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2018年09月15日(土)
愛チャンピオンS(GI)芝10F
- 【レース格】★★★★
- 【総賞金】125万ユーロ
- 【開催競馬場】レパーズタウン
- 【勝馬】ロアリングライオン
- 【騎手】O.マーフィー
- 【トレーナー】J.ゴスデン
見解
【結果詳報】
※先に抜け出したディープ産駒サクソンウォリアー(右)を、大本命ロアリングライオン(左)が交わして優勝。これでGIは3連勝となった。
現地時間9月15日、アイルランドのレパーズタウン競馬場で行われた芝10FのGI・愛チャンピオンSは、オイシン・マーフィー騎手騎乗の1番人気ロアリングライオン(Roaring Lion)がゴール前で2番人気のディープインパクト産駒サクソンウォリアー(Saxon Warrior)を捉えて優勝。7月のエクリプスS、8月のインターナショナルSに続くG1戦3連勝を達成した。
英2000ギニーを制したサクソンウォリアーと仏ダービーを勝ったスタディオブマン(Study Of Man)という、2頭のディープインパクト産駒による直接対決が実現した今年の愛チャンピオンS。しかし、人気は2頭と同じ3歳馬で、前走のインターナショナルSを圧勝するなどGI戦を連勝していたロアリングライオンに集まり、同馬が単勝1倍台の1番人気に。サクソンウォリアーとスタディオブマンは2、3番人気に支持された。
アデイブ(Addeybb)が出走を取り消して7頭立てで行われたレースは、サクソンウォリアーと同厩のアシーナ(Athena)が半馬身ほど出遅れ。しかし、大きなロスにはならず、サクソンウォリアーもすぐに挽回して先団に取り付いた。一方、先頭争いは4頭出しとなったエイダン・オブライエン厩舎の残る2頭ドーヴィル(Deauville)とロードデンドロン(Rhododendron)の争いになり、ドーヴィルが前へ。ロードデンドロンは2番手に控えたが、向こうに入るとサクソンウォリアーを前に行かせて3番手に下げた。そして、そこから2馬身ほど離れた4番手にアシーナとヴァーバルデクステリティ(Verbal Dexterity)。さらに1馬身開いた6番手にロアリングライオンがつけ、スタディオブマンは最後方からの競馬になる。
その後も、ドーヴィルを先頭にして各馬が6、7馬身ほどの圏内に収まり進んでいたが、4コーナーを回って直線に入るとサクソンウォリアーがドーヴィルを交わして先頭へ。後方にいたロアリングライオンも外に持ち出して2番手集団の一角に加わるが、一足先に抜けだしたサクソンウォリアーはリードを広げにかかる。だが、ゴールまで残り1Fを切ると外のロアリングライオンが急追。一完歩ごとにサクソンウォリアーとの差を詰めていき、残り50m付近でついにこれを捉える。結局、最後はクビだけ前に出たロアリングライオンが先頭でゴールへ。惜しくも2着に敗れたサクソンウォリアーは、4戦続けてロアリングライオンの後塵を拝すことになったばかりか、レース後には腱の故障が見つかり、そのまま現役を退くことになった。
また、サクソンウォリアーから2馬身3/4差遅れの3着には逃げたドーヴィルが入り、4着はアシーナ。スタディオブマンは大外から追い込んでくるかと思われたが、思ったような伸びが見られず5着に敗れた。
勝ったロアリングライオンは、父Kitten’s Joy、母Vionnet(母の父Street Sense)という血統の3歳牡馬。今シーズンは、初戦のGIII・クレイヴンSから連敗を喫した後にGII・ダンテSで優勝。ただ、その後の英ダービーでは3着に敗れた。しかし、距離を短縮した2走前のエクリプスSでサクソンウォリアーを下して初GI制覇を果たすと、前走のインターナショナルSではポエッツワードら古馬勢をも寄せ付けず、2つめのビッグタイトルを手にしていた。通算成績は11戦7勝。
【展望】
現地時間9月15日、アイルランドのレパーズタウン競馬場では芝10FのGI・愛チャンピオンSが行われる。
