競馬サロン
2024/07/08 21:00
【函館記念2024 血統展望】存在感を放つロベルトに組み合わせるべき血脈とは?
≪今週の動画≫
皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。
プロキオンSは○ヤマニンウルス→◎スレイマンが直線抜け出して「できた!」と思った瞬間、マリオロードの白帽が内からこんにちは。天国から地獄とはまさにこのことで、なかなかの高低差に耳がキーンとなりました。
七夕賞は◎キングズパレスの手応えの悪さに白目を剥いていましたが、▲ノッキングポイントともども頑張ってくれて3連複を的中。最初は消すつもりだった△レッドラディエンスでしたが、良馬場になりそうな天気予報を見て押さえておいたのが功を奏しました……。時計の速い七夕賞はディープが強いですね、ホント。エヒトの教えを土壇場で馬券に組み込んだことで生き残りました……。
さてこの記事では週末の重賞・函館記念(GIII、函館芝2000m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。
■過去のレース傾向
近年の函館記念は血統表のどこかにロベルトの血が入った馬の活躍が目立つ。
昨年3着のブローザホーン(父エピファネイア)や一昨年2着のマイネルウィルトス(父スクリーンヒーロー)のような父ロベルト系はもちろん、昨年の勝ち馬ローシャムパークや一昨年の勝ち馬ハヤヤッコもこれに当てはまる。気付きにくいがハービンジャーやクロフネもこっそりロベルトを抱えているのだ。
過去10年の函館記念を対象に「血統表のどこかにロベルトを抱える」馬の成績を調べてみると【4-5-9-50】で複勝率26.5%、複勝回収率136%とベタ買いでもプラスになる数字が出ている。
とはいえさすがに該当馬が多過ぎるきらいもあるので何か絞るポイントを発見したいところ。
今回はロベルトにプラスして組み合わせたい血脈をピックアップして紹介する。
(1)ミスプロ&スペシャル
ロベルトにミスプロをあわせるとゴールドディガー≒ブラマリーのニアリークロスが発生する。そこにヌレイエフやサドラーズウェルズなどを経由してスペシャルの血が入ると、ナシュア≒ナンターラのニアリークロスをさらに継続する格好となる。
この組み合わせは馬力を強化することに繋がりやすく、ともするとダートで狙いが立つタイプを多く出すのだが、最終週の洋芝という函館記念特有の条件において効果を発揮するようだ。
手っ取り早いのがミスプロとヌレイエフ経由でのスペシャルを抱えるキングマンボにロベルトをあわせるパターン。過去10年の当レースで馬券に絡んだ父もしくは母父キングマンボ系は7頭いたのだが、このうち5頭がロベルトを併せ持っていた。また函館記念とあまり相性が良くないディープインパクト産駒で馬券に絡んだ3頭のうち、ドゥオーモとアイスバブルはこの組み合わせをしっかりと押さえていたことにも注目したい。
(2)ノーザンテースト&ディクタス
これは配合の妙というより、シンプルに函館記念適性の上昇を見込んだもの。それこそ1990年以前、サッカーボーイやディクターランドの頃から、函館記念はディクタス×ノーザンテーストが席巻してきた。
血統表内にディクタスとノーザンテーストを併せ持つ馬の函館記念の通算成績は【2-4-5-18】で複勝率37.9%。複勝回収率も100%を超える。ディクタスの産駒デビューは昭和の最後なので、実に30年以上もベタ買いしてプラスだったことになる(年数に比してサンプルの数は少ないが……)。
そしてこのディクタス&ノーザンテーストの組み合わせにロベルトを入れると、函館記念では【1-1-4-6】、複勝率50.0%と2頭に1頭が好走する計算に。手っ取り早いのがステイゴールドにロベルトを入れるパターンで、マイネルミラノやバイオスパーク、マイネルファンロンなどがこれに該当した。
■各馬の個別検討
▼ホウオウビスケッツ
