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血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/07/01 21:00

【七夕賞2024 血統展望】近年存在感を増す父キンカメ系 機動力ある名血の脈絡を狙う

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≪今週の動画≫


皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。

先週はラジニケも北九州記念もイマイチな結果に。西ではジャスパークローネが出遅れ、東ではウインマクシマムがまさかの後方待機。想定した隊列とのズレが極端で、直線で叫ぶタイミングもありませんでした……。

とはいえこれもまた競馬なり。

気を取り直してこの記事では週末の七夕賞(GIII・福島芝2000m)の血統展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

過去のレース傾向
13年に開幕2週目の日曜メインに実施時期が移動して以降、父キングカメハメハ系が【1-4-3-17】で複勝率32.0%をマーク。同期間での父サンデーサイレンス系が【7-6-2-65】、複勝率18.8%なので、狙いやすいのは父キンカメ系の方。

特に「父キンカメ系×母父ディープインパクト」という組み合わせは【1-3-1-1】で連対率66.7%、複勝率83.3%という驚きの数字を記録している。

その一方で、「父キンカメ系以外×母父ディープインパクト」という馬の成績はヒンドゥタイムズしか該当がないとはいえ、【0-0-0-2】とイマイチな成績に留まる。母父ディープなら何でも走るというわけではなく、キンカメ系との組み合わせに何か秘密があるのでは? と考えたい。

今回注目したのがキンカメが持つトムフールの血。この血はディープの母父に入るアッティカという血と非常に似通った構成をしている(※ファラモンド、アルシバイアディーズ、ブルドッグ=サーギャラハッドが共通)。

キンカメの血統構成を見たときに「最も小回り向きの器用さを伝える血」がどれかという話になると、それはやはりトムフール。この血をうまく刺激するのが小回り福島向きの適性を向上させることに繋がる。

「父キンカメ系×アッティカを持つ母」という組み合わせの馬は七夕賞で【1-4-1-2】で複勝率75.0%という成績。先述の母父ディープインパクト一門の他にロザムールも好走している。父キンカメ系からはこのパターンに該当する馬を狙いたい。

各馬の個別検討
キングズパレス
父はキングカメハメハ、母ドバウィハイツはアメリカで芝中距離のG1を2勝。半姉リバティハイツはフィリーズレビューの勝ち馬という血統背景。

条件戦で勝ち切れない成績を続けていたものの、これは単純に使う距離を間違えていた印象だ。

プリンシパルSでセイウンハーデスの半馬身差2着の成績があるように、この馬のベストディスタンスは2000m。ただ条件戦ではなぜかずっと2200m以上の距離にこだわって使われてきた。

キンカメ産駒で母父はマイラーのドバウィ、母も1800-2000mのG1馬で、半姉は1400mG2勝ち馬。長距離感のある血統ではなく、長い距離で最後に伸び切れずの敗戦を繰り返していたのは距離の壁に泣いていたとしか思えない。

反対に2000mでは先に挙げたプリンシパルS2着の他に、2勝クラス突破を決めた鹿野山特別、3勝クラス突破を決めた美浦S、パラレルヴィジョンやリフレーミング、レッドバリエンテといった後のOP好走馬に先着した府中Sなど好内容のレースばかりで、通算成績も【2-4-0-0】で連対率100%。血統からも戦績からもどう考えても2000mの馬だと思う次第だ。

キンカメにサーアイヴァーを入れてトムフール≒アッティカの形を取った点も七夕賞における父キンカメ系の傾向を考えるとプラスになるだろう。

前走は広い新潟外回りで好走したが、内回りにも対応できる配合でここでも十分に通用すると見る。2000mを使ってくれる以上、重い印を打ちたい存在だ。

リフレーミング
父がキングヘイローで母父はバトルプランという激シブ血統。母のヒーリングは南関東で1勝に留まったが、母の全兄ブレーヴマンは中央で2勝を挙げた。

ただ母の配合はバトルプランのツボを押さえた配合になっていて、それはスターレットストーム≒ストームキャットの組み合わせ。

バトルプランの母母スターレットストームがストームキャットと同じ「ストームバード×セクレタリアト」なのを利用して、バトルプランにストームキャット持ち母を組み合わせるのは、OPまで出世したヒデノインペリアルがそうだったし、ストームバードとニジンスキーの血統構成が近いのを利用して、スターレットストームに「ニジンスキー×セクレタリアト」の血を合わせるのには、アイビスSDを制したライオンボスが当てはまる。

配合からはヒーリングもある程度のポテンシャルを秘めていたと考えられる。現役時代にそれを発揮することは叶わなかったものの、息子リフレーミングにそのポテンシャルが受け継がれていると思えば、この好成績も納得だ。

リフレーミングのレースを振り返ると、直線が長過ぎるとラストで脚色が一緒になるレースが多い印象。前走の新潟大賞典も外から突き抜けそうな気配だったのに最後はパタッと止まったし、東京の条件戦で異様に勝ち切れなかったのも理由は同様だろう。

小回りベストの血統だとは思わないが、一瞬の脚を活かせるという意味では小回りの方が作戦を立てやすいというタイプに見える。鞍上は福島民報杯のようなイメージで乗ってくるだろうから、後はそれがハマる展開・馬場になるかどうか。

レッドラディエンス
父はディープインパクト、母ペルフォルマーダは2014年のアルゼンチンオークス3着馬。ディープにストームキャットを組み合わせるのはキズナなどで良く知られるお馴染みのニックスだ。

