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2018年09月16日(日)
フォワ賞(GII)芝2400m
- 【レース格】★★
- 【総賞金】13万ユーロ
- 【開催競馬場】パリロンシャン
- 【勝馬】ヴァルトガイスト
- 【騎手】P.ブドー
- 【トレーナー】A.ファーブル
見解
【結果詳報】
※あっさり抜け出したヴァルトガイスト(左)が快勝。重賞4連勝と勢いに乗り本番・凱旋門賞へ進む。
現地時間16日、フランスのパリロンシャン競馬場で行われた芝2400mのGII・フォワ賞は、ピエールシャルル・ブドー騎手が騎乗した1番人気のヴァルトガイスト(Waldgeist)が優勝し、重賞4連勝。日本から参戦したクリンチャーは、果敢に先手を奪ったものの、直線で失速して最下位の6着に敗れた。
本番の凱旋門賞と同じコースを使って行われる3つのトライアル。牝馬限定のGI・ヴェルメイユ賞に続いて行われたこのレースは、4頭のGIホースを含む古馬6頭によって争われた。人気は、前走のGI・サンクルー大賞を勝つなど2400mの重賞を3連勝中だったヴァルトガイストと、休み明けだった前走でGIII・ゴントービロン賞を勝ったタリスマニック(Talismanic)に集まり、前者が1番人気に。それほど差がなく後者が続き、クリンチャーは愛ダービーなど2つのGIを勝っているカプリ(Capri)に続く4番人気だった。
レースは、最内枠のウェイトゥパリス(Way To Paris)が僅かに遅れたものの、そのほかの各馬は揃ってスタート。積極的にハナを奪おうとする馬がいなかったこともあり、クリンチャーが押し出されるような格好で先頭に立って、レースを引っ張った。2番手はカプリ。タリスマニックとクロスオブスターズ(Cloth Of Stars)が、内外に分かれて直後の3番手につけ、そこから2馬身ほど開いた5番手をヴァルトガイストが追走、ウェイトゥパリスが最後方からの競馬となった。
その後も、道中はクリンチャーが1馬身半から2馬身ほどのリードを保って逃げる展開となり、各馬がフォルスストレートを抜けて直線へ。残り400m手前から各馬が追い出しを開始し、 クリンチャーもそれに合わせてスパートを開始するが、それほど伸びがなく後続に飲み込まれていく。代わって、先頭に立ったのはタリスマニックで、内から伸びるクロスオブスターズとの差を少しずつ広げにかかるが、さらに外を勢い良く追い込んできたヴァルトガイストがこれらを捉えてあっという間に先頭へ。残り100mほどのところで前に出ると、そこから後続との差を2馬身半まで広げ、最後は流すような格好でゴールに入った。
2着争いは際どくなったものの、タリスマニックが内で抵抗するクロスオブスターズを抑えて先着。クロスオブスターズが短首差の3着で、4着には最後方から追い込んだウェイトゥパリスが入った。一方、直線入口で早々に脱落してしまったクリンチャーは、5着のカプリから遅れること1馬身半、勝ったヴァルトガイストから8馬身差の6着に敗れた。
勝ったヴァルトガイストは、父Galileo、母Waldlerche(母の父Monsun)という血統の4歳牡馬。2歳時にG1クリテリウムドサンクルーで優勝したほか、3歳時にも仏ダービー2着、愛ダービー4着などG1戦線で活躍してきた馬で、今年は2戦目のG3エドゥヴィル賞から重賞3連勝を飾り、7月のサンクルー大賞で2つめのG1タイトルを獲得していた。そして今回、それ以来となったレースを制して2400mの重賞を4連勝。勢いそのままに大一番の凱旋門賞を迎えることになる。通算成績は13戦6勝。
【展望】
現地時間9月16日(日本時間同日深夜)、フランスのパリロンシャン競馬場では芝2400mのGII・フォワ賞が行われる。