15日と16日の2日間に渡って開催されるアイリッシュチャンピオンズウィークエンド。初日はレパーズタウン競馬場、2日目はカラ競馬場が舞台になっており、2日間で6つのGIが行われるが、その中でも愛チャンピオンSは特に大きな注目を集めるレースで、ヨーロッパの中距離路線で活躍するトップホースが集う。
レースが創設されたのは1976年のことで、当時は馬主としても活躍し、1966年に亡くなったアイルランドの政治家ジョー・マクグラス氏の名をとってジョーマクグラスメモリアルSとして行われた。その後、1984年に舞台をフェニックスパーク競馬場に移した際に、名称をフェニックスチャンピオンSに改めたが、レパーズタウン競馬場での開催が始まった1991年に現名称へ変更された。なお、開催地の変更があったものの、距離については変更されたことがなく、創設時から一貫して10Fのままである。これまでの歴史の中で日本調教馬の出走がないこのレースだが、過去の優勝馬の中にはジャパンCを制したピルサドスキーやエリザベス女王杯連覇を成し遂げたスノーフェアリーなど、日本に縁のある馬も少なくない。また、前述したように中距離路線のトップホースが出走することから、その年の年度表彰を受賞するような実力馬が勝利することが少なくなく、近年でも2015年の欧州年度代表馬ゴールデンホーンや2016年の欧州最優秀3歳牡馬アルマンゾルが、同年の愛チャンピオンSを勝利している。
次に、舞台となるレパーズタウン競馬場についてだが、競馬場があるのはアイルランドの首都ダブリンから南南東に10kmほどのところにあるフォックスロックという町。ダブリンからは車で30分もあれば行くことができるため、比較的アクセスの良い競馬場と言えるだろう。コースは左回りで一周14Fの周回コースと6Fの直線コースがあり、愛チャンピオンSは周回コースの向こう正面の入り口手前、2コーナーの終わり部分にスタート地点が設けられる。発走後、間もなく左コーナーがあるため、外枠の馬には多少のロスがあるものの、緩やかなコーナーであることから大きな不利にはならない。
さて、ここからは出走予定馬について触れていきたい。10F路線におけるビッグタイトルのひとつということで、例年3歳から古馬まで各世代のトップホースが集うこのレースだが、今年は出走8頭中5頭を占める3歳勢に有力馬が多く、優勢と見られている。まずは、その3歳馬たちを紹介したい。
1番人気が確実視されるロアリングライオン(Roaring Lion)は、現在エクリプスS(サンダウン、芝9F209yd)、英インターナショナルS(ヨーク、芝10F56yd)とGIを連勝中。英2000ギニー5着、英ダービー3着など、今シーズン序盤のGIでは成績が振るわなかったものの、10F路線に切り替えてからは高い能力を遺憾なく発揮している。とりわけ、好メンバーが揃っていた前走のインターナショナルSでは、キングジョージ6世&クイーンエリザベスSなどGIを2連勝中だったポエッツワードに3馬身以上の差をつけて快勝している。そういう意味では今回、国こそ違うものの、再び同じ10Fのレースとなる以上、優位という立場は変わらない。これが今シーズン7戦目ということで、疲労度合いなど気になる点がないとは言えないが、実力を出し切ることができれば、確実に上位争いに絡んできそうだ。
そして、このロアリングライオンにとって最大のライバルになりそうなのが、ディープインパクトを父に持つ2頭のクラシックホース、サクソンウォリアー(Saxon Warrior)とスタディオブマン(Study Of Man)だ。
今シーズン初戦のGI・英2000ギニー(ニューマーケット、芝8F)を無敗のまま制したサクソンウォリアー。当時は、英3冠の可能性さえも感じさせたが、その後は4連敗と精彩を欠いている。特に、近2走は距離適性を考慮した上での出走だったが、ともにロアリングライオンの前に敗戦。愛ダービーから中6日での出走だったエクリプスSではクビ差の2着に健闘したが、続くインターナショナルSでは5馬身の差をつけられて4着に敗れ、英ダービーを含めるとロアリングライオンには3連敗、通算の対戦成績も2勝3敗になった。こうした状況から、ここにきて3歳時に未勝利の終わった母メイビーと同じく、成長力を疑問視する声が聞こえ始めてきたが、世代上位の能力の持ち主であることは確か。この後はさらに距離を縮めてマイルのGI・クイーンエリザベス2世Sへ向かうプランがあるように、陣営としても復活へ向けての試行錯誤が続いている状況だが、本来のパフォーマンスを発揮できるようであれば十分に好勝負できるはずである。
