【今週の重賞】[紫苑S]秋華賞へ向けファインルージュらオークス出走組が始動

■9月11日、中山競馬場で第6回・紫苑S（GIII、芝2000m）が行われる。

いよいよ秋競馬がスタート。その口火を切るこのレースは秋華賞トライアルとして2000年に創設され、2016年からGIIIへ昇格した。過去には、ヴィブロスやディアドラがここを使って秋華賞を勝利しており、本番を占うレースのひとつ。上位3頭に与えられる優先出走権を巡って、今年も熾烈な争いが繰り広げられそうだ。

桜花賞3着のファインルージュ（牝3、美浦・岩戸）は、前走オークスで11着に敗退。折り合いを欠かずに馬群の中団でじっと構え、ロスを減らすべく内からレースを進めたが、騎手もレース後に語ったように最後は脚が残っていなかった。やはり距離に課題があっての結果だろう。オークスでは明確な敗因があるだけに、2000mへの距離短縮はプラス。血統面を考えるとマイルまでがベストかもしれないが、昨年は同じキズナ産駒のマルターズディオサが勝利している。まだ若い3歳とあれば距離のごまかしはききそうだ。桜花賞でソダシに0秒1差の3着という結果を鑑みれば、ここでは素質も力も1枚上と見ていい。

オークス9着とGIの敷居の高さを経験したスルーセブンシーズ（牝3、美浦・尾関）は、オークス以外のキャリア3戦が中山でうち2勝とコース適性は高そう。デビュー戦は馬体重426キロ、その後20キロ増やしたもののオークスでは428キロまで減り、小柄で線の細さが気になるところ。しかし実際には中山2000mでの好走経験があり、3走前のゴール前での伸びは力強く、2走前のミモザ賞は楽に勝ち切るなど、華奢な見た目とは裏腹に高い底力を持ち合わせている。馬体の成長があれば今後も活躍できそうだ。半姉のパッシングスルーは2年前の紫苑Sに勝利しており、姉妹制覇にも期待したい。

エクランドール（牝3、美浦・手塚）は菊花賞勝ちに天皇賞・春を連覇とGIで3勝を挙げたフィエールマンの全妹だ。兄と同じ手塚厩舎で管理され今年1月にデビュー勝ち、5月の1勝クラスでも勝利しここまで2戦2勝と底を見せていない。大きな間隔で大事に使われているあたり、体質面で繊細なのかもしれないが2戦目が最後に流して楽勝。重賞でも即通用の雰囲気が漂う。登録の段階では抽選の対象だが、出走が叶えば当然注目を集めることになりそう。鞍上には兄のGI勝ちすべてで手綱を握ったC.ルメール騎手を確保している。

体調面と脚部不安により大事をとってオークスを回避したホウオウイクセル（牝3、美浦・高柳瑞）は、秋華賞に向けて紫苑Sから始動。祖母のメジロドーベルはオークス・秋華賞の二冠（桜花賞は2着）など重賞7勝、数え年表記だった時代に、JRA賞最優秀3歳牝馬・4歳牝馬・5歳以上牝馬（2年連続受賞）に輝いた名牝。それだけにホウオウイクセルのオークス回避は残念でならなかったが、秋以降の重賞戦線で活躍が期待されている。桜花賞では高速馬場についていけず9着に敗退したが、その前走のフラワーCではユーバーレーベンに0秒2差つけて勝利を収めており、能力があるのは確か。またマイルは忙しいので血統的にも距離は延びた方が良いタイプだろう。最後の一冠に向けて弾みをつけてほしい。

夏競馬を通して力をつけてきた馬といえばエイシンチラー（牝3、美浦・田中剛）か。ミモザ賞で8着に敗れたが、仕切り直しの織姫賞で完勝。52キロという斤量と展開が向いたこともあったが、内をすくって抜け出しての勝利。2着馬の、同じ3歳牝馬コーディアルは次走1勝クラスを勝ち上がっている。次走の三面川特別では痛恨の出遅れ、かつ前有利のペースでレースが進んだが、ゴール直前で外からまとめて差し切り勝利を収めた。普通の馬なら届かないところだったが、M.デムーロ騎手の追い出しのタイミングも絶妙でこの馬自身も見事な末脚だった。初の重賞でどこまでやれるか注目したい。

ほか近親にシンハライトやシンハリング、同世代のストゥーティといった牝馬がよく走る血筋のホウオウラスカーズ（牝3、美浦・高木）、またオークス組からは、折り合いが課題もスムーズに先行できれば力を発揮できるスライリー（牝3、美浦・相沢）、GIは力負けではあったが終始リズムよく走り、しっかり食らいついていたパープルレディー（牝3、美浦・奥村武）、抽選対象だが3馬身差をつけ1勝クラスを快勝したメジャーエンブレムの仔プレミアエンブレム（牝3、美浦・田村）など本番の秋華賞に向けて注目馬が多く、秋競馬の始まりを告げる重賞でもあり、楽しみなレースだ。

（Text:Funaki）

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