“アークトライアルズ”という開催名からも分かるように、10月7日の凱旋門賞に向けた前哨戦が組まれているこの日のパリロンシャン競馬場。3レースある前哨戦は全て本番と同じコース、距離で行われるため、それぞれが非常に重要な一戦となるが、中でもこのフォワ賞は古馬が出走する競走で、過去には凱旋門賞を目指して日本から遠征したエルコンドルパサーやオルフェーヴルがここを勝って本番での好走に繋げているほか、シリウスシンボリ、ナカヤマフェスタ、ヒルノダムールの3頭が2着に入った。同じ日に行われる3歳馬のGII・ニエル賞や牝馬限定GI・ヴェルメイユ賞と同じく、日本のファンの間でもすっかりお馴染みとなったレースだろう。
前年の1954年に死去したアンリ・フォワ氏の名をとり、1955年にアンリフォワ賞として創設されたこのレース。当時は3歳以上の馬が出走できる芝2300mの競走だったが、その後、1961年に距離が2200mへ短縮され、1967年になると出走条件が4歳以上に変更される。さらに、1969年には現名称へレース名が改称されるなどいくつかの変更があった後、1979年になって距離が現在の2400mになった。前述したように、エルコンドルパサーとオルフェーヴルの2頭が優勝するなど日本調教馬との関わりも少なくないフォワ賞だが、凱旋門賞へのステップレースということで地元フランス勢をはじめとするヨーロッパ勢にとっても重要な競走のひとつで、過去の勝ち馬には凱旋門賞を連覇したサガスやエルコンドルパサーを破って凱旋門賞を勝ったモンジューといった一流馬が名を連ねる。また、カーネギーやマジックナイト、サラフィナといった優勝馬は、引退後に日本で種牡馬もしくは繁殖牝馬になっている。
次に、舞台となるパリロンシャン競馬場についてだが、競馬場があるのはフランスの首都・パリの中心部から西に車で15分程度のところにあるブローニュの森の西側。セーヌ川沿いのところに建てられ、1856年に開場した。コース自体は右回りの芝コースで、一周2750mの大周りコースを筆頭に中周りコース(2500m)、小周りコース(2150m)、新コース(1400m)があり、向こう正面には1000mの直線コースも設けられている。また、周回コースの3コーナー部分は上り坂になっており、大周りコースともなるとその高低差は10m以上になる。なお、パリロンシャン競馬場は、2015年の凱旋門賞後から行われていた改修工事が今春終了し、名称をロンシャン競馬場からパリロンシャン競馬場に改めてリニューアルオープンしたが、コース自体はロンシャン競馬場時代から大きく変わっていない。
さて、ここからは出走予定馬の紹介に移りたい。今年も最終登録の段階で日本のクリンチャーを含めて登録馬が6頭しかおらず、少頭数での一戦になることが確実なこのレースだが、そのうち4頭がGI馬ということで、サトノダイヤモンドやサトノノブレスが出走した昨年よりも強敵が多い。まずは、これらの馬たちから紹介していく。
クロスオブスターズ(Cloth Of Stars)は昨年のこのレースの2着馬で、続く凱旋門賞でもエネイブルの2着に入った。今年も同様のローテーションで本番を目指すことになるが、重賞3連勝で臨んだ昨年とは違い、今年は4戦して勝ち星がなし。年明け初戦のGI・ドバイシーマクラシックで3着に敗れて以降、GI・ガネー賞3着、GII・シャンティイ大賞6着、GI・サンクルー大賞4着と精彩を欠いている。今回は、およそ2カ月半ぶりの実戦ということでリフレッシュ効果に期待したいところだが、近走成績を考えると不安は否めない。大一番を前に本来の走りを取り戻すことができるだろうか。
