≪今週の動画・オールカマー≫
▼ひと目でわかる攻略の秘訣！


皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。

3連休の競馬はいかがでしたか。国内の競馬に加えて、海外では1カ月後の凱旋門賞を占う愛チャンピオンSやアークトライアルやらがあったおかげで、私は完全に寝不足です……。

さてさてこの記事では、週末の重賞・オールカマー（GII、中山芝2200m）の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

■過去のレース傾向
ヒシアマゾンとアイリッシュダンスの牝馬ワンツーで決まった1995年、3歳（旧4歳）のメジロドーベルがサクッと逃げ切った1997年（←ものスゴい勢いで直線後ろを振り返る吉田豊でおなじみ）など、以前からオールカマーは牝馬が強いレースだったのだが、その傾向は近年もさして変わらず。

中山開催近10回のオールカマーにおける牝馬の成績は【5-3-1-12】で勝率23.8％、複勝率42.9％。単勝回収率231％＆複勝回収率123％と、リターンの点からも言うことなしだ。

ちょっと先にある府中牝馬Sではなく、わざわざ敢えて牡馬相手のGIIを使おうとするくらいなので、コース適性、距離適性はもちろんのこと、陣営的として力量に自信のある馬が使われるのは自明の理。使い分け云々もあるだろうが、勝算を持って使われる馬が多いのがこの成績に表れている。

好調な牝馬のうち、父サンデーサイレンス系に限定すると、【3-3-1-6】複勝率53.8％とさらに成績を上げてくる点も要チェック。上述の対象10回中、父サンデーサイレンス系牝馬の出走があったのは7回あったのだが、そのうち実に5回で馬券絡み。該当馬がいればチェックしておくのがベターだろう。

また直線の急坂を2回登るコース設定もあって、ある程度のパワーや馬力が求められるのもオールカマーの特徴。

攻略に効果的なのがデインヒルの血で、中山開催近10回の当レースにおける父もしくは母父デインヒル系の競走馬は【1-0-2-3】で複勝率50.0％をマーク。母数こそ少ないが、なかなかの好成績と言えよう。昨年は1着がハービンジャー産駒のローシャムパーク、3着ゼッフィーロの母父はデインヒルダンサーと好走馬2頭がこのパターンに当てはまっていた。

デインヒルから坂を登るためのデカいトモを受け継ぐのも好走への近道になるようだ。

■各馬の個別検討
▼レーベンスティール
父はリアルスティール、母トウカイライフはJRAのダート中距離で3勝。一族を見ると半姉にコスモス賞勝ちのルーチェデラヴィタがいるくらいで、近い代で重賞好走歴があるのはレーベンスティールのみ。

母の血統はトウカイテイオー×リアルシャダイ×ターゴワイス×ニジンスキー系キングオブダービーという並び。レーベンスティールは前走はエプソムCを制したわけだが、ひと昔前の菊花賞で走っていたような母の血統を見るかぎり、距離は1800mより長くて良さそう。

トウカイテイオー由来のトゥルビヨン的なフランス血統風味の柔らかさや切れ味が表現されていることもあって、個人的には京都大賞典最強説を唱えているのだが、中山の2200mも前走より距離としては向くはず。実際、このコースでセントライト記念も制しているわけだし。

人気を考えると「積極的に買いたい！」と言うほどではないが、それでも重い印を打つ必要はあるだろう。月曜時点では対抗が濃厚というイメージで考えている。

▼ロバートソンキー
父はルーラーシップ。祖母トウカイテネシーの全兄にはGI4勝のトウカイテイオー、近親にはアルゼンチン共和国杯勝ちのトウカイオーザなど。

個人的にロバートソンキーとレーベンスティールはよく似ていると思っていて、トウカイテイオーやその父シンボリルドルフ由来のトゥルビヨン的な柔らかさがある印象。この2頭が少しタフ寄りな馬場でズバッと斬れるのは、トウカイテイオー由来のシンボリルドルフ感、トゥルビヨン感がその根底にあるように見える。

またエアグルーヴの血とオールカマーは相性が良く、昨年はエアグルーヴ牝系のローシャムパークが1着、ドゥラメンテ産駒のタイトルホルダーが2着でワンツー決着を決めた。ロバートソンキーはルーラーシップ産駒なのでこれを満たす。