父はマインドユアビスケッツ、母ホウオウサブリナはルーラーシップの産駒で現役時代は未出走だったが、産駒としてホウオウビスケッツのほかにJRA2勝のホウオウユニコーンを送り出した。
ホウオウサブリナといえば何と言ってもマンファスの3×2というピーキーなクロス。現状の産駒成績を見るかぎり、この組み合わせが繁殖牝馬としての高いポテンシャルに繋がっているようだ。
ホウオウビスケッツの場合、マインドユアビスケッツからロベルトを引いて、母父ルーラーシップからミスプロとヌレイエフを引いているので、上述の注目パターンに該当する。函館記念への適性は高そうな血統表の並びに見える。
後は距離がどうかというところ。古馬になってからの走りを見るにベストは1600-1800mという感じで、200mの距離延長を誤魔化せるかどうか。
また巴賞を前受けして勝った馬はとにかく函館記念で振るわないのでその点は相当に気がかり。アウスヴァールをはじめ、先行したい馬は他にもいるので道中でヘンに絡まれなければという条件がつきそう。
▼リカンカブール
父のシルバーステートからロベルトを、母アンブラッセモワからミスプロとスペシャルとうっすらロベルトを引いてくるため、先に取り上げたポイントを満たす形になった。
母のアンブラッセモワはフランス産馬で、ゾファニー×ピヴォタル×カーリアンというノーザンダンサー色の濃い配合。洋芝適性という点を考えるとこれくらいノーザンダンサーが色濃い方が好材料だろう。
ただでさえシルヴァーホークの影響が強いシルバーステートだが、さらにロベルトをクロスさせると前々で立ち回る機動力が強化されるよう。ロベルトをクロスさせたシルバーステート産駒はウォーターナビレラもセッションもケイアイサンデラもラヴァンダもみんな似たような先行脚質になった。
シルヴァーホークとダンシリ経由でのロベルトクロスを抱えるリカンカブールも、差して勝ったことはあるものの、基本的には中山金杯のようにインの前を立ち回る競馬が理想だろう。
前走の大阪杯はGIで相手が強かったことに加え、イン前が強かった競馬で8枠15番というのがかなり影響した。大敗だったがノーカウントで良さそう。コーナー4つの立ち回り勝負であればGIIIなら十分に通用する力がある。巻き返しに期待したい。
▼チャックネイト
父はハーツクライ、母ゴジップガールは芝10FのGIアメリカンオークスの勝ち馬。近親にはアルゼンチンの重賞勝ち馬がいる。
母はロベルト×キングマンボという配合なので函館記念的な組み合わせ。そこにハーツクライなので、発想としては22年3着のスカーフェイスに近いものがある。
異なる点と言えばこちらの方がノーザンダンサー色がやや薄いところ。個人的には欧州適性・洋芝適性という意味では、もう少しノーザンダンサー色が濃くても良かったのかな? という感は否めない。
とはいえ前走の天皇賞はさすがに距離が長かったのと、イン有利の馬場で8枠を引いた時点で厳しかった印象。それに初めての関西遠征というのも影響したのだろう。早い段階でアラアラになりラストは流していた。
勝ったAJCCもそうだし、3着だったアルゼンチン共和国杯を見ても、GIIIレベルでは地力は一枚上手の感。加えて渋った芝を得意としているうえ、母ゴジップガールはロベルト的、グロースターク=ヒズマジェスティ的なスタミナを伝える繁殖牝馬であり、週末の函館の天気が崩れても対応できると見る。
後はハンデとの相談ということになるだろう。
▼デビットバローズ
父はロードカナロア、母フレンチビキニはJRAで4勝。上には1400m時代の阪神牝馬S2着のベルルミエールや新潟2歳S勝ち馬のヴゼットジョリーなどがいる。
確かに条件戦では2000m以上の距離もこなしていたが、この母にカナロアなので基本的な距離適性としては1800mまでが上限の感。2000m、しかも洋芝というのはスタミナ面で若干の不安が残るところ。
また姉のヴゼットジョリーがそうだったように直線の長いコースの方が走りやすそうなイメージも。
