競馬にはさまざまな印があるが、そのなかでも本命の印はスペシャル・ワンの存在感を放つ。

惜しまれつつこの世を去った競馬予想家・清水成駿氏は何度もウオッカに【◎】を託した。幾多の名言を生み出した稀代の予想家もまた“印に宿る何か”を無意識のうちに感じ取っていたのだろうか。

2024年の予想（重賞・メイン・自信の一鞍・太鼓判）において、私がもっとも多く本命の印を託した1頭はエンペラーワケア。ここで改めて、当時の見解を振り返ってみたい。

（欅S見解）
根岸S以来の実戦となるエンペラーワケア。間隔があいたことによる不安を考えしまうのは当然だろう。ただ、中間は坂路で4F51秒台をマークするなど乗り込み量に不足なし。極端なハイペースが見込めないメンバー構成を見るより好位から運べる可能性が高く、勝利への条件は揃った。飛躍の秋に向けて落とせない一戦（欅S見解ここまで）。

（エニフS見解）
前走は勝ち馬と2キロの斤量差が響いた印象のエンペラーワケア。ここを勝たないと今後のローテーションに支障をきたすことから、是が非でも勝利がほしいシチュエーションだ。この中間は坂路で入念に乗り込まれており、仕上がりは申し分なし。最大のライバル・サンライズフレイムが最内枠で外に出す手間が生じる点も勝利の確率を上げるものとなる。不動の本命だ（エニフS見解ここまで）。

（武蔵野S見解）
エンペラーワケアの本命は揺るがない。ダートでは【6-2-0-0】と抜群の安定感を誇る馬。ダートにおいて1400ｍしか経験していない点は気がかりも、良馬場で1分22秒台を複数マークしつつ斤量59キロもクリアするなど、やれることはすべてやってきた感覚を抱いてしまう（武蔵野S見解ここまで）。

ここで浮上したキーワードは「坂路」と「斤量」。なかでも坂路は本馬のレース結果と直結するところでもあり、中間に坂路4F51秒3以内を記録した際のレースでは【5-0-0-0】と負け知らずだ。

中間の調教をみると、坂路4Fで2週前に51秒2、先週は50秒0の猛時計をマーク。“確勝級”と言える時計を2度にわたってクリアしている事実は見逃せない。GIに出す以上は当たり前かもしれないが、陣営は本気でこのレースを獲る腹積もりだ。

過去10年のフェブラリーSにおいて、1枠の成績は【0-0-0-19】。データ上は厳しい印象も、該当馬に当日3番人気以内は1頭もいなかった。馬番3番を引き当てた1-3番人気馬の成績は【2-1-0-0】だから、単に出走馬のレベルが足りていなかったのだろう。気にする必要はない。

昨年だけで3度本命の印を託したエンペラーワケア。その特徴は私なりにわかっているつもりだ。四方から囲まれつつ、狭い箇所をすり抜けた武蔵野S。砂を被るシチュエーションや馬群での競馬を強いられる状況はむしろ喜ばしいのでは……そんな感覚すら抱いている。

迷いはない。

エンペラーワケアが私の本命だ。

相手本線には昨年の覇者・ペプチドナイルを。

昨年のこのレース勝ち馬。600m通過33秒9の激流を4角4番手から2着に0秒2差と、まるで単勝1倍台レベルの強い勝ち方には驚かされた。過去10年のフェブラリーSにおいて、前走チャンピオンズCで3人気以内だった馬は【2-1-1-1】。天敵レモンポップがいない今回は前走との比較でメンバーも軽く、上位進出の可能性は十分だ。

コスタノヴァも要警戒。

前走根岸Sは圧巻のパフォーマンスで勝利。東京無敗の強さをいかんなく発揮した強いレースぶりだった。過去10年のフェブラリーSにおいて、前走根岸S勝ち馬かつ東京マイル勝利あり該当馬は【3-0-0-0】。自身初となる間隔の詰まった臨戦過程がどうかも、目下の勢いを軽視することはできない。

週中から評価を上げたのはタガノビューティー。

昨年のフェブラリーSは2着とタイム差なしの4着。当時は馬番10番だったが、もうワンテンポ追い出しを遅らせていれば2着は堅かっただろう。東京ダート1600ｍで馬番4番以内時の成績は【2-2-0-1】。道中は馬群で脚を溜め、直線でスムーズに抜け出すことができれば差はない。

【東京11R　フェブラリーS予想の印】
◎１ エンペラーワケア
〇11 ペプチドナイル
▲９ コスタノヴァ
☆２ タガノビューティー
△６ メイショウハリオ
△４ ウィリアムバローズ
△14 ミッキーファイト
△12 サンライズジパング

【馬連】1＝11,9,2（3点）
【3連複/フォーメ】1＝11,9,2＝11,9,2,6,4,14,12(15点)