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血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/06/10 21:00

【マーメイドステークス2024 血統展望】イレギュラーな京都開催 ハービンジャーが攻略のカギを握る

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≪今週の動画≫


皆さま、お元気ですか。“血統サイエンティスト”のドクトル井上です。

エプソムCはレーベンスティールが貫録勝ち。59キロも関係なかったですね。素直にすいませんでしたという感です。

トゥデイイズザデイは外からピッタリとアルナシームにつけられた道中が苦しかった印象。セルバーグの逃げで馬群が中切れするまでは読んでいたのですが、そこで外へ出せなかったのが痛かったですね。

とはいえこれもまた競馬なり。気持ちを切り替えてこの記事ではマーメイドステークス(京都・芝2000m)の血統展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

新装京都芝2000mの特徴とは?
例年であれば阪神芝2000mでの開催となるマーメイドSだが、今年は阪神競馬場のスタンドリフレッシュ工事の影響で、京都芝2000mでのレースとなる。今回は昨年4月のリニューアルオープン以降の京都芝2000mでのレースから見えた種牡馬傾向を基に分析を薦めたい。

(1)好走率高いハービンジャー ただし2着が多い
昨年のリニューアル以降、当コースにおけるハービンジャー産駒の成績は【2-10-2-22】で3着以内率38.9%。この数字は産駒が30回以上出走した種牡馬でトップの数字となっている。2着が多く勝ち切れないところはあるが、複勝回収率は156%なのでベタ買いで十分に元が取れる計算だ。

また母父ハービンジャーも【1-5-3-8】で複勝率50%超をマーク。こちらも2着が多いのは面白い傾向と言える。

改修により京都はまだ路盤が固まり切っていないようで、タフな決着になることも少なくない。そのうえ内回り2000mは早めに隊列が動くことも多く、より欧州的なタフさが求められるということだろう。

馬連や3連複の軸としてはかなり妙味があると見る。もうしばらくの間はハービンジャーの名前を見かけたときはベタ買いするくらいの勢いで良いのではないか。

(2)相手には拾っておきたい父ハーツクライ系
京都コースの坂下りが苦手なイメージもあるトニービン。そのトニービンをガッツリ引くのが父ハーツクライ系なわけだが、改修後の京都芝2000mでは【8-8-8-39】で複勝率38.1%と意外なくらいの好成績をマークしている。

上でも述べた内容と重複するが、まだタフな京都の芝、そのうえ内回りコースという条件のため、トニービンの欧州的なスタミナ、長く良い脚が武器になるようだ。

(3)最多勝のキズナは雨降り馬場でさらに強い
改修後の当コース最多勝種牡馬がキズナ。9勝は2位以下にダブルスコアの大差をつける圧倒的な成績だ。特に重馬場・不良馬場だと【3-1-1-2】で勝率42.9%、複勝率71.4%という驚異的な数字に。馬券を外す方が珍しいという結果が出ている。

もちろん良馬場でも十分な成績を残しているとはいえ、馬場が渋るとより力を発揮する産駒が多いというのは覚えておきたいポイントだ。

各馬の個別検討
コスタボニータ
前走の福島牝馬Sは内枠から馬群を綺麗に捌いて勝利。念願の重賞タイトルを手にした。落馬事故があったうえ、中盤がガッツリ緩んで前有利の展開になったとはいえ、立ち回り力、先行力を存分に活かし切っての白星だったのではなかろうか。

今回のポイントは距離。古馬になってからはマイル路線で活躍したイスラボニータの産駒で母父ケンドールはフランスのマイルGI2勝馬。半兄のマンハッタンカフェ産駒ハーバーコマンドこそ菊花賞で4着の実績があるものの、半姉イチオクノホシは阪神牝馬S、クイーンCでの2着が示すとおりのマイラーだった。

ここを見るとコスタボニータのベストもマイルから1800mで、2000mは1F長いようなイメージが。実際に1月の愛知杯ではこちらがトップハンデだったとはいえ、ミッキーゴージャスに完封されている。

