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【カタール2012レポ】アウェーの洗礼も…国分優騎手は奮闘の総合2位!

集った若手騎手一同に会しての記念写真。国分優騎手は後列右から3人目

カタールの首都ドーハのアルライヤン競馬場で2月28日から3月1日までの3日間で行われたカタール国際競走カーニバル。そのプログラムの1つとして行われたのが、第1回カタール国際見習い騎手招待競走で、日本から国分優作騎手(21 栗東・フリー)の参戦を含め、アジア圏を中心に14の国・地域から各1名の騎手を招待し、地元カタールからも2名の騎手がエントリーした。 レースは各日1レース、合計3レースが組まれた。1着には10ポイントで、以下の着順が順に6、5、4、3、2、1ポイントとなり、8着以下はポイント無しで、3戦の合計で総合優勝が決まるシステムは世界各地で行われる同様のシリーズに倣ったものだ。 まず初日の第1レース……を迎える前に、マカオのキャッシュ・ウォン騎手がビザの都合でカタールへの渡航が叶わず、地元の若手ユーセフ・アル・ハジュリ騎手が騎乗することとなった。レースは芝1200メートルのハンデ戦。国分優騎手はラフーブ(Lahoob 牡6)に騎乗。斤量60kgのトップハンデがどう影響するか気になったが、スタートでやや後手を踏んでしまい、道中は中団よりもやや後方の位置取りとなった。徐々にポジションを押し上げて最後の直線に向かうと、大外へ持ち出し前にじわじわと接近。その間に地元のサアド・アル・カアビ騎手騎乗のコメス(Cometh牡4)が完全に抜け出して勝負あったと思われた残り100メートル過ぎで、いきなり鞍がぐるっとずれて、カアビ騎手が落馬。後続はこのアカビ騎手を避けるために急ブレーキをかけるよう勢いを緩めながらゴール。勝ったのは急遽乗り替わり参戦となったハジュリ騎手のカハイル(Kahail 牡5)で、国分優騎手は外に持ち出した分、カアビ騎手を無理なく避けることができ、最後に4着まで浮上することができた。カアビ騎手はレース後ピクリとも動くことができず、救急車で搬送されたが、翌日には競馬場に無事な姿を現した(ただし、騎乗はキャンセル)。 異国での初レースの感想を、スタートの遅れの原因とともに国分優騎手に尋ねると、 「やめろって言ってるのに、ゲートが開く瞬間までゲートボーイがずっとハミをガチャガチャと動かすんですよ。あれで馬も嫌がっちゃって、まともにスタートできませんでした。それ以外はスムーズだったんで、結構悔しいですよね」 と、思わぬアウェーの洗礼に苦い顔。 「芝コースは走りやすいコースですけど、結構前の馬の蹴った芝が細かくピシピシと顔に当たって痛いのは日本と違いますね。ダート板(ゴーグルの上にかける透明プラスチックの板)を持ってきているので、明日からはそれを使ってみます」と、秘策アリという表情で翌日の抱負を語ってみせた。 2日目は純血アラブによる芝1600メートルの未勝利戦。大半が経験馬である中、国分優騎手が騎乗するシーバ(Theeba 牡4)はこれが初出走。しかし、前日の王室のプライベート調教場でコミュニケーションを取ったジュリアン・スマート調教師の管理馬で、重賞で活躍した兄姉がいるということで期待も高まった。 前日と異なり、スタートを決めた国分優騎手のシーバは4番手に納まる。しかし向正面でややゴチャついた際に控えざるを得ず、3コーナーの入口で8番手ぐらいに後退してしまう。初出走馬にこの手の不利は大きく万事休すに思われたが、4コーナーでインから再度進出すると、直線でも脚を伸ばして3番手の馬と並んでゴール。僅かの差で惜しくも4着までに終わったものの、直線での伸び脚はスマート調教師もよくやってくれた、と満足顔を見せていた。 このレース、勝ったのは香港のベン・ソー騎手のナシュミ(Nashmi 牡4)。こちらは逆に向こう正面のアクシデントを利してポジションをうまく確保し、最後まで一番スムーズな競馬をしていた。2着にはシンガポールのラザイル・ザワリ騎手騎乗のフィーハ(Fiha 牝4)。ザワリ騎手は前日のレースでも2着となっており、この時点で12ポイントでトップ。