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競馬サロン

血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/04/22 21:00

【天皇賞・春 2024 血統展望】ドゥレッツァは「複勝率0%の壁」を超えられるか?

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2024年4月「競馬をより深く楽しんでいただく」ための新たなPROJECTがスタート!
その名も「重賞深掘りPROJECT」。重賞のことなら「ここを見れば完璧!」と言っていただける『重賞コーナー』に育てていくことを目指します!

=新PROJECT発足のご挨拶=
当PROJECTプロモーター「ブッシー」からのご挨拶です。
【重賞深掘りプロジェクト】始動のご挨拶
https://uma-jin.net/new/salon/salon_detail/17517/0/109

≪今週の動画≫

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皆さま、お元気ですか。“血統サイエンティスト”のドクトル井上です。

マイラーズカップは◎→△→○で決着。本命にしたソウルラッシュ以上に、○ニホンピロキーフの走りが気になってしょうがない1分33秒弱でした。いやはや直線平坦のニホンピロポリーナはホントに優秀です。

さてこの記事では天皇賞・春について血統面からの展望を。ごゆるりとお付き合いただけますと幸いです。

父キンカメ系に立ちはだかる淀の盾の壁

何はなくともこの記事を読んだ方にはこの点だけは覚えて帰ってほしいのだが、京都開催の天皇賞・春では父キングカメハメハ系がすこぶる不振なのである。

通算成績は【0-0-0-18】で1頭も馬券になっていないうえ、昨年のタイトルホルダーは故障があったとはいえ、その他にもトゥザグローリーやローズキングダム、ユーキャンスマイル、キセキといった人気馬がことごとく期待を裏切ってきた。

ミエスク由来のスピードとバックパサーの力強さをしっかりと産駒に伝えるがゆえに、キングカメハメハはマイルから中距離路線における大種牡馬として君臨したわけだが、その資質は淀の3200mを走るための資質とは方向性が異なる。

その噛み合わなさがこの結果に表れているのだろう。

今年、父キングカメハメハ系に該当するのはドゥレッツァとテーオーロイヤルの人気馬2頭。この2頭を軸にするのであれば「キンカメの呪縛」を上回るだけの買い材料を見つける必要がある。

各馬の個別検討

ドゥレッツァ
昨年の菊花賞馬でこのレースの想定1番人気。金鯱賞ではプログノーシスに千切られたが安全運転に徹したレースであり、あの1戦だけでどうのこうの言う必要はない。

曾祖母タマリノの配合はカーリアン×ラインゴールド×スタミナ牝馬ウェルシュフレイムと、いかにも淀の長距離で良さが出そうな配合で、アウトラインとしてはフィエールマンの母リュヌドールと似た印象も。この点は素直に褒めてあげたい。

ただ前述したとおりすこぶる不振の父キンカメ系という点が立ちはだかる。そのうえ、タマリノ以降重ねられた血は豪州の短距離をブイブイ言わせているデインヒル&モアザンレディ。この文字列は2000mベストにしか見えないんですよね……。

併せて気になるのが父母の間でバックパサーの血をクロスさせている点(7×6*6)。バックパサーは1960年代に活躍した名馬で、3代母は「北米史上最も偉大な繁殖牝馬」ことラトロワンヌ。

父トムフールの敏捷性と牝系由来の凄まじい馬力を伝えるバックパサーは血統表に入って良い働きをすることこの上ないのだが、父母間でこの血をクロスさせると馬力の面が強調されてしまい、「京都の長距離適性」には悪影響が出ると考えられる。

実際に、父母間でバックパサークロスを持つ馬の京都の天皇賞成績を調べると、【0-0-0-8】で全く結果が出ていない。菊花賞を含めても【2-1-0-19】で複勝率は13.6%だった(※1986年以降)。

阪神の長距離GIだとタイトルホルダーのように活躍馬が出ているが、これは急坂がある分、馬力の要素が求められるためだと推察。

“小癪な”配合論をぶっ千切ってきたドゥラメンテ産駒だし、ドゥレッツァには菊花賞で軽視して痛い目に遭わされた記憶もあるが、もう一度だけ逆らってみたいと思っている。

タスティエーラ
昨年の日本ダービー馬で菊花賞2着馬。ただその後は有馬記念、大阪杯と掲示板にも載れないでいる。

マンハッタンカフェの持久力がしっかり伝わっており、燃費の良さそうな走りで長丁場でこそのタイプなのは間違いないが、その一方で上がりの脚に乏しく、上がりの要求される舞台でどうか。“マジックマン”モレイラ騎手が上がりの要らない展開に持ち込めればというところ。

ちなみにこの馬もバックパサーの父母間クロス(6*6×7)を持っている。去年の菊花賞は父母間バックパサークロスのワンツーだったが、これは1986年以降初のこと。これで「潮目が変わった」と見る向きもあるが、個人的にはバックパサーがワンツーできるくらいレベルがどうだったんだ? と懐疑的な視線を向けてみたい。

個人的には宝塚記念で買いたいんですけどね、出てきてくれるかどうか……。

テーオーロイヤル
父はキンカメ系のリオンディーズ。母母父がクリスエスだからパーツにはエピファネイア的な要素も。クリスエス≒ハビタットは平坦の芝で強いというのはエピファネイアのみならず、コルテジア(きさらぎ賞)を見ても納得。

ドゥレッツァと同じく結果の出ていない父キングカメハメハ系ではあるが、バックパサーの父母間クロスがない点と上記の組み合わせがある分、こちらの方を上に取りたい。

キンカメ系×マンカフェで、リボーのクロスがあり雨が降っても大丈夫。先週のソウルラッシュも強かったでしょ?

