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血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/10/28 21:00

【アルゼンチン共和国杯2024 血統展望】2度の坂越え&2500m タフな舞台で輝くトニービンの府中適性

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≪今週の動画・アルゼンチン共和国杯≫
▼タフな府中の2500mで輝くトニービンの血!


皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。

この記事では、週末の重賞・アルゼンチン共和国杯(GII、東京芝2500m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

過去のレース傾向
過去10年で父サンデーサイレンス系が7勝。芝の重賞ということで出走数自体が多い同系の好走数が増えるのは自明の理ではあるのだが、もう少し細かく見てみると若干の偏りがあることが分かる。

父ハーツクライ系【3-2-1-16】
 勝率13.6% 連対率22.7% 複勝率27.3%
うちハーツクライ産駒【3-2-1-15】
 勝率14.3% 連対率23.8% 複勝率28.6%


父ディープインパクト系【1-1-1-25】
 勝率3.6% 連対率7.1% 複勝率10.7%
うちディープインパクト産駒【1-1-0-24】
 勝率3.8% 連対率7.7% 複勝率7.7%

父ステイゴールド系【3-0-1-21】
 勝率12.0% 連対率12.0% 複勝率16.0%
うちステイゴールド産駒【1-0-1-13】
 勝率6.7% 連対率6.7% 複勝率13.3%


ご覧のとおり、サンデー系の主要3系統で比較すると父ハーツクライ系が優勢。

ハーツクライと言えば母父に入るトニービンの血が特徴。ウイニングチケット、エアグルーヴ、ジャングルポケットなどなど、かつて府中の芝GIを庭とした名血は、代を経てもその東京競馬場適性を脈々と伝えるということだろう。

ちなみに東京競馬場がリニューアルされた2003年以降のアルゼンチン共和国杯において、トニービン内包かつ当日5番人気以内に支持された馬は【6-8-2-19】で、勝率17.1%、複勝率45.7%をマーク。当日人気に支持されるのは、それまでに相応のパフォーマンスを見せていたことの裏返し。力のあるトニービン内包馬は積極的に狙っていける。

各馬の個別検討
セレシオン
父はハーツクライ、母クルソラからはダートの重賞で活躍したピオネロや桜花賞2着、オークス3着のクルミナルなどが出る。

前述したようにこのレースでのハーツクライ産駒は狙いが立つ。出走馬の顔ぶれを見ても当日上位人気に支持されそうで、「当日人気に支持されたトニービン内包馬」に該当するのはシンプルに加点要素だ。

距離延長がポイントに挙げられるが個人的にはむしろ好感。かえって良さが出ると見る。

リファールクロスを抱えるため、恐らく前受けしての粘り強さこそが本懐。500mの延長で出脚の遅さをカバーできれば本質的な血統の良さが出る。

母父キャンディストライプスは天皇賞・秋を3番手抜け出しで制したバブルガムフェローの半兄で、それを念頭にセレシオンの血統を眺めると、「リファールマシのバブルガムフェローにブラッシンググルームとトニービンを足して南米血統でまとめました」という配合。スパッと切れる末脚で面倒を見るより、先行してハイペリオン的なスタミナでジワジワっと踏ん張った方が良さが出るはずだ。

そのうえ管理するのは友道厩舎。

ダートでデビューしたフレンチデピュティ産駒にアルゼンチン共和国杯、阪神大賞典、そして天皇賞・春を勝たせる厩舎なわけだから、ハーツクライ産駒ならよっぽど好走させやすいはず。

ちなみに友道厩舎がアルゼンチン共和国杯に管理馬を出走させた場合の通算成績は【2-1-4-8】で複勝率46.7%。当日5番人気以内だと【2-1-4-2】で複勝率77.8%まで数字が跳ね上がる。中長距離に強い厩舎カラー。人気の友道にはアルゼンチン共和国杯ではちょっと逆らいにくい。

クロミナンス
父はロードカナロアで、母はJRA4勝のイリュミナンス。近親には中京記念連覇のフラガラッハや小倉記念3着のフェルメッツァなど。

短距離志向の強いロードカナロア産駒ながらクロミナンスが距離をこなすのは、牝祖スキッフルの影響だろう。

スキッフルはトニービン×ヌレイエフ×ハイラインという、どこをどう切ってもハイペリオンな配合で、確かな成長力と長めの距離への適性を脈々と伝える繁殖牝馬。中京記念を連覇したデュランダル産駒フラガラッハは、現役生活の後半は2000mの鳴尾記念で3着に好走したり、日経賞で逃げて5着に粘ったりと距離適性が長めにシフトしたし、フェルメッツァも当初はマイラーだったのに、最後は2000mベストの馬に完成した。

