相手に重賞を勝ってしまった以上、ある程度マークを受ける立場になるはず。前走よりタイトな競馬が想定されるなか、後ろの切れる馬に負かされるシーンは考えておいても。
こちらもホールネスと同じく上がりがどれくらいかかる想定かで印の濃淡を考えたい。
▼スタニングローズ
父はキングカメハメハ、母父はクロフネ。祖母のローズバドはオークス、秋華賞、エリザベス女王杯で2着に好走した実力馬だった。ジャパンCなどを制した伯父ローズキングダム(父キンカメ×母ローズバド)とは3/4同血の関係にあたる。
ローズキングダムはミルリーフ5×4のイメージ通りの大箱12F向きのストレッチランナーだったが、スタニングローズはそこにクロフネが入る分、ヴァイスリージェント的、ロベルト的、北米的な小回り・パワー要素が足された印象。個人的にはローズキングダムの切れ味や大箱適性を減衰する代わりに、コーナーで器用に動ける機動力と坂をこなす馬力を足したようなイメージで捉えている。
実際にスタニングローズが手にした重賞タイトルの舞台は、いずれも直線が短い・コーナー4つ・直線急坂の3点セットを満たしていた。オークスでの2着があるとはいえ、本質的な適性は阪神内回り2000mや中山中距離向きだろう。
そんなタイプなので上がりの脚には限界がある。3歳秋以降、上がり600m3位以内を計時したことはなし。基本は内回りを好位でうまく立ち回って抜け出すキャラクター。
確かにC.デムーロの手綱は怖いが、それだけで人気に推されるのならさすがに疑問を呈しても。
▼サリエラ
父はディープインパクト、母は独オークス馬のサロミナ。兄弟にはサリオス、サラキア、エスコーラなどがいる活躍馬多数の優秀なファミリー出身だ。
サロミナは高い競走能力とドイツ血統らしい揉まれ弱さを伝えるため、概してその仔は外枠向き。最内でも揉まれないように注意して運べば何とかなるのだろうが、前走はイン前有利の馬場を意識した鞍上が敢えて積極的に出していった結果、マトモに揉まれ戦意喪失という格好になった。
イン前有利になりがちな秋の中山の馬場傾向だけを考えると100点満点の騎乗だったが、サロミナ的には疑問符と言わざるを得ないレースだった。あの形で揉まれるとサロミナはレースを放棄してしまう。
姉のサラキアがGIで好走したエリザベス女王杯と有馬記念はいずれも大外から直線だけでドカンと追い込む競馬。サロミナの理想はあの形だ。
血統的にも京都外回り適性は高いし、鞍上に鎮座ましますR.ムーア大明神の文字列は強烈。ゼッフィーロやプラダリアに先着した目黒記念だけ走ればこのメンバーなら十分に足りる。そういえばその目黒記念も8枠からの発走だった。
外枠必須の条件が付くので穴馬というには超えるべきハードルは厳然として存在するわけだが、それでも枠の問題さえクリアできるようなら一発狙う価値あり。
▼シンティレーション
父はロードカナロアで、母ファシネートダイヤはJRAのダートで1勝。伯父に青葉賞勝ちのアドマイヤコマンドがいる。
4代母のベーシイドは朝日杯3歳S(現・朝日杯FS)をレコードで制した快速リンドシェーバーを産んだ繁殖牝馬。基本的にはニアークティックな北米スピードを伝える牝系で、祖母トコアも自身の競走成績は芝1200m以下で3勝を挙げたスプリンターだったのだが、繁殖牝馬に上がった途端にガラっとキャラチェンジ。
トコアに関してはもっぱらカーネギー・サドラーズウェルズのスタミナを伝える繁殖牝馬になった。先述のアドマイヤコマンドはその代表例だろう。
ただでさえヌレイエフ≒サドラーズウェルズを標的にした組み合わせをデザインするとスタミナ化した産駒が出やすい種牡馬ロードカナロア。それを5×3で抱えるシンティレーションなので、カナロア×タキオンという字面の文字列より距離はこなせるはず。2200mも問題ないと見る。
前走の府中牝馬Sは勝ち馬ブレイディヴェーグこそ力が抜けていたが、シンティレーションもブレイディヴェーグと同じ上がり600m32秒8の脚を使って2着に追い込んだ。
ブレイディヴェーグが好走したレースで似たような走りができたうえ、血統表を見るとロードカナロア×サンデーサイレンス系×スペシャル血脈×リヴァーマンの組み合わせ。母父がディープインパクトの分、ブレイディヴェーグの方が王道の大箱向きで、シンティレーションはタキオンからロイヤルスキーが入る分、大箱に特化できていないという違いはあるが、キャラクターの方向性は似ているのでは。
前走の好走がフロック視されるようなら逆張り的に狙ってみたい。
■まとめ
まずは「ディープ血脈&リヴァーマン」のレガレイラの切れ味に注目。唯一の3歳馬として古馬の壁を超えられるか。
カナロア産駒ながらシンティレーションは距離は問題ないと見る。前走を見ても切れ味は屈指。末脚の活きるレース質なのでこの馬の適性は高いと見る。
最後に「ロマン枠」としてオールカマー大敗のサリエラを取り上げたい。外枠から揉まれない競馬で地力を発揮できれば十分に巻き返せる。
枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。
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