ヴィクトリアマイルには目もくれずここを狙って来たローテーションは評価しつつ、ラスト1Fで案外伸び切れずというパターンにも注意しておきたい。

ミッキーゴージャス
父は宝塚記念を勝ったミッキーロケット、母ミッキークイーンはオークスと秋華賞を勝った2冠牝馬。オーナーゆかりの超良血馬だ。

ミッキーロケットの産駒なので上がり3Fの性能には限界があるタイプ。父が梅雨の上がりのかかる宝塚記念を制したように、産駒も比較的上がりのかかるレースに向いたタイプが多い印象。レース上がりが33秒台のような切れ味比べになるとやや苦しいところがあるものの、内回りの持続力勝負は得意の条件と見る。

実際に同コースの修学院Sでは後の鳴尾記念3着馬エアサージュを完封しているし、当然上がりのかかる内回りのここなら勝負になるはずだ。

馬場が渋るのはミッキーロケットなので問題なく、実際にミッキーゴージャスは渋った芝では3戦3勝のパーフェクトだ。

後はハンデをどう考えるかというのがポイントになるだろう。コスタボニータより0.5キロ重いハンデになるとはやや意外だった。てっきり同斤だと思っていたので……。

エーデルブルーメ
父は冒頭で取り上げたハービンジャー。祖母ビワハイジということでブエナビスタやアドマイヤオーラ、アドマイヤジャパンの姪にあたる良血馬だ。

ハービンジャー×タキオンの組み合わせはニシノデイジーやワセダインブルーなどパワーの要る洋芝や直線平坦コースで強い馬が多いイメージ。エーデルブルーメの全姉マイエンフェルトも札幌の1800m、HTB賞でかつて大穴をあけた。母父タキオンでスパッと切れる感じはないので、その意味では梅雨時でパワーがいる内回りの直線平坦コースはプラスに出ると見る。

福永厩舎に転厩して以降、馬がグッと良くなってきた感じがあり、これは普段の稽古を福永調教師がつけているというのも要因のひとつにありそうだ。

配合的には真っ当な中距離馬という感じで2000mはドンピシャの感。このコースでは寿Sでデビットバローズ(新潟大賞典4着)とクビ差の2着がある。

その一方、今回と同じコーナー4つの中距離戦だった2走前の関門橋Sでは4着に敗れているが、中途半端なマクリになってコーナーで外をブン回す形になったのが敗因。勝ったニホンピロキーフをはじめ、上位3頭は内を捌いた馬だったのでその差が大きかった感。

2着が多いハービンジャー産駒でアタマまではどうかも、馬連や3連複の軸ならかなり狙い目になる。馬単2着付けという奇手もありそう。いずれにせよ父ハービンジャーの複勝回収率は特筆もの。川田騎手がミッキーゴージャスではなくこちらを選んだのもかなりそそられるところだ。

ピンハイ
父はミッキーアイル、母レイテッドは園田で3勝。牝祖がタックスペイヤーズフォリーなので、ダート重賞で活躍したヒシアトラスや牝馬重賞戦線で好成績を残したアットザシーサイドが近親にいる血統背景。

配合を見るとサンデーサイレンス3×4、ヌレイエフの4×4、アリダーの5×4など父母相似配合の形に。これにより父と母の距離適性をそのままダイレクトに受け継ぐとすれば2000mはちょっと長いのでは? というのが第一感。

ミッキーアイルは言わずもがなスプリント?マイル路線で活躍した馬だし、タックスペイヤーズフォリー牝系で古馬になってから2000m以上でバリバリ頑張ったのは、ワークフォース産駒のアトミックフォースと2600mでしか走れなかったノーチカルチャートくらい。ヒシアトラスもアットザシーサイドもアルバタックスもルミナスハーバーも基本は1400-1800mの馬だった。