以下、10ポイントの香港のソー騎手(同ポイントのハジュリ騎手は総合での表彰対象外)、そして8ポイントの国分優騎手と続き、優勝の行方はこの3人に絞られた。 最終日はサラブレッドによる芝1850メートルのハンデ戦。ゴール手前150メートル付近からの発走で、中山の芝1800メートルのようなコースだ。馬券の発売がないため、正確なところは定かではないものの、国分優騎手の騎乗するザコン(Zakon セン4)はレース前に何度も名前を呼ばれ、場内映像にも何度も大写しになっていたことから、どうやらこのレースでは主力の1頭のようだった。 パドックに現れた国分優騎手は、プログラムに掲載されている勝負服と違うものを着ている。どうも服が足りないので、これを着ろと係員に言われたようだ。ところが、それを見た調教師らが「そんなはずはない。着替えてきてくれ」と指示。すぐにも騎乗合図が掛かるタイミングでありながら、慌しくジョッキールームと往復するはめになってしまった。緩いというべきかいい加減というべきか、いかにも発展途上の競馬場らしい出来事であった。 レースはスタートからハイペースとなり「番手につけて直線までじっくり待て」という指示を受けた国分優騎手のザコンは5、6番手付近の前を伺うポジションにつける。道中の手応えもよく、「これは結構いけるかも」と思っていた国分騎手だったが、またまた向こう正面で前を行くハジュリ騎手のノルシリ(Norsili 牡4)が内外にフラついたことで、位置取りを下げるはめになってしまう。 「あそこで馬群を縫っていくこともできたんですけど、ちょっと危ないと思ったので思い切って外を回すことにしました」 危ない、というのは国分優騎手は自分の身の危険だけでなく、他の特に中東の騎手の技量を考えると、ちょっと厳しく位置を取ることで相手が落ちてしまうのではないかと懸念したようだ。この辺りが日本人騎手の矜持でもあるだろう。対照的に同じような位置取りながら、馬群で立ち回ったのが、ザワリ騎手のダージェン(Dajen 牡6)だった。内から外に進路を変えながら4コーナーを回ると、直線ではスムーズに抜け出して勝利。国分優騎手のザコンも猛然と外から追い込むも、惜しくも3着に終わってしまった。 引き上げてきた国分優騎手はムッとして首をかしげる。 「頼むからせめてまっすぐ乗って欲しいですよ。ちょっと危すぎじゃないですかね。日本では絶対にアウトですよ、あれ。」 アウェーの洗礼というよりはあまり行儀のよくない騎乗で、勝利を逃したとあっては無理もない。勝てば優勝だっただけに、普段でも見られないくらいに厳しい表情を見せていた。 結局、前日まで1位だったザワリ騎手が1着となったことで、総合優勝を決めた。トータルで13ポイントの国分騎手は総合2位。3位が香港のベン・ソー騎手となった。表彰式は他に当日行われたGIなどがパドック兼ウィナーズサークルで行われていたのに対し、何故かエントランスホールで、全ての表彰が終わったあとにとってつけたかのように行われた。明らかに忘れられていたのではないかという対応に、最後までドタバタ感が尽きないシリーズであった。また、総合2位の賞品は携帯電話のブラックベリー端末であったのに対し、落馬したカアビ騎手や、ハジュリ騎手には、何故か車が送られていた。なんだかなあというのが正直な感想である。ただ、国分優騎手の活躍は、主催者にとっても好印象を与えたようで、今後もこのシリーズが行われるならば、是非ともまた日本から招きたいとのこと。 レースを終えて、その夜には帰国の途に就いた国分騎手。 「乗る前のイメージと違って、馬もコースもかなりしっかりとした国だと感じました。できれば見習い戦だけじゃなく、こちらのトップの騎手と同じレースにも乗りたかったですね。レースでは力を出し切れなかったけれども、それ以外の時間には他の国の騎手といろいろ話もできて楽しかったです。こういう機会はどんどん参加したいですね」 関東から正式に関西に籍を移してちょうど1年。美浦にいた当時よりも明らかに逞しくなったことが、その言葉と表情、そして優勝はならずとも総合2位という結果を出したことに感じることができた遠征であった。

(土屋 真光)
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