【先週のお別れ】取引額の100倍稼いだシラオキの末裔＆サイレンススズカ近親が登録抹消に

[12月7日抹消]
ラヴァーズポイント（牝7、栗東・高橋康）
通算成績
42戦4勝

2010年3月、北海道浦河町にある昭和牧場（代表生産馬:カミノクレッセ ※日経新春杯勝ち、天皇賞・春2着など）の生まれで、父はスプリンターズS覇者マイネルラヴ、母は南関東4場で計9勝を挙げたハートフルシフォン（その父タマモクロス）という血統。5代前までにクロスの生じない完全なアウトブリード馬であり、一大牝系を作り出したシラオキの5代孫にあたる存在だ。ただ、昨今の主流に沿っているとは言い難く、きょうだい近親に目立った活躍馬がいないことも相まってか、2011年のサマーセールに上場された際の取引額はわずか130万円（購買者は三宅勝俊さん）に過ぎなかった。

だが、そんな馬が、大きな怪我なく全42戦を走り切り、オープン重賞クラスを舞台に取引額の100倍、1億3084万円の賞金を稼ぎ出すのだから、痛快のひと言だ。

2012年8月、栗東の境直行厩舎所属（師は2015年2月末付けで定年引退、のち高橋康之厩舎へ転厩）として小倉新馬戦（芝1200m）でデビューを飾り、小阪騎手を背に3馬身差の圧勝。直後、オーナー所有馬としての重賞初出走となった小倉2歳Sでは中団差しから3着に食い込む健闘を見せる。この際、三宅オーナーは重賞3着によるブラックタイプ掲載、および将来の繁殖牝馬としての価値が生まれたことを大いに喜んだという。

その後、馬は紆余曲折ありながら着実に力を付けていくことになるのだが、どうやら典型的な夏馬（概ね6月～9月あたり）だったようで、2勝目は翌年の小倉戦。また、3勝目もさらに1年を経過した同地、4勝目はそこから1年後の夏の北海道と、あからさまな成績の偏りが見られる。

なお、オープンに上がって以降は勝ち鞍こそなかったが、2016年7月のCBC賞で勝ったレッドファルクスと同タイムクビ差の2着、同年9月のセントウルSではビッグアーサーから0秒2差3着と奮戦（ともに斤量差はあったが）。のちのスプリント王者2頭と僅差接戦の走りを見せるなど、世間の低評価とは裏腹のパフォーマンスで大いに気を吐いた。また、本年においても10月のオパールSで高齢7歳＆12番人気の身ながら勝ち馬ソルヴェイグに0秒1差3着（同着）を果たし、穴党ファンを唸らせることに。中央ラストランとなった本年12月のラピスラズリS（10着）までの約5年少々の期間、最後までコンスタントに好走し続けた孝行娘であった。今後、もし繁殖入りするようなら、非サンデー系ゆえ、相手はよりどりみどりだろう。自身のなし得なかったタイトル奪取を果たせる馬を輩出してくれることを首を長くして待ちたい。

[12月9日抹消]
ペイシャオブワキア（牝3、美浦・蛯名）
通算成績
10戦2勝

北海道沙流郡平取町にある赤石牧場（代表生産馬:カツトクシン ※中山金杯＆愛知杯勝ち）の生まれで、交流GI6勝の実績を誇った地方の雄・フリオーソ初年度産駒のうちの1頭。母系を紐解けば4代母にワキアの名があり、本馬の曽祖母ワキアオブスズカはあのサイレンススズカの1つ上の姉にあたる。オーナーは「スズカ・サンレイ」の永井啓弍さんではなく「ペイシャ」の冠で知られる北所直人さん。

デビューは今から1年前の12月最終週、中山ダート1200m戦。14頭立ての11番人気と評価は低く、レースでは後方大外ぶん回しのような大味な競馬ではあったものの、直線で一瞬はまとめて面倒見るか（坂途中で止まったが）の力強い脚を見せて4着と好走。即メドが立つなかなかの内容であった。当然、勝ち上がるのは時間の問題かのように思えたのだが、スパッとは切れない部分がウィークポイントとなったのか、そこから7戦して6度掲示板に乗るも、何とも歯痒い勝ち切れないレースばかりが続く。

……が、本年8月、この馬に転機が訪れる。

札幌の未勝利戦（ダ1700m）において、WASJ（ワールドオールスタージョッキーズ）参戦名目で来日していた世界的名手・J.モレイラ騎手を鞍上に迎え、これまでにない好位積極策を見せる。直線入り口手前で先頭に躍り出るかの勢いで進出し、ゴールまで2着馬との長いマッチレースを展開。後続は8馬身千切ったうえ、ゴール寸前で図ったように差し切る味な内容で、待望の初勝利を手に入れた。

これまで勝ち切れなかった馬が、ひとつの勝利を契機にポンポンと行くことは珍しくないが、この馬も例には漏れず。

ひと息入った次走福島の500万条件戦（ダ1700m）で、テン乗り吉田隼人騎手が好位積極策（モレイラ騎手の乗り方を参考にしたのだろう）を敷き、直線では4頭横並びの同タイム大激戦を制し2連勝。控えても案外なぶん、早め早めの競馬で、持ち味であるバテない強みを最大限に活かす、最良の型での勝ち名乗りであった。

……だが、その僅か3週後に中央登録抹消の報。詳細は分かっていないが、まだまだ上を目指せる器と思えただけに残念でならない。もし地方に活路があるのなら是非その姿を見てみたいものだ。

12月4日～12月10日までの登録抹消は他70頭。

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