情報提供 World RaceNews.com【WRN】
2018年08月18日(土)
パシフィッククラシック(GI)ダ10F
- 【レース格】★★★★
- 【総賞金】100万ドル
- 【開催競馬場】デルマー
- 【勝馬】アクセラレイト
- 【騎手】J.ロザリオ
- 【トレーナー】J.サドラー
見解
【結果詳報】
現地時間18日、アメリカ合衆国デルマー競馬場で行われたダート10FのGI・パシフィッククラシックは、単勝1.4倍と圧倒的1番人気に支持されたアクセラレイト(Accelerate)がレース途中から先手を奪うと、最後は後続を突き放して大楽勝。今年のサンタアニタH、ゴールドCアットサンタアニタに続く3度目のGI制覇を果たした。
夏に行われる古馬中距離戦線の大一番として知られるパシフィッククラシック。今年はやや寂しい顔ぶれになったが、西海岸のこの路線ではトップクラスに君臨するアクセラレイトを筆頭に3頭のGIホースが揃った。人気は前述したようにアクセラレイトに集中。2番人気は僅差となったが、前走のGI・スティーブンフォスターHを勝ったパブル(Pavel)が7.1倍で続き、アルゼンチンからの移籍初戦になるローマンロッソ(Roman Rosso)が、7.2倍の3番人気となった。
レースは、各馬大きな出遅れこそなかったが、アクセラレイトは外のパブルに寄られたためダッシュがつかず。しかし、すぐさま鞍上が手綱を押して、3番手で1コーナーに入った。一方、先頭争いは、すんなりハナを切ったローマンロッソが1馬身ほどのリードを保って、マイペースの逃げを展開。2番手にはプライムアトラクション(Prime Attraction)がつけ、その直後にアクセラレイトとパブルが続く。
だが、向こう正面に入ると、外からプライムアトラクションとアクセラレイトがローマンロッソに並びかけていき、3頭が併走するような格好に。しばらくはそのままの隊列で進んでいたが、3コーナーに入ったところでアクセラレイトが敢然と先頭に立ち、徐々に後続との差を広げ始める。さらに、その後ろではパブルも外から一気にスパートを開始して2番手に浮上するが、4コーナーを迎えた時点で前のアクセラレイトとは5馬身以上の差ができていた。直線、逃げるアクセラレイトは馬場の3分どころを通って、リードをさらに広げていく。後方ではパブルも懸命に脚を伸ばしていたが、遥か前を走るアクセラレイトの脚色は全く衰えることなく、2頭の差はゴールが近づくに連れて広がるばかり。結局、最後はアクセラレイトが12馬身半という大差をつけて悠々ゴール板を先頭で駆け抜けた。
2着はパブル。そこから3馬身3/4差の3着にプライムアトラクションが入り、ローマンロッソはさらに3馬身1/4差離れた4着に終わった。
勝ったアクセラレイトは、父Lookin At Lucky、母Issues(母の父Awesome Again)という血統の5歳牡馬。デビューしたのは3歳の春で、その年の9月に行われたGII・ロスアラミトスダービーSで重賞初挑戦にして初制覇を果たしたが、GIではBCダートマイルや昨年のこのレースでの3着が最高で勝ち星はなかった。しかしながら、今年3月のサンタアニタHで悲願のGI初優勝。前走のゴールドCアットサンタアニタでも勝利し、2つめのビッグタイトルを獲得していた。通算成績は20戦8勝。
【展望】
現地時間8月18日、アメリカ合衆国のデルマー競馬場では3歳以上の馬たちによって争われるダート10FのGI・パシフィッククラシックが行われる。
創設年が1991年ということで、比較的歴史が浅いこのレース。同時期に東海岸のサラトガ競馬場で3歳限定のGI戦トラヴァーズSが行われるため、3歳馬が出走することはあまりないが、西海岸に調教拠点を置く馬たち、特に古馬にとっては夏最大のビッグレースであり、例年有力馬が顔を揃える。また、このレースは2007年からスタートしたブリーダーズCチャレンジの対象レースにも指定されており、優勝馬には同年秋に行われるBCクラシックへの優先出走権が付与される。