なのでピンハイもマイルから1800mがベストなのでは? という推論は成り立ちそう。

確かに牡馬相手の中日新聞杯で3着に好走した履歴はあるが、ハンデ戦で斤量に恵まれた点があったのも事実。牝馬同士のレースであればある程度の斤量を背負う必要が出てくるわけで、馬体の小さなこの馬にとってはプラスにはならないと見る。

ジューンオレンジ
母のアドマイヤサブリナはかなり優秀な繁殖牝馬で、ジューンオレンジの他に京都新聞杯勝ち馬ジューンテイクや障害重賞2勝のジューンベロシティを送り出した。ジューンオレンジもフィリーズレビュー3着があるため、これまでにデビューした産駒はいずれも重賞で馬券になっている。

これまでジューンオレンジは短距離を中心に走ってきたが、ジャスタウェイ×シンボリクリスエスという配合からはテーオーシリウスやシングフォーユーなど中距離で活躍した馬も出ており、案外この距離延長は面白いのではないか。

それに新装京都芝2000mと相性が良いハーツクライ系というのも好材料。特にジャスタウェイ産駒はこのコースでの活躍が目立つので、その点も推し要素に。

もちろん根っこはマイラー牝系なので、走ってみたらやっぱり長かったというパターンはあり得るが、人気を考えると印を回しておきたい。うっかり突っ込んでくるようなら配当ハネも狙えるはずだ。

ゴールドエクリプス
前走の阪神牝馬Sは距離が1F短かったうえ伸びない内を通したのが響いた印象で、今回2000mに距離が延びるのはプラスになるはず。

トニービン持ちのハーツクライ系が強いという話をしたが、同じくトニービンを引くドゥラメンテもこのコースはまずまずの相性。複勝率も40%近いし秋華賞もリバティアイランドが制した(※もちろん力が抜けていたのはあるが)。

ゴールドエクリプス自身も直線平坦コースでパフォーマンスを上げるタイプ。実際にこれまで好走したのは小倉と京都だけだったりする。3代母のアジヤタイリンがサクラユタカオー×ハビタット系ハビトニーという組み合わせで、ここから平坦適性、京都適性を受け継いだものと考えられる。

阪神から京都にコースが替わるのは好材料と見る。

そしてなにより母父に燦然と輝くハービンジャーの文字。京都芝2000mでハービンジャーはベタ買いでいいのでは?説を唱える以上、この馬にも注目せざるを得ない。

ホールネス
父のロペデヴェガは2010年の仏2冠馬。種牡馬になってからも活躍を見せ、先日の仏ダービーでは産駒がワンツー決着を演じた。

母のミスユナイテッドは現役時代平地と障害で計12勝。芝14FのGIII・リリーラングトリーSを制し、4000mのアスコット金杯で2着、3100mのロワイヤルオーク賞で3着の実績があるスタミナ豊富な牝馬だった。。

ホールネスの半兄イーグルスバイデイも2800mのGIII・イギリス・シルヴァーCを勝っており、基本はスタミナ牝系という理解で問題ないだろう。

そのためホールネスも基本的には持久力の要る条件で狙いたいイメージ。それこそ日本だと洋芝2600mがベストなのではなかろうかという印象だ。前走の熊野特別は中京2200mの重馬場という条件だったから、終わってみればホールネスのスタミナを活かすのに向いた舞台だった言える。

素質は上でもやれるくらいだし、なんなら重馬場になりがちな最近のエリザベス女王杯ならワンチャンあるんじゃなかろうかと思えるくらい。それだけに今回は2000mというのがどうか。牝系からはもう少し距離があった方が良さが出そうで、やや距離不足なのでは? という感は否めない。

タフなコンディション向きという認識なので、馬場状態を見ながら最終的な取り扱いを考えたい。

まとめ
まずは「新装京都芝2000mはハービンジャーを狙え!」という仮説に基づき、ハービンジャー持ちを積極的に狙いたい。特に前走が強かったエーデルブルーメと平坦コースで強さを発揮するゴールドエクリプスに注目している。

父ハーツクライ系のジューンオレンジや雨が降ったときのキズナ産駒にも注意しておきたいところ。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。

<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上

在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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