UMAJIN.net

おしらせ

【競馬本 この一冊!】消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡

単行本「消えた天才騎手」は2011年4月に発売となった

牝馬による日本ダービー制覇?? 2007年に名牝ウオッカがこの偉業を成し遂げたが、当時のニュースなどで“64年ぶりの”と前置きが付随したことが示すように、歴史上それをやってのけた牝馬は、既に存在したのだ。 それがクリフジ。第2次世界大戦中の1943年に日本ダービーを制していた牝馬としてその名前がクローズアップされたが、鞍上を務めた騎手・前田長吉もそのダービーにおいて記録を残している。それが20歳3カ月という若さでのダービー制覇。日本近代競馬において、いまだ破られぬ偉大な記録だ。 単行本「消えた天才騎手」は、その偉業を達成しながら若くして死去した前田長吉騎手の足跡を丹念に追ったノンフィクション作品。活躍期は戦中で同騎手に関する記録は乏しく、謎の人物とされており、それを評伝としてまとめるのは並大抵の努力では成し得なかったはず。完成にはあしかけ6年を要したとのことで、「労作」のひと言がぴったりの一冊だ。著者は競馬ライターの島田明宏さん。この作品は2011年度のJRA馬事文化賞を受賞している。 前田騎手の評伝部分は少年時代、騎手デビューから日本ダービー制覇、そして徴兵から終戦後捕虜としての収容生活で亡くなるまでのおよそ3部で構成されている。ノンフィクションであり証言と記録とが淡々と積み上げられていくのだが、八戸から上京し名門尾形藤吉厩舎に入門した少年が努力、人柄、そして幸運の助けもあってダービージョッキーの座を射止めるまでの軌跡はやはりドラマチックで、読む者の胸を熱くさせる。 彼にとっての「幸運」というのは戦時において兄弟子たちが徴兵されていたから、という部分もあるのだがその戦争が後半部分では「悲運」となって襲い掛かってくる。当時における競馬開催の縮小や中止などに関する情報もしっかり織り込まれており、あらためて戦争と競馬との関係を浮き彫りにした作品としても評価が高いのもうなずけるところだ。 帯にある「今、馬に乗れる幸せを感じました」という武豊騎手の言葉が、読後改めて見返すと本当にしっくり来る。ビギナーからベテランファンまで、競馬を愛する人すべてに読んでもらいたい一冊だ。 (UMAJIN編集部) ■「消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡」 著者:島田明宏 発行:白夜書房 定価:1000円 ★2011年馬事文化賞は書籍「消えた天才騎手」が受賞 ★ネクストシーズンの戦いは始まっています! 「UMAJIN POG」ページでは「2012-2013」シーズン用のデータを公開開始!
シェア

おしらせ一覧

PAGE TOP