おしらせ
【コラム】アメリカJCC/ドリームパスポートが貫禄を見せる!
「生まれた時代が悪かった!」
ソングオブウインドが優勝した06年菊花賞、レース終了後のことである。京都競馬場の馬主席、私の席の3つほど隣で誰かが何度もそんな言葉を叫んでいた。
皐月賞、ダービーとクラシックで惜しくも後塵を拝してきたライバル、メイショウサムソンは直線に入ったあたりで競り落とした。逃げを打ち、遥か先方を行っていたアドマイヤメインもゴール前で射程圏に捉えると見事に差しきった。「最も強い馬が勝つ菊花賞」で最も強い競馬をしたのが“その馬”だ。しかし、伏兵ソングオブウインドの大駆けに遭い2着惜敗。
もちろん“その馬”とはドリームパスポートのこと。この馬のようにGIや重賞で2、3着を繰り返し“シルバーコレクター”といった決してありがたくない愛称をつけられるような競走馬に対し、慰みの言葉として繰り返し使われてきたのが冒頭の言葉である。
舞台は変わり、菊花賞から1ヶ月後のジャパンC。
メイショウサムソンはもはや相手にせず、海外の女傑ウィジャボードの末脚も封じた。しかし今度は2馬身先で“あの馬”がゴール板を駆け抜けた。世間の注目は日本競馬史上最強馬の復活に向けられたが、それでもその陰で2着を死守していたのはドリームパスポートだった。
馬主が替わり、厩舎が替わり、そして乗り役は相変わらず定着せず。馬自身とは何ら関係ない部分で様々な変化があり、それに伴い不穏な情報もアメリカJCCを前に連日マスコミやネットに流されている。特に栗東から美浦へという環境の変化は不安の種であり、その点を陣営に直撃してみた。しかし、返ってきた言葉が
「うるさいよ(笑)。厩舎が替わっておとなしくなるようなら、かえって心配になるだろ」
であれば、心配は無用のようだ。
有馬記念後、昨年12月に完成した茨城の鉾田トレセンへ放牧に出された。元日も休むことなく、全長900mという坂路を毎日2本ずつ乗り込んでの帰厩というのだから、仕上がりに不安はない。
なによりも戦ってきた相手が違う。メンバー構成を見渡してみても、貫禄を見せつけなければならない相手ばかりだ。
ここは頭で……と言い切りたいところなのだが、舞台は3?4コーナーでペースが緩む中山の外回りコース。テン乗りの松岡騎手が折り合いに専念しすぎて仕掛けが遅れるようなことがあれば、またしても「定位置」止まり、という可能性も考えておかなければならないだろう。(佐藤壽恭)