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【ドバイワールドCデー展望】レーティング最上位チュウワウィザードが10年ぶり日本馬V狙う/春秋グランプリ馬クロノジェネシス 海外でも勲章を
昨年は新型コロナウィルス感染拡大の影響により中止となったドバイワールドC開催が、2年ぶりに行われる。日本調教馬は12頭参戦。そのうちドバイワールドC、ドバイシーマクラシック、ドバイターフ、ゴールデンシャヒーンの4レースではJRAから馬券が発売される。
■ドバイワールドC(GI、ダ2000m)/発走時刻:3月28日午前1時50分(日本時間)
2018年、2019年と連覇を果たしたゴドルフインのサンダースノーや、層の厚いアメリカ馬のエース級は参戦せず今年はかなりの混戦模様。事前発表のレーティングで117とメンバー内最上位に評価されているのは日本から参戦するチュウワウィザード(牡6、栗東・大久保)だ。昨2020年は1月の川崎記念、そして12月のチャンピオンズCを制しGI級を2勝。同年のJRA賞最優秀ダートホースに選出された。今年初戦は自身初となる海外遠征戦(海外遠征そのものは昨年中止となったドバイで経験済み)のサウジCだったが、ここでは勝ち馬から3秒以上離された9着に終わっている。調整の難しさにくわえ、雨が降ってノメるような馬場も合わなかったか。完全な力負けではなく、海外2戦目となるここでの本領発揮に期待。ワンターンコースだった前走から、追走が楽になりそうなオーバルのメイダン2000mに舞台が替わるのも好材料と言える。2011年ヴィクトワールピサ以来の日本調教馬Vとなるか。サウジアラビアからドバイへの輸送後は調整の順調さが伝えられており、状態面にも不安なし。
ブックメーカーで上位人気に推されているのがミスティックガイド(牡4、米・M.スティッドハム)だ。昨年9月のGIII・ジムダンディSで重賞初勝利。GI初挑戦だった2走前のジョッキークラブGCで0秒1差2着、そして休養明けの前走レイザーバックハンデではトップハンデを背負いながら1秒0差の圧勝を収めている。GIタイトルはなく、海外遠征も初だが明け4歳の充実ぶりを考えればここで勝ち負けの競馬になっていい。ゴドルフィン勢は今回3頭参戦だが、もっとも勝負気配が高そうなのはこの馬だろう。
ほか、コロナ禍で昨年は秋開催となった米3冠レース・プリークネスSで3着、前走のペガサスワールドCでは2着など米GI戦線で健闘を続けるヘスースチーム(牡4、米・J.ダンジェロ)、サウジCで3着と今回のメンバー内では最先着だったグレイトスコット(セ5、サウジアラビア・A.ミシュリフ)、マクトゥームチャレンジラウンド2、ラウンド3とメイダンの前哨戦で連勝しているサルートザソルジャー(セ6、バーレーン・F.ナス)らも上位争いに加わってきそうだ。
■ドバイシーマクラシック(GI、芝2410m)/発走時刻:3月28日午前01時10分(日本時間)
昨年は中止となったが、一昨年はシュヴァルグラン、スワーヴリチャードが2、3着、2013年から2016年も日本調教馬が馬券内に入っており、日本調教馬と相性の良いレースだ。ブックメーカーでは現在1人気に推され、事前発表のレーティングは121とメンバー上位で最有力候補となっているのがクロノジェネシス(牝5 栗東・斉藤崇)だ。昨年春秋グランプリ制覇を果たしたのち、海外GIタイトルを目標に掲げここまで順調に調整を行ってきた。現地到着後も厩舎では穏やかでリラックスして過ごしており、精神面も良好。またメイダンの芝は少し硬めで力がいる馬場状態だが、これも当馬にとっては好材料と言えるだろう。人馬ともに初めて迎える海外遠征戦ではあるものの、ジェンティルドンナ以来となる日本馬の優勝を期待できそうなシチュエーションだ。