前述したように西海岸に調教拠点を置く古馬、とりわけ秋の目標をBCクラシックに定めている中距離路線の馬たちにとっては非常に重要なレースであることから、過去の優勝馬には一昨年の勝ち馬カリフォルニアクロームやその前年の勝ち馬でビホルダーといった名馬が名を連ねる。昨年は1番人気に支持されたアロゲートの追撃を退けてコレクテッドが勝利、初のGI制覇を果たしたが、同馬はその後に秋のBCクラシックでも2着に好走した。
次にレースが行われるデルマー競馬場だが、競馬場があるのは夏場のリゾート地として賑わうカリフォルニア州のデルマー。1937年に競馬好きの俳優ビング・クロスビーやパット・オブライエンらの寄与によって開場された競馬場で、すぐそばには太平洋が広がっている。昨年は秋にブリーダーズCが開催されたデルマー競馬場だが、年間を通して見ると最も盛り上がるのがこの夏の開催で、パシフィッククラシック以外にもクレメントL.ハーシュSやデルマーオークスといったGI戦が組まれており、開催終盤には2歳馬のGI戦も行なわれる。コースは1周8Fのダートコースと1周7Fの芝コースによって構成されており、直線の長さは約280m。ダート10Fで争われるパシフィッククラシックは、4コーナー奥のポケットからの発走になり、各馬はそこからコースを1周する。枠順による有利不利はほとんどない。
さて、ここからは出走予定馬8頭の紹介に移りたい。前述したように、このレースは西海岸の一線級の馬たちが集うレースであり、近年はビホルダーやカリフォルニアクローム、アロゲートといった名馬たちが主役を務めてきた。今年は、これらの馬のようなズバ抜けた力を持った馬はいないものの、この路線の中心勢力として活躍する馬、今後の飛躍に繋げたい馬などが揃った。まずは人気が予想される実績上位組から紹介したい。
1番人気が確実視されるアクセラレイト(Accelerate)は今年G1を2勝。2016年のBCダートマイルや昨年のこのレースで3着に入るなど、以前からGIでも好走していたが、今年はさらに力をつけた印象で、GII・サンパスカルS(サンタアニタパーク、ダ9F)優勝を経て挑んだ3月のサンタアニタH(サンタアニタパーク、ダ10F)でGI初制覇を果たした。さらに、その後のGIIオークローンHでは僅差で2着に敗れたものの、前走のGI・ゴールドCアットサンタアニタ(サンタアニタパーク、ダ10F)を完勝。これらのGIでは2着にそれぞれ5馬身半差、4馬身1/4差という決定的な差をつけているほか、敗れたオークローンHでも3着以下には10馬身差をつけている。そういう意味では競馬場こそ違うものの、再度同じ西海岸を舞台にしたダート10FのGIで大崩れするとは考えにくい。頚椎骨折によって療養中のヴィクター・エスピノーザ騎手に代わり、今回はジョエル・ロザリオ騎手と初コンビを組むことになるが、それも大きな不安材料になるとは思えない。3度目のGI制覇の可能性は高そうだ。
一方、打倒アクセラレイトの一番手と見られているのが前走のスティーブンフォスターH(チャーチルダウンズ、ダ9F)でGI初制覇を果たしたパブル(Pavel)だ。今春のドバイワールドCにも出走して4着に健闘していた同馬。帰国初戦となったゴールドカップアットサンタアニタではアクセラレートに大きく遅れをとる格好となり、10馬身近く離された4着に終わったが、1度叩かれた前走では2着に3馬身3/4差をつけて念願のビッグタイトルを獲得した。対アクセラレイトという点では、前述のゴールドカップアットサンタアニタを含めて2戦2敗ということで分が悪いが、勢いに乗った状態での再戦となるだけに侮れない。ここでリベンジを果たして秋の飛躍に繋げられるだろうか。