母母父のソーマレズがハイペリオンとナスルーラを重ねに重ねた配合であり、それがキンカメの持つスペシャルやミルリーフ、ホーンビームと脈絡するとなると、東京や新潟外回りと言った長い直線がベターな組み合わせに思える。
ホウオウビスケッツのところでも述べたように、巴賞先行組の函館記念成績はなかなか振るわないし、正直その点でもキツいところはあるのかな? と。人気するようであれば軽視する手も。
▼サヴォーナ
父はキズナ、母父のスニッツェルはオーストラリアのリーディングサイアーに輝いた短距離の名種牡馬。ここだけ見ると2000mの馬、ともするとマイラーにも見える配合だが、この馬の場合は12Fの重賞で2着がある祖母ラプーマの影響が強く出ているようで、結果的にロードアットウォー風味、リボー風味のスタミナ型になった。
ロードアットウォーとリボーのスタミナでジリジリと走る馬といえば、個人的にはシビルウォー(名古屋GPなどダート2000m以上の交流重賞を5勝)のイメージ。個人的には「芝向きシビルウォー」だと勝手に思っている。
今回は一気の距離短縮になるのでポジションを確保できるかどうか。普通に考えれば位置は下がるので、そうなったときにこの馬のジリ脚でどこまで追い上げられるかがポイントになるだろう。
▼トップナイフ
半兄のステラウインドは2014年の函館記念3着馬。トップナイフの場合は父がデクラレーションオブウォーに替わって、よりノーザンダンサーが濃い配合になった。母ビーウインドはヌレイエスやリヴァーマン、グロースターク等と言った欧州風味な血統を多く抱えており、きょうだいの洋芝適性はここからきているようだ。
近年の注目血脈であるロベルトを抱えていない点は気になるものの、全体としては函館記念っぽい配合で適性はかなり高いはず。
この馬の場合は仕上がりだけが課題だろう。この夏の大目標は昨年2着に終わった札幌記念という気もするので、今回どこまで仕上げられているか。そこさえ問題なければあっさり通用してしまっても驚けない。
▼マイネルクリソーラ
父はロベルト系のスクリーンヒーロー。母父がムタファーウエクなので、シルヴァーホーク3×3というなかなか強烈なクロスを抱えている。母マイネトゥインクルは1400-2000mでJRA4勝。その母マイネブリリアンもJRA3勝を挙げた。
マイネブリリアン→マイネトゥインクルの親子が牝馬ながらに中距離で結果を残したのは、サッカーボーイ由来のスタミナに加えて、ダイオライト5×4とハイペリオンとサンインローをたっぷり抱える牝祖タケノフラッグ由来のスタミナもしっかり伝わっているからだろう。
前述したとおりロベルト&ディクタス×ノーザンテーストは函館記念でなかなかの好成績。ステイゴールド(→ゴールデンサッシュ)経由でないのは珍しいが、マイネルクリソーラはスクリーンヒーローとサッカーボーイ経由でこの組み合わせを引いている。
前走の新潟大賞典は4角で不利を受け、そこでレースが終わってしまう恰好に。また小回り向きの血統構成を考えるとワンターンのコースも合っていなかったのだろう。
2走前の中山記念はコースこそ合っていたものの、結果的にはインの先行馬が残るレースにあって、出遅れて外を回す競馬になった時点でジ・エンド。
中山金杯では1キロもらいでリカンカブールに敗れているとはいえ、向こうは中山2000mの内枠だったのに対しこちらは不利とされる8枠。通ったコースの差を考えればそう差はないはずだ。
このコースでハンデ戦であれば一発狙う余地はあるだろう。
■まとめ
前走大敗に終わったリカンカブールとマイネルクリソーラ、中山金杯上位組の巻き返しに期待したい。混戦ムードが漂うので、手広くいってもそれなりに期待値はありそうだ。
枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。
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