事前レーティングがクロノジェネシスと同じく121のモーグル(牡4 愛・A.オブライエン)は、前走・香港ヴァーズを制しており、ここでも勝ち負けとなりそうな力量の持ち主。昨年の凱旋門賞は所属厩舎の薬物混入問題によりレース目前で出走取消となってしまったが、パリ大賞典で負かしたインスウーヴは凱旋門賞で2着、ゴールドトリップは4着と好走していた。相手関係を鑑みれば凱旋門賞でも勝ち負けだっただろう。前走・香港ヴァーズは直線で逃げたエグザルタントを交わして、最後はこれに3馬身差をつけ優勝し、強さを誇示する結果だった。A.オブライエン師は2013年セントニコラスアビーでドバイシーマクラシックを制しており、今年も虎視眈々と勝利の座を狙う。
ほか、前哨戦ドバイシティオブゴールドの勝ち馬ウォルストンストリート(牡7、UAE・C.アップルビー)、昨年の仏ダービー馬ミシュリフ(牡4、英・J.ゴスデン)、一時期不調ではあったが、年明けの京都記念を制し弾みをつけて中東入りしたラヴズオンリーユー(牝5 栗東・矢作)にも大いにチャンスがありそうだ。
■ドバイターフ(GI、芝1800m)/発走時刻:3月28日午前0時30分(日本時間)
日本馬が過去に5勝(2014年以前は「ドバイデューティフリー」の名称。また、2001から2010年は距離1777mで施行)、近4年は3勝2着2回と連続で連対を果たしており、芝中距離カテゴリでは世界トップクラスの層を誇る日本勢が得意としているレースとなる。
しかし、今年の日本の出走馬はコロナ禍が影響してか、GI勝ちのないヴァンドギャルド(牡5、栗東・藤原英)ただ1頭。過去の好走馬はほぼすべてGIウイナーだったのに対し、同馬はGII・富士S1勝のみと実績面で見劣る感は否めないうえに、距離1800mは過去に勝ち鞍こそあるものの微妙に距離が長い印象がある。もっとも、平坦のワンターンは同馬向きのコースで「テンションが高い馬なので滞在競馬はプラス」という藤原英師の見立てもプラス材料。前走4着の東京新聞杯は明らかに余裕残しの仕上げだったので、上積みも見込める。日本馬の近年の3勝はすべてヴァンドギャルドと同じくディープインパクト産駒だったし、激走に期待が懸かる。
上位人気に推されそうなのは、まず、出走馬のレーティングにおいて2位に7ポンド差をつける123と最上位だったロードノース(セ5、英・J.ゴスデン)。GI初挑戦だった昨年のプリンスオブウェールズSを2着に3馬身3/4差をつけて快勝し、距離が長いと見られていた前走・BCターフも4着に健闘。鉄砲駆けするタイプで今年初戦のローテーションもプラス、L.デットーリ騎手の手綱も心強い。実績最上位は明らかで、初のメイダンコースをこなすことができれば好勝負必至だろう。
もう1頭の本命候補は、同じメイダン芝1800mで行なわれた前哨戦・GIジェベルハッタで鮮烈な末脚を繰り出し優勝したロードグリッターズ(セ8、英・D.オメーラ)。アーモンドアイが勝った2019年のドバイターフでも3着に入っており、メイダン競馬場で【3.0.3.0】とコース相性の良さを誇る。前走の勝ちっぷりは8歳になっても衰えはなく、むしろ充実期とも言える内容だったし、ジェベルハッタの上位馬は過去本番でも幾度となく好走しているデータも心強い。
ほかに面白そうなのは、そのジェベルハッタで3着だったアルスハイル(牡4、UAE・C.アップルビー)。重賞勝ちはなく2走前にリステッドレースに勝った程度で、上位馬に比べて実績は大きく見劣る。しかし約8カ月ぶりだった前走・ジェベルハッタでは直線で1着もあるかという走りを見せて3着に健闘。力をつけている段階の4歳馬で、ひさびさを叩かれての上積みも大いに見込める。今年のゴドルフィン勢の1番手であり、鞍上が日本でもおなじみのW.ビュイック騎手なのも不気味だ。
あとは、あのエネイブルが勝った2019年エクリプスSで3着に入ったリーガルリアリティ(セ6、英・M.スタウト)。常に堅実に走ってくる馬であり、今回も手綱をとるR.ムーア騎手とのタッグではグレードレースで3着を外したことは一度もない。ヒモには押さえておきたい1頭だ。
■ドバイゴールデンシャヒーン(GI、ダ1200m)/発走時刻:3月27日午後11時40分(日本時間)
スプリント路線は日本にとって苦手なカテゴリーで、当レースでも2002年参戦のブロードアピールから2018年のマテラスカイまで、延べ11頭の日本馬が挑戦したが3着内に入ったことはゼロ。しかし2019年マテラスカイが初めて2着に入り、さらには先日のリヤドダートスプリントではコパノキッキングが優勝、2着にもマテラスカイが来て、日本馬ワンツーの快挙を果たした。ここに来て日本のダート・スプリンターも力をつけてきていることがうかがえる。