また、アルゼンチンからの移籍馬で、これが移籍初戦となるローマンロッソ(Roman Rosso)も不気味な存在である。同馬は南米時代に8戦5勝、2着1回。3つの重賞勝ちはいずれもGIで、初GI制覇となった昨秋のブエノスアイレス州大賞(ラプラタ、ダ2200m)からGI戦を3連勝している。今回は、3度目のGI制覇となった3月のラテンアメリカ大賞(マローニャス、ダ2400m)以来の実戦になるため、久々という点が気掛かりではあるものの、名伯楽ボブ・バファート調教師が不十分な状態で管理馬をレースに送り出すとは思えない。力関係など未知数な部分は多いが、期待を抱かせる馬であることに違いはない。
残る5頭はいずれもGI未勝利の馬たち。実績面で劣るばかりか、力的にもやや足りない印象は拭えず、上位進出のためには展開面の助けなどが必要になりそうだ。一応、5頭の中ではローマンロッソと同じB.バファート厩舎の僚馬で、ゴールドカップアットサンタアニタではアクセラレイトの2着に入ったドクタードール(Dr. Dorr)を上位と見るが、4馬身半差という当時の着差を考えると、逆転は容易ではないだろう。今回は当時あった4ポンド(約2キロ)の斤量差もなくなるだけに、余計に厳しいと言わざるを得ない。
プライムアトラクション(Prime Attraction)は、2月のサンパスカルSではアクセラレートから1馬身3/4差の2着に頑張ったが、続くサンタアニタHでは20馬身以上離されたブービー(6着)に惨敗。前走のGII・エディーリードSでは僅差の3着に健闘しているが、これは芝でのもの。ダートでもGIII・ネイティブダイバーS(デルマー、ダ9F)勝ちの実績があるとはいえ、GIレベルではどうだろうか。
そのほかでは、デルマー競馬場で行われた前走のGIII・クーガー2世H(デルマー、ダ12F)で、GI戦2勝の実績を持つホッパーチュニティを破って優勝したビーチビュー(Beach View)あたりに一角崩しの可能性があるかもしれないが、同馬も前走はハンデ戦による斤量面の恩恵が大きかった。今回は定量戦になる上、距離も前走から2ハロン短縮されるだけに、G1のスピードに対応できるかどうかも含めて、不安は少なくない。
これが初のGI挑戦になるザルーテナント(The Lieutenant)は、2走前にオールウェザーのGIII・オールアメリカンS(ゴールデンゲートフィールズ、AW8F)を勝っている。同馬自身、今年になって重賞戦線に顔を出してきた馬で、前走のGII・サバーバンSでも6馬身半離されたとはいえ、GI戦2勝のディヴァーシファイ相手に2着となっているほか、近3走は全て重賞で3着以内に好走している。そういう意味では徐々に力をつけている中でのGI挑戦になるが、やはりトップクラス相手となると成績的に物足りない。中団からレースを進める馬だけに、先行するアクセラレートを意識して各馬が早めに動くようであれば台頭してくる可能性があるが、ペースが落ち着くようであれば後方のままレースを終えることもありそうだ。
最後の1頭トゥーサーティーファイブ(Two Thirty Five)も、今回が初めてのGI挑戦。今年は年明けから一般戦で5戦3勝という成績を残し、前走のGII・サンディエゴHで重賞初挑戦を迎えたが、5頭立ての4着に敗れた。当時2着のドクタードールとの着差は2馬身だが、5ポンド(約2.5キロ)の斤量差があったことも踏まえると、やはり苦戦は必至か。
※記載している出走予定馬については8月17日(午前11時)時点でのものであり、今後、出走取消等により出走しない場合もありますので予めご了承ください。