確かに前走のジュライSでは大敗したものの、これはダートかつ長期休養明けということで度外視可能。芝に戻ればまだ見限れない。

人気のある馬なのでオッズ落ちはなかなか想定し得ないところだが、薄くても良いので印を回した方がベター。

というかレーベンスティールを買う人はこの馬を一緒に買わんと理屈が通らんところがあるんじゃない？　とも思ったり。この2頭は適性が相当近いところにあると思っているので、レーベンスティールとロバートソンキーをセットで買う発想は持っておきたい。

▼サリエラ
父はディープインパクト、母はドイツオークス馬サロミナ。きょうだいにサリオス、サラキア、エスコーラなどがいる優秀なファミリーの出身だ。

このきょうだいは晩成傾向にあるのが特徴。確かにサリオスは早期からバリバリ活躍し2歳GIまで持っていったわけだが、あれはデインヒル・ダンジグ由来のマッチョな筋力がメインで発現していたからであってむしろ例外。

5歳夏から成績を上昇させたサラキアのように基本は歳を重ねてようやくパンとしてくるイメージ。サロミナはドイツ血脈の重厚さ＆成長力をしっかり伝える繁殖牝馬という認識でいる。

サリエラも大事に大事に使われてきてただいま5歳の秋。典型的な「サロミナ成長曲線」に乗っていると仮定するならば、完成はようやく今なのでは？　イメージとしては完全に全姉サラキアのそれだ。

3400mのダイヤモンドSで、長距離日本一のテーオーロイヤルにクビ差まで迫ったように、打点の高さは牡馬が相手でも十分に通用する。それがようやく完成のときを迎えたとすれば、牝馬の強いオールカマー、これは買う価値があろうというもの。

加えてサロミナの仔は牝系に入るオリオールの影響か、どうにも揉まれ弱いところがある印象。全姉サラキアがGIで馬券になったのはいずれも大外一気の競馬だった。

それを思うとフルゲートの春天からフルゲート割れ想定のオールカマーへ条件が替わるのもプラスになるはず。揉まれるリスクが低くなるので。

前走は最内枠から揉まれない外へ誘導したまでは良かったものの、そこで行きたがってガス欠というレースぶり。加えて左後ろの落鉄もあって、力を発揮できたとは言い難い内容だった。3200mのGIから2200mへのGIIへというのは条件好転で、巻き返しの余地はタップリ。

週末は雨が降る予報もあるが、サラキアの府中牝馬Sを見るかぎり、馬場が渋っても問題なかろう。何てったってドイツ牝系出身なわけで。

かつて凱旋門賞を夢見た素質馬の巻き返しに期待したい。

▼サヴォーナ
父はキズナ、母父のスニッツェルは豪州リーディングサイアーに輝いた短距離の名種牡馬。ここだけ見ると2000mの馬、ともするとマイラーにも見えるが、この馬の場合は12Fの重賞で2着がある祖母ラプーマの影響が強く出ているよう。結果的にロードアットウォー風味、リボー風味のスタミナ型に出た。

ロードアットウォーのスタミナで走る馬と言えば、個人的にはダートの長丁場で活躍したシビルウォーが真っ先に思い浮かぶ。サヴォーナはさしずめ「芝向きシビルウォー」というキャラクターか。

加えて母父スニッツェルはデインヒル系なので、冒頭に取り上げた「母父デインヒル系」に合致。中山の急坂も問題ないはずでレースへの適性は高い。

前走の函館記念では人気を裏切る結果に終わったが、最内枠で包まれるのを嫌って早めに外に出したのが裏目に。当時は最終週にも関わらずインが使える状況で、外を回した分が丸々距離ロスになってしまった。それでも最後は脚を使っていたように、一定の力を見せた内容だった。

格上げ戦のGIIであっても立ち回り次第で十分に反撃可能と見る。

■まとめ
上位勢が順当に好走しそうな予感がするが、そのなかでも父サンデーサイレンス系の牝馬＆サロミナの本格化をテーマにサリエラを最注目馬として取り上げたい。「目指せサラキア姉さん」ということで。

また、"芝向きシビルウォー"サヴォーナが中山2200mでどんな走りを見せるかにも注目。急坂は問題ないので、立ち回り次第で巻き返しがある。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。

＜プロフィール＞
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。