母父のジャンプスタートはエーピーインディ、ストームキャット、ミスワキというサンデーとの組み合わせで長い直線での切れ味を表現しやすい血で構成されており、そこにディープインパクトを迎えたレッドラディエンスは血統どおりの大箱向きの感。小回りより外回りで良さが出る血統というのが第一印象だ。

祖母ペルヴェルサはアリシドンやモスボローなどハイペリオン基調のスタミナ色が濃い配合をしているので、総合するとこの馬のベストは大箱の2400mというイメージ。小回り2000mというのはストライクゾーンからは外れてくる。

また2013年以降の七夕賞におけるディープインパクト産駒の成績は【2-2-1-16】で複勝率23.8%。馬券になったのは2014年、2016年、2017年の3回で、この3回はいずれも決着タイムが1分59秒0を切る高速決着の年だった。

反対に重馬場だった2020年は1人気ジナンボーが9着、稍重だった2021年は3人気ブラックマジックが8着に敗れるなど苦戦が続いている。同産駒を狙うなら良馬場がベター。

週末の天気がどうなるかはまだ見えないものの、少なくとも週中の福島は雨予報。そうなると週末が晴れたとてある程度時計はかかるはずで、この馬の良さが発揮できる馬場になるかどうかはやや見通しが怪しいのでは?

ボーンディスウェイ
父はハーツクライ、ドイツ産の母ウィンドハックはイタリア1000ギニーを制し、おばにはドイツの重賞・ハンブルクカジノ賞で2着のウィスパードドリームズなどがいる。

ハーツクライにドイツ血統と聞くと東京2400mの本格派をイメージしそうになるが、ボーンディスウェイは小回り2000m型に出た。これは母がレッドコッドの4×5を持つマイラーだったことに加え、リファールの血を引いていたからだろう。

リファールクロスのあるハーツクライ産駒はフェアトライアルを内包する影響か比較的小回りをこなす傾向にある。

ボーンディスウェイもスパッと切れる脚はない代わりにコーナーでも失速せずにポジションをキープできるので、やはり福島コースは合っている。前走も自分で前を捕まえて抜け出しかかったところを勝ち馬の強襲に遭った格好であり、決して力負けではなかった。

引き続き福島競馬場が舞台であれば印を回しておきたい。

ノッキングポイント
父はモーリス、母はオークス2着のチェッキーノ、半妹に今年のオークスを制したチェルヴィニアがいる超良血馬だ。

シンコウラブリイに代表されるハッピートレイルズの牝系はコディーノのような小脚を使える機動力型が多い。前向きな気性の馬も多く、個人的には小回りで評価を上げたいファミリーという認識でいる。

ただ「モーリス×キングカメハメハ」という配合はリヴァーマン≒ミルリーフの組み合わせ、というかカーネギー≒ラストタイクーンという組み合わせになるため、長い直線向きの切れ味を受け継ぐことも多い。実際にノッキングポイントやアルピージャはいずれも東京や新潟外回りといった直線の長いコースで結果を出した。

ということで陣営が東京だったり新潟の外回りを選んで使ってきた理屈も理解できる。

とはいえここ最近の頭打ちっぷりを見るに「何か変える必要がありそうだぞ?」というのも偽らざる感想。そこで小回りコースに目線を替えてみるのはハッピートレイルズ的に「あり」な選択肢だと考える。

グラスワンダーにハッピートレイルズと考えれば、それこそ小回り・内回り向きの配合なので、うっかり変身する可能性はあるんじゃなかろうかと。少なくとも押さえの印は回しておきたい。

フェーングロッテン
小回り向きのヘイロー≒サーアイヴァーを重ねたうえ、母母には短距離血統のラインレジーナが鎮座する形になったので、フェーングロッテンは配合どおりの中距離の先行馬に出た。ラジオNIKKEI賞勝ちの実績が示すように福島コースはベストの舞台。サクッと先行してフワッと粘り込めるコーナー4つの小回りでこそ良さが出る。

去年の七夕賞以降、行き脚がつかずの敗戦が続いていたが、去勢明け一発目となった前走の小倉大賞典では久々に序盤から位置を取れた。

セルバーグが離して逃げたため、実質逃げの頑張りやすい隊列だったのも事実だが、その一方で4角ではカラ馬を気にするシーンも。それでも5着に粘ったのは復調の兆しと見て良いだろう。

ハンデは鍵になるものの、去勢が身体に馴染んだ頃合いだろうし、得意の福島で実績馬の復活にベットする手はある

セイウンプラチナ
昨年の勝ち馬セイウンハーデスの叔父。短距離馬ミッキーアイルの産駒ではあるが、この馬は母系に入るマルゼンスキーが強く出ているのか距離が延びて良さが出た。

夏の2週目開催になって以降は以前ほどの活況こそ呈していないものの、歴代の七夕賞はマルゼンスキー持ちがバカスカ穴をあけてきた実績がある。適度に時計がかかりそうな状況であれば印を回しても。

まとめ
2000mであればキングズパレスを最上位に考えたい。勝ち味に遅いところはあるが、小回りもこなせる配合だしここでも軸としては信頼できると見る。

また最終的なオッズが読みにくいものの、フェーングロッテンの復活に穴の期待を託してみても。前走のように先行できれば得意の舞台で一発があっても驚けない。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。

<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上

在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。


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