競馬サロン

2024/07/22 21:00
【クイーンステークス2024 血統展望】好相性の種牡馬&機動力ある牝系 3歳馬ならこの馬!


≪今週の動画≫
皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。
先週は夏休みという名の短期放牧に出ておりました。おかげさまでフレッシュな状態で戻ってくることができました。
さてこの記事では週末の重賞・クイーンステークス(GIII、札幌芝1800m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。
■過去のレース傾向
基本的に札幌開催のクイーンSは「父ノーザンダンサー系を買っておこう」というのがマイルール(過去10回で【3-3-1-7】、勝率21.4%、複勝率50.0%)なのだが、今年の登録馬に該当はゼロ。
想定が出るまでは「ベーカバド産駒のフィールシンパシーあたりを買えばいいのでは」と考えていたところ出走しないと聞いて密かに慌てた。
そんな今年のクイーンSで注目したのが札幌芝1800mにおける種牡馬傾向。
単純な成績だけ見ればドゥラメンテ産駒やルーラーシップ産駒などもかなりの成績を残しているが、2勝クラス以上の中・上級条件に限定すると、ゴールドシップとキズナの産駒が優秀な成績を残している。
ゴールドシップ産駒は複勝率50%で複勝回収率300%超、キズナ産駒も単複回収率100%超なので、該当馬がいればベタ買いくらいの意気込みでいたい。
特にゴールドシップ産駒は重賞での打率も魅力で、ブラックホールの札幌2歳Sをはじめ、ここまで既に4連対の実績がある。
一方でこれが2000mになると、ゴールドシップ産駒は重賞を含めてそれほど成績が振るわない。一般的に根幹距離より非根幹距離の方が上がりの時計がかかりやすいとされている。なるべく上がりのかかってほしいゴールドシップ産駒にとっては1800mの方が走りやすいという側面があるようだ。
ちなみに集計対象を中・上級条件に限定したのも上がり時計に関連している。
というのも下級条件だとスローで流れての上がり勝負になることが少なくないため。本来であれば上がりのかかる洋芝&非根幹距離が苦手な種牡馬の産駒でも、スタミナの要らない条件ならなんとか誤魔化しがきいてしまうこともしばしば。
例えばロードカナロア産駒は、通算の全体成績だと【5-2-1-19】で複勝率29.6%とまずまずの成績なのだが、2勝クラス以上に限定すると【1-0-0-6】であまり成績は振るわない。馬券になったのはステルヴィオのコスモス賞だけとなっている。
下級条件であればスタミナ要求度も相対的に小さいので距離をこなせてしまう一方、道中の負荷も大きくなる中・上級条件だと本質的な適性不足を露呈してしまう。ロードカナロア産駒についてはそんな傾向が出ていると言えそうだ。
キズナに関して考えてみると、現役時の父のイメージより切れない産駒が多いため、上がりのかかる洋芝かつ非根幹距離の条件で結果を残していると考えられる。
■各馬の個別検討
▼コガネノソラ
オークス12着からの巻き返しを期す同馬は、オークス馬ユーバーレーベンなどが出たゴールドシップ×ロージズインメイのニックス配合。ゴールドシップ産駒は牝馬の方が成績が良いのでその点でもお手本どおりという感じだ。
コガネノソラの牝系はウインマリリンやウインマーレライなどが出たコスモチェーロの牝系。
コスモチェーロ牝系はフサイチペガサスからヘイローを引く(≒サンデー系種牡馬との配合でヘイロークロスが発生する)ことに加え、コスモチェーロの祖母エイプリルワンダーがフェアトライアル≒フェロッシャー2×2(フェアウェイ=ファロス、レディジョセフィンなどが共通)という強烈なニアリークロスを抱えているため、ここからフェアトライアル的、レディジュラー的な機動力がしっかりと伝わる傾向にある。
なのでマリリンは中山で男馬を相手にGIIを2勝し、マーレライは福島でラジニケを制し、コガネノソラの母マイネヒメルは函館の芝1800mで3勝を挙げたわけだ。
これを踏まえると、コガネノソラにとっても直線の長い東京からコーナーで動ける札幌に舞台が替わるのはプラスに働くと考えられる。
前走は距離を意識するがあまり位置を取れなかったのが敗因にあるだろうし、中2週続き、イケイケのローテーションによる目に見えない疲れもあっただろう。ひと息入れて実績のある1800mで普段着の競馬ができれば、古馬が相手でも斤量差を活かして十分にチャンスはあると見る。
1800mで勝った3戦はいずれも加速ラップで勝ち切っているように力は備えている。ゴールドシップの洋芝1800m適性とコスモチェーロ牝系の機動力でもってここは一発に期待したい。
▼ウインピクシス
昨年の2着馬でコガネノソラと同じくゴールドシップ×ロージズインメイの配合パターンを踏襲している。この馬の場合はヘイロークロスの影響が強く出たようで、コーナー4つの中距離で機動力を活かすタイプに出た。先行できる脚質はいかにもクイーンS的だし、昨年2着の実績が示すようにコース相性も問題ない。
確かにワンパンチ足りない点は否定しないが、特段大きく嫌う要素もないというのが現段階でのイメージ。
あとは当日の気配に注目したいところ。
前走の福島牝馬Sは馬体重を大きく減らした「メイチ」感のある仕上げだった。ひと息入れたとはいえ、今回どのようなコンディションで走れるかがポイントになるだろう。
▼スタニングローズ
一昨年の秋華賞馬だが、長期休養を挟んだ春2戦は大阪杯8着、ヴィクトリアマイル9着とほろ苦い結果に。ただ、いずれのレースでも勝ち馬との差は1秒未満と一定の能力は示した内容だった。