その激走が評価されて出走馬中のレーティング・2位タイ(112)となったのがコパノキッキング(セ6、栗東・村山)だ。2019年のカペラS以来、勝ち星から遠ざかっていたなか、前走リヤドダートスプリントでは後方追走から大外一気でまとめて交わし、逃げ粘るマテラスカイを捕らえて勝利。海外初戦ながら持ち味を遺憾なく発揮し、当レースへ弾みをつけた。今回はテンの速い逃げ先行馬が揃っており、ペースや展開は向きそう。まとめて差し切る末脚がドバイの地でも炸裂することに期待したい。ドバイの後は結果次第でアメリカへ渡りBCスプリントを目指すが、スピード自慢のアメリカ調教馬相手にどこまで通用するか試金石となるレースでもある。
マテラスカイ(牡7、栗東・森)は先述したように2019年当レース2着、2020年サウジアC(リヤドダートスプリントの前年までの名称で同一レース)2着、そして今年のリヤドダートスプリントでも2着と、勝ちこそないものの海外では国内以上のパフォーマンスを披露している。国外の連戦も海外遠征に慣れた森厩舎ならお手の物で、調整に抜かりはないだろう。ただしここは逃げ先行馬が多く、展開的には厳しそう。それでも、同馬の持ち味はキップのいい逃げであるし、思い切ったレースを見せてほしい。前走初騎乗だった戸崎騎手は2度目の手綱でコンタクトもよりとりやすいはずだ。なお、当レースはアメリカ生産馬が圧倒しているのだが、このマテラスカイも先のコパノキッキングもどちらも「アメリカ生産馬」である。
海外勢で注目すべきは、やはりダート短距離王国の米国馬。ワイルドマンジャック(セ5、米・D.オニール)はダート2走目の前走GIII・ペロスヴェルデスSを先行して圧勝。レーティングも2位に1ポンド差の僅差とはいえトップの113を得ている。頭打ちだった芝からダートへの転向が見事にハマッた格好だが、それでもまだ一線級とは対戦しておらず実力は未知数。ただし、昨年メイダンで開催されたナドアルシバターフスプリントを快勝しており、当地の環境にフィットできている点はプラス材料だ。
それ以上に人気を集めそうな米国馬がヤウポン(牡4、米・S.アスムッセン)。デビューから圧倒的なスピードを見せつけて無傷の4連勝を果たし、臨んだ初GI・BCスプリントでは1番人気の支持。ところがレースではハナにいけず、直線では両隣から挟まれる不利を受けて8着に大敗。揉まれ弱いところがあることを露呈してしまった。とはいえ、伸び盛りの明け4歳馬であり、巻き返す可能性は十分。スタートを決めれば圧勝まである。
地元勢では、前哨戦であるGIII・マハブアルシマールの勝ち馬キャンヴァスト(セ6、UAE・D.ワトソン)と2着馬グッドエフォート(牡6、UAE・I.モハメド)。それと、GIII・アルシンダガスプリントの優勝馬アルタリク(セ5、UAE・D.ワトソン)と3着馬グラディエーターキング(牡5、UAE・S.シーマー)あたりが、地の利を得ての好走に期待が持てる。なかでも、大外枠からハナを奪ってハイペースで逃げ粘ったグッドエフォートとアメリカ生産馬であるグラディエーターキングが穴で面白そう。
最後に残る日本勢2騎について。ジャスティン(牡5、栗東・矢作)の前走・リヤドダートスプリント(6着)はスタートで後手を踏み、不完全燃焼に終わったもの。国内での力関係を見れば、コパノキッキングやマテラスカイにもヒケをとっておらず、5歳の若さを考えれば巻き返しも十分考えられる。レッドルゼル(牡5、栗東・安田隆)にも同様のことがいえるが、ただし同馬にとって1200mはやや短い印象。絶対的なスピードが求められる一戦であり、スピード負けする恐れはある。好走するには超ハイペースになってほしいところだ。
(Text:Funaki/sakura kyosuke/Nishimura)
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