対するスタディオブマンは仏ダービー(シャンティイ、GI、芝2100m)の勝ち馬。今年は、初戦のGIII・ラフォルス賞こそ2着に敗れたが、仏ダービーの前哨戦であるGII・グレフュール賞(サンクルー、芝2100m)で重賞初制覇を飾ると、勢いそのままに本番も制してみせた。前走のGII・ギヨームドルナーノ賞は、その仏ダービー以来の一戦で約2カ月ぶりの出走で、前が止まらない展開だったこともあって3着に終わったが、今回は一度使われたことによる上積みがあるはず。自身にとっては初の国外遠征になるものの、過去5年のうち2年は同年の仏ダービー馬が勝利しているという相性の良いレースだけに、2つめのタイトル獲得に期待が膨らむ。
アイルランドのジム・ボルジャー厩舎に所属するヴァーバルデクステリティ(Verbal Dexterity)は、今回が休養明け2戦目。2歳時の昨年はGI・ナショナルS(カラ、芝7F)を勝ち、続くGIレーシングポストトロフィーでは2番人気に支持されたが、上位人気を分け合ったサクソンウォリアーやロアリングライオンに先着を許して4着に敗れている。今シーズンは当初、5月の英2000ギニーに出走する予定だったものの、4月中旬に回避を発表しており、以降は長期休養に入っていたが、8月末に行われたGIII・ロイヤルウィップSで復帰。4着に敗れはしたが、初対戦となる古馬を相手に勝ち馬から1馬身1/4差とまずまずの結果を残した。当然、ひと叩きされた今回は動きも変わってくるはずで、2歳時の実績を考慮すると上記3頭に迫っても不思議ではない。
3歳勢最後の1頭は、サクソンウォリアーと同じエイダン・オブライエン厩舎に所属する牝馬のアシーナ(Athena)。同馬は、2走前にアメリカへ遠征して、GI・ベルモントオークス招待S(ベルモントパーク、芝10F)を勝っているが、再度アメリカへ渡って出走したGI・ビヴァリーD.Sでは9頭立ての7着に敗れている。初勝利に7戦を要したように、厩舎に所属する3歳牝馬の中でもトップクラスとは言い難い馬だけに、同世代の牡馬のトップクラスなどが揃ったここでは苦しい。
一方、これらの3歳勢を迎え撃つ古馬勢は3頭。その中でも実績最上位は、今年5月に行われたGI・ロッキンジS(ニューベリー、芝8F)などGI戦3勝の実績を誇る4歳牝馬ロードデンドロン(Rhododendron)だが、同レース後は3連敗を喫しており、近2走はいずれも牝馬限定GIでシンガリに敗れている。ここは強力な3歳の男馬が相手ということを考えると、簡単なレースにはならないだろう。
また、このロードデンドロンやサクソンウォリアー、アシーナの僚馬であるドーヴィル(Deauville)は、3歳時の2016年にアメリカのGI・ベルモントダービー招待S(ベルモントパーク、芝10F)を勝っているが、以降はGIIIを1勝しただけ。今年もGIIIでの2着が3度あるものの、6戦未勝利という成績である。ここはサクソンウォリアーをはじめとする僚馬のアシスト役に徹することになるだろう。
最後に紹介するアデイブ(Addeybb)はロッキンジS以来、久しぶりの出走。そのロッキンジSではロードデンドロンの9着に敗れたが、その直前にはGII・ベット365マイル(サンダウン、芝8F)を勝って初重賞制覇を果たしている。今季、ここまで3戦2勝ということで、古馬勢の中では最も好成績を残しているが、10F戦への出走は3着に敗れた昨年8月の一般戦以来となる。こうしたことに加えて、休み明けや強敵相手ということを考えると、やはり難しいレースになりそうだ。
※記載している出走予定馬については9月14日(午後0時)時点でのものであり、今後、出走取消等により出走しない場合もありますので予めご了承ください。