この牝系の後押しを受け、クロミナンスも距離をこなせるカナロア産駒となったわけだ。

キンカメ×マンカフェの配合のうえ馬場が渋った方が良いスキッフル牝系なので、雨が降っても無問題。成長力に富む牝系なので年齢を気にすることはない。そもそも使った数が少ないわけだし。

当然人気するだろうが、トニービンを内包することもあり、やはりきちんと評価すべき存在だろう。待望の重賞初タイトルの可能性も十分だ。

サヴォーナ
父はキズナ、母テイケイラピッドはJRA1勝。母父スニッツェルはオーストラリアのリーディングサイアーに輝いたこともある短距離の名種牡馬。

ここだけ見るとマイラーに出てもおかしくないのだが、サヴォーナの場合は12Fの重賞で好走歴のある祖母ラプーマ、ひいてはその父ロードアットウォーのスタミナが強く出たようで、長丁場を体力で押し切りたい馬に完成した。

ロードアットウォーのスタミナで長丁場を走る馬といえば、個人的にはいつの時代になってもシビルウォー。サヴォーナに関しては「芝向きシビルウォー」の二つ名を進呈してもうだいぶ時間が経つ。

本馬が「芝向きシビルウォー」だとすれば、その特徴は本家と同じくスタミナとジリ脚。東京コースで切れ味を求められるとちょっとイヤな感じがする。

青葉賞のように自分から踏んでいって乱戦に持ち込めればあるいはと思うものの、目標になる分の不利もあるよね? といったところ。実力は認めつつ、東京だとなかなか乗り方が難しいように見える。

ショウナンバシット
札幌芝2600mのオープンを連勝中の本馬。父はシルバーステートで、祖母オーサムフェザーはBCジュベナイルフィリーズ勝ち馬という良血馬だ。

3歳春に若葉Sを制し皐月賞でも5着に好走したものの、一転その後はスランプに。なかなか浮上のきっかけを掴めないままだったが、札幌の2600mを使ったのがひとつの転機に。リステッドの札幌日経OPで久々の勝利を手にすると、続くタイランドCも勝利した。

距離を延ばして良さが出たのは、牝系の奥にヴェイグリーノーブル・オリオールのラインが入って、バークレア≒オリオールの組み合わせになるからだろう。このパターンのディープ系は長めの距離で結果を残す傾向にある。

連勝したレースを見るとコーナーで動いてそのまま勝負をつけるという形。直線が短くコーナー部分の多い札幌の特性とマッチしたレースぶりだった。

この機動力は父シルバーステートの影響が強い。シルバーホーク・ロベルトの影響が強いシルバーステートは、基本的に産駒も小回りや機動力の要るコースに強い特徴がある。反対に直線の長いコースだと末脚が最後まで続かない傾向にあり、特に東京コースでの成績は振るわない。

またギエムの仔もエヴィダンシアにしろ、テリオスルルにしろ、小回りでエルプラド由来の機動力を活かす競馬の方が良いので、この東京替わりは正直歓迎できないのでは?

ショウナンバシットの成績を見ても、連対したレースの多くは札幌や阪神の内回りといった直線の短いコース。その特性を考えると東京の2500mは鬼門になる予感が漂う。

ミクソロジー
父はオルフェーヴル。祖母のコマーズからは交流重賞で活躍したスターリングローズやミツバ、マイル重賞で渋い走りを見せたサイドワインダーなどが出る。

マイラー牝系出身ではあるものの、万葉S、ダイヤモンドSと3000m級のレースで2戦連続レコードの快走を続けたのは、折り合いに困らないこの馬の特性が大きい。2200mよりは2500mの方が追走は楽だろうし、1回叩いた上積みも見込めるはず。

オーソリティ1頭によるものとはいえ、オルフェーヴル産駒はステイゴールド系のなかでは抜けてこのレースと相性が良いし、ミクソロジー自身、これまで右回りが【1-1-0-3】に対し、左回りが【4-0-1-1】のサウスポー。

東京のこの舞台であれば前進があるし、比較的今回はメンバーが薄い印象も受ける。この馬のダイヤモンドS勝ちの実績でも十分威張れるくらいの面子なので、一発あるならという狙いは持っておきたい。

まとめ
人気サイドからはハーツクライ産駒のセレシオンをまずは取り上げたい。このレースを得意とする友道厩舎という点からも注目に値する。

中穴からはミクソロジー。叩いて上積みがあるようなら今年のメンバーなら食い込みがある。仮にここでダメだとしても、オルフェーヴル産駒が得意とするステイヤーズSで狙おうという発想も一緒に持っておきたい。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。

<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上

在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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