前走のヴィクトリアマイルでは「マイル以下の重賞で中距離向きの薔薇一族は買えないだろう」ということで評価を下げたのだが、裏を返せば中距離の重賞なら十分に狙いが立つということ。
コーナー4つの中距離レースは秋華賞、紫苑S、フラワーCと重賞3勝を誇る好相性の舞台だし、マイルのハイペースで3番手につけられたこの馬の先行力が活きる舞台。上がりの脚に乏しいところがあるので、それを誤魔化せる洋芝もプラスになるはずだ。
あとは先行争いをうまくいなせるかどうか。コンクシェルを筆頭に前を取りたい面々がいるので、流れが激化した際に最後までスタミナを残せるか。間違いなく前走より条件は向いているので、そこさえなんとかなればチャンスはあると見る。
▼ボンドガール
父はダイワメジャー、母コーステッドはアメリカのGI・BCジュヴェナイルフィリーズターフの2着馬。半兄にはダノンベルーガがいる血統背景。
前走のNHKマイルCでは手応え良く直線を向いたものの、アスコリピチェーノの斜行で進路をカットされて万事休す。ラストは流してゴールしており、力を発揮できたとは言えない内容だった。
デビュー戦で下した相手はチェルヴィニアにコラソンビートにマスクオールウィンにキャットファイトと実力馬揃い。古馬が相手のGIIIでも十分に通用する力の持ち主であることは明白だ。
ここでも絶対能力は何ら見劣りしないと思うものの、その一方で果たして距離が1800mというのはどうなのか。
ダイワメジャーの牝馬は重賞レベルだととにかく距離がこなせないのが特徴で、ダイワメジャー牝馬の芝1800m以上の重賞における成績はこのようになっている。
■ダイワメジャー牝馬×芝1800m以上重賞
【0-1-6-77】
勝率0.0% 連対率1.2% 複勝率8.3%
複勝率8.3%はちょっと狙いづらいし、7回の馬券圏内うち3回は母が欧州スタミナ血統のシゲルピンクダイヤによるもの。また7回のうち5回は道中がゆったり流れて相対的にスタミナ要求度が低くなりやすい世代限定戦でのものであり、古馬混合の重賞だと【0-1-1-36】で複勝率5.3%に留まる。
「さすがに古馬混合の芝1800mではちょっと買いづらいよね?」というのが正直な感想だ。
ハーツクライ産駒のダノンベルーガが1800m型に出ているわけだから、ダイワメジャー産駒で牝馬のボンドガールの距離適性はそれより短くなって然るべき。個人的には1400mくらいがベストなんじゃなかろうかと。
確かに斤量面でのメリットは大きいし、名手武豊が減量してまで騎乗するという点は魅力に映る。とはいえ、過去のダイワメジャー牝馬の傾向を超越するほどこの馬が強いという根拠も正直まだ見出せていない。想定されるオッズを考慮して軽視する手はあるだろう。
▼コンクシェル
ザナの仔は母系に入るオリオールの影響でとにかく揉まれる形が苦手。コンクシェルが勝ったのはいずれも揉まれない競馬の形の時だったし、きょうだいも好走パターンは似たような感じ。コンクシェルが勝った中山牝馬Sはザナ的に絶好の隊列だったと言えよう。
単騎逃げが見込めた前走も期待していたものの、逃げようという意識が強過ぎたためか、マイル戦で前半600mの通過が33秒8という超ハイペースに。「さすがにこれでは止まりますわな」とレース中盤から既に諦観気味だったのだが、やはり番手追走だったフィールシンパシーと仲良く下位に沈んだ。
とはいえ大敗は逃げ馬の宿命だし、むしろその大敗で人気を落とすようならある意味ラッキー。夏にパフォーマンスを上げるタイプでもあり、夏の重賞であるここはチャンスなのではという感。
他の逃げ候補、特に登録に名を連ねるラリュエルとの兼ね合いがポイントにはなるが、スムーズにハナを切れさえすれば最後まで粘るシーンは十分に想定できる。
▼モズゴールドバレル
トンデモ配当を連れてくるかもしれないのがこの馬。根拠は「デインヒルを持っているから」という一点突破。
札幌開催のクイーンSはデインヒル内包馬と相性が良く、その成績は以下のとおりとなっている。
■デインヒル内包馬×クイーンS@札幌
【3-2-1-9】
勝率20.0% 連対率33.3% 複勝率40.0%
冒頭でチラッと触れた「父ノーザンダンサー系が強い」という点と関連した傾向と言えそうだ。洋芝札幌を舞台とした非根幹距離の重賞とあって、欧州的な洋芝への適性が求められるということだろう。
モズゴールドバレルの母父はデインヒル系の名マイラー・ロックオブジブラルタル。今年の出走馬でデインヒルを引く馬は少なく、実はこの馬だけだったりする。
そのうえ、モズゴールドバレルはイギリス2000ギニー勝ち馬カメコの半妹という世界的良血馬だし、洋芝ならワンチャンスあっても良いんじゃないか? というイメージ。どうやっても人気はしないはずなので、印を回しておくと良いことがあるかも?
■まとめ
ゴールドシップ産駒からはコガネノソラ、キズナ産駒のコンクシェルをまずは中心に検討を進めていきたい。牝系的にも札幌が合いそうなコガネノソラが人気しないようなら大変ラッキーなのである。
またモズゴールドバレルには何かしらの印を回したいところ。唯一のデインヒル持ちであることはもちろん、「クイーンSはミスプロ系が大穴をあける」って、メイショウスザンナとマコトブリジャールが言っていた気がするので。
枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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