サリエラ
父はディープインパクトで、母サロミナは独オークス馬。スタミナたっぷりのドイツSライン出身で3200mは守備範囲。

ただ春の天皇賞は牝馬にとっては過酷な一戦で、1986年以降【0-0-1-24】と厳しい結果。馬券になったのは21年のカレンブーケドールで、ジャパンCでの連対歴があった。

サリエラの場合、GI戦歴はエリザベス女王杯の6着しかないのでその点をどう評価するか。

また姉サラキアのように外枠向きの可能性も考えておきたい。枠順発表に注目。

ブローザホーン
長距離G1の活躍馬も送り出すエピファネイア産駒ではあるが、この馬は母父が短距離王デュランダル。

これまでに長丁場で活躍した同産駒(オーソクレースなど)は母父がディープインパクトだったので、デュランダルとの差を心配する方もいるだろうが、個人的には全く心配要らないと思っている。

何故ならオーソクレースやディヴァインラヴとブローザホーンがやっていることはだいたい一緒だから。

エピファネイアの血統表のなかで最もスタミナがありそうなのはサドラーズウェルズだが、もうひとつ「オリオール」という底力とスタミナを伝える種牡馬も鎮座している(※エピファネイアの母父スペシャルウィークの母母父父)。

そのオリオールは「ハイペリオン×ドナテッロ」というスタミナ血脈で構成されているのだが、ディープの場合は祖母のバークレア、デュランダルの場合は祖母スコッチプリンセスが持つアリシドンが同じく「ハイペリオンとドナテッロ」の組み合わせ。

使った血こそ違えどオリオールからスタミナを引き出す工夫が為されており、これがエピファネイア産駒の距離適性を解き明かす鍵になる。

これまで芝3000m以上のレースに出走したエピファネイア産駒は10頭いて、そのうち4頭(オーソクレース、ディヴァインラヴ、アリストテレス、ブローザホーン)が馬券に絡んでいる。この4頭はいずれもオリオール≒バークレアorアリシドンの組み合わせを持っていた。

反対に馬券にならなかった6頭のうち5頭が上述の組み合わせを持っていなかった。比べてみればその差は歴然なのだ。

エピファネイアの長距離適性をUPさせる秘訣がオリオールにあるとすれば、母父がデュランダルであってもブローザホーンは長距離向きであると結論付けて良いだろう

ハビタットの影響か平坦コースでパフォーマンスを上げる馬でもあり、阪神内回りから京都外回りへの舞台替わりは絶好の感。ここは狙い時と見る。

ディープボンド
キズナの持つアルザオやストームキャットをダンシングブレーヴやマルゼンスキーを使って増幅するキズナ産駒としてはオーソドックスな配合だ。

前走の大敗でいよいよ衰えが囁かれるが、その阪神大賞典は上がり1000mが57秒9。上がりの脚に乏しいディープボンドにとって厳しい展開だった。ちなみに5着だった去年の阪神大賞典の上がり1000mも同じく57秒9だった。

その一方で、天皇賞・春の上がり1000mは往々にして59秒0以上かかる。例年どおりならディープボンドのストライクゾーンにハマる可能性は高い。

大レースでことごとく勝ち切れなかったカコイーシーズやアリダーな感は否めないものの、だとすればここでも2着、3着ならと思ってしまう。ひと雨降ればなお良し。

淀の坂を上手に下るモガミヒメ牝系(ex.リキサンマックス)だし、淀で上がりさえかかればまだ軽視できないはずだ。オッズがもらえるようならラッキーですね。

シュヴァリエローズ
除外対象ではあるが血統的には面白い存在。

ディープインパクトの底力&スタミナを補強するバークレア≒フェアアリシアのニアリークロスがあり、長丁場もこなせそう。しかも母父セーヴルロゼは京都外回り御用達血統カーリアンのライン。

実績こそないが血統構成はハマりそうなことこの上ない。出走できれば是非とも印は回したい。

スマートファントム
2連勝中の上がり馬で同牝系には2010年の天皇賞・春を制したジャガーメイルがいる。

キタサンブラックやステイゴールド系の数多の好走馬と同じく、プリンスリーギフトの血を引くのでその点はプラスだが、父ハービンジャーの文字がネック。同産駒は芝3000m以上で【0-1-1-26】、複勝率7.1%とサッパリ結果が出ていない。

同じダンジグ系でもチーフベアハートのラインは距離をこなしたが(ex.マイネルキッツ)、デインヒルを経由する分距離適性には上限がある印象だ。

渋った芝では【2-1-0-0】なので、ひと雨降ってどこまでやれるか。

ワープスピード
芝の長距離で活躍する異色のドレフォン産駒だが、これは母ディープラヴによるものだろう。姉も菊花賞3着馬だ。

長丁場への適性は証明してきたし広いコースの方が良さそうだが、後は力が足りるかどうか。3列目で印を回すイメージか。

まとめ

月曜時点ではブローザホーン、ディープボンドあたりを重視したい印象。出走できればシュヴァリエローズにもそれなりの印を回したい。キンカメ系2騎ならテーオー重視の方針で。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
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<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。
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