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競馬サロン

観客席に向かって追え!(アグネスデジタル最終章)

2018/11/09 17:00



■「“オールラウンダー”の秘密」


【「もう一花咲かせよう」】

5歳春の海外遠征を終えたデジタル。
空輸を経て厩舎に戻るとドッと疲れが出たようで、表情や馬体から疲労の色が見て取れる。
ここで私は、この馬にとって初めてとなる長期休養を決断。
約1年間休ませ、激戦の疲れを癒やすことにした。

2003年の春に帰厩。早いもので、あのデジタルももう6歳だ。
人間で言うところのだいたい30歳前くらい。
競技によっては脂の乗った時期を過ぎ、衰退期に入る頃合いだろう。

しかし、デジタルの瞳には昔と変わらない闘志が宿っていた。

「よし、これならまだ戦えるな。もう一花咲かせよう」

今後のプランを練るために、私はスタッフを集めた。


【あのデジタルにしても超えることのできなかった“壁”】

復帰戦は名古屋のかきつばた記念を選択。
デジタルが375日ぶりに競馬場へ帰ってきた。

当日の馬体重は過去最高の472キロ。
ムダ肉のないフォルムから、太め残りでないことが判断できる。

「これは成長分だ」

この年になってもさらに進化を続ける愛馬を見て、自然と顔がほころぶ。

このようにある程度の仕上がりにあった。
しかし、レースでは直線で伸び切れず4着敗退。

やはり1年のブランクは大きかったのか。
あのデジタルにしても、それを容易に超えることができなかった。


【復活! 人馬一体となって掴んだ勝利】

そして1カ月後の安田記念へ駒を進める。

GI級5勝と実績では断然のデジタルだったが、単勝は4番人気。
前走の結果を受け、競馬ファンやマスコミはデジタルを「終わった馬」と判断したようだ。
だが私は冒頭でも述べたように、また大仕事をやってのける自信があった。

これまでに二度勝っている縁起のよいファンファーレが流れ、ゲートが開く。
四位くんがうまくスタートを決め、最内で先団を見れるちょうどいいポジションに収まる。

そして直線へ。

自然と拳に力が入る。
この瞬間がたまらなくいい。

徐々に外へ導き前が開けると、内からスルスルと抜け出してきたユタカくんのアドマイヤマックスを、クビ差ほど差し切って先頭でゴール。
勝ちタイムの1分32秒1はレコードだ。

デジタルの勝利への執念は本当に恐れ入る。
そして内でロスなく立ちまわった鞍上の好騎乗も光った。
人馬一体となって掴んだ勝利。
GI6勝はルドルフやオペラオーに次ぐ記録(当時)だ。

「いつもお前には驚かされるわ」

検量室前で愛馬のクビを叩いて労う。
自分の偉業を知ってか知らずか、その表情はいつものように寝ぼけていた。


【血に秘めるポテンシャルはこんなものではない】

結局この安田記念が最後の勝利となってしまった。
そしてこの年の暮れ、日本国内はもとより、世界を駆け巡った“オールラウンダー”の引退が決まった。

ビッグレッドファームで第二の馬生を歩み始めたデジタル。

初年度から重賞馬を輩出するなど、種牡馬としても好調なスタートを切る。
その後もコンスタントに活躍馬を出し、2014年、GIウイナー(カゼノコ)の父となった。

父親となってから早10年超。
一定の成績を残している種牡馬アグネスデジタルだが、血に秘めるポテンシャルはこんなものではないと思う。

当時、メディア向けに「ミスプロ系とサンデー肌の相性が良い」と言った記憶がある。
今の競馬界で主流となっているニックスだ。

この組み合わせで最も成功を収めている父がキングカメハメハだろう。

昨年GI2勝のラブリーデイや、先日惜しまれつつ引退したドゥラメンテもこのカップリングだ。

「デジタルも質のいい母馬に恵まれていたら」

今でもこう思っている。

当時の日高地方(ビッグレッドファームがある)には、社台で繋養されているような良血牝馬がいなかったも事実。
社台のバックアップでトントン拍子に出世していったキンカメとは対照的だった。

もし当時これが逆であったならば、今のキンカメの地位にいたのはデジタルだったに違いない。

ちなみに、ボクノタイヨウというデジタルの仔をご存知だろうか?
私が現役時に管理していた馬なのだが、実は、「これは良い馬だ」と思い、オーナーに直談判して預からせてもらうことになった

母はタルゴナイトというサンデーサイレンスの直仔。

つまり先に取り上げたニックスを含んだ配合だ。

中央で5勝を挙げたのだから競走能力もいいものを持っていた。
これは「ミスプロ系とサンデー肌の相性が良い」という仮説を、証明してくれた一例だと思っている。

【“オールラウンダー”の秘密】

アグネスデジタルとの出会いから、約20年近くになろうとしている。

彼の強さは何と言っても

ポーカーフェイス──

これに尽きる。

大人しい馬だから、どこへ連れて行ってもドッシリと構えている。
変化する環境に動じない強さを持っていた。

これが“オールラウンダー”の秘密だろう。

私はこのような名馬を手がけられて幸せだった。
しかも、自分でアメリカまで足を運び発掘してきたのだから、それをより一層強く感じられる。

この先、第二のアグネスデジタルの登場を心待ちにしたい。

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白井寿昭
元JRA調教師
白井寿昭

1945年1月13日、広島県出身。立命館大学経営学部(マンドリンクラブ所属)という畑違いの分野から競馬の世界に飛び込み、厩務員、調教助手を経て1978年に調教師免許を取得した。
1998年のダービー馬スペシャルウィークを筆頭に、芝ダート国内外を問わずGI6勝を挙げたアグネスデジタル、菊花賞に挑戦したオークス馬ダンスパートナーなどの個性派GI馬を多数管理。
若い頃から培ってきた相馬眼で当歳時のアグネスデジタルを見出したり、芝重賞馬メイショウボーラーをダートに転向させてGI馬にしたりと個性的なエピソードは事欠かず、一部は『白井最強伝説』として広く親しまれている。
2015年2月28日、定年により現役引退。
通算795勝(中央775勝、地方・海外20勝、重賞42勝)

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