クロスオブスターズと同厩で、同じゴドルフィンが所有するタリスマニック(Talismanic)は、昨年のこのレースで3着になった後、凱旋門賞をパスしてアメリカに向かい、GI・BCターフ(デルマー、芝12F)を制覇。続くGI・香港ヴァーズでも日本から参戦したトーセンバジルらに先着して2着に入っている。そして今年は、自身初のダート戦となるドバイワールドC出走に向け、3月に行われたオールウェザーの一般戦で始動し、クロスオブスターズを下して勝利したが、ドバイワールドCでは10頭立ての9着に大敗。その後、長らく休養に入っていたものの、復帰戦となった8月中旬のGIII・ゴントービロン賞(ドーヴィル、芝2000m)を勝って、ここに駒を進めてきた。この後は、昨年不出走だった凱旋門賞挑戦を視野に入れているとも伝えられているだけに、今回はタリスマニックにとっても大切な一戦になるが、一度使われたことなどを踏まえると、むしろ状態面ではクロスオブスターズ以上とも思われる。昨年は先着を許したが、今年は逆の結果になるかもしれない。
昨年の仏ダービー2着馬で、7月のサンクルー大賞(サンクルー、芝2400m)で2度目のGI制覇を飾ったヴァルトガイスト(Waldgeist)は、オーナーこそ違うが上記2頭と同じアンドレ・ファーブル調教師の管理馬。今年は初戦のアルクール賞で5着に敗れたが、その後はGIII・エドゥヴィル賞(パリロンシャン、芝2400m)、GII・シャンティイ大賞(シャンティイ、芝2400m)、前述のサンクルー大賞と2400mの重賞を3連勝している。クロスオブスターズと同じく、こちらも今回が休み明けの一戦で、ここは凱旋門賞に向けた試走という意味合いが強そうだが、連勝中の勢いを止めたくないという思いも陣営にはあるだろう。能力的には上記2頭と遜色ないことから、4連勝で本番の有力候補に名乗りを上げる可能性は十分にある。
もう1頭のGI馬カプリ(Capri)は、アイルランドのエイダン・オブライエン厩舎の所属馬で、3歳時の昨年は愛ダービー(カラ、GI、芝12F)と英セントレジャー(ドンカスター、GI、芝14F115yd)を制している。今シーズンは、初戦となったGIII・アレッジドS(ナース、芝10F)で勝利し、幸先の良いスタートを切ったかのように思われたが、その後に馬体に不安が生じたことから休養に入っており、今回が約5カ月ぶりの実戦。そういう意味では、やはり状態面が気になるところである。愛ダービーで2着に退けたクラックスマンや、英セントレジャーで下したクリスタルオーシャン、ストラディヴァリウスなどはその後、トップクラスで活躍しているだけに、走れる状態であればここでも上位争いが期待できそうだが、案外というケースも考えられる。
残る2頭は、イタリア調教馬のウェイトゥパリス(Way To Paris)と日本から挑むクリンチャーである。このうちウェイトゥパリスは通算成績16戦3勝。昨年まではイタリアでの競馬がメインだったが、今年は5戦全てでフランスに遠征しており、重賞に出走している。ただ、いずれも勝ち星を挙げるには至っておらず、最高着順は2度ある2着。そのうちの1回が5月のエドゥヴィル賞で、勝ったヴァルトガイストには1馬身半差をつけられた。3着に敗れた次戦のシャンティイ大賞でも同馬には3馬身の差をつけられていることや、ここまで重賞未勝利という成績を鑑みると、やはり今回のメンバー相手では厳しい戦いを強いられそうだ。
最後にクリンチャーについてだが、同馬にとってここはあくまでも叩き台であり、最大の目標は次走に予定されている凱旋門賞である。そういう意味では、今回はまず無事に走り切ることが大切で、その上で初めて走るパリロンシャン競馬場のコース、馬場を経験することが何よりも重要になる。だが、日本国内での走りを見る限り、力を要するヨーロッパの馬場はマッチすると思われるだけに、いきなり好走しても何ら不思議ではない。本番の凱旋門賞ではさらなる強敵が待ち受けているだけに、あわよくばそこに向けて期待を抱かせる結果を残してほしいところである。
※記載している出走予定馬については9月14日(午後0時)時点でのものであり、今後、出走取消等により出走しない場合もありますので予めご了承ください。
