競馬サロン

佐倉京助
472

※弊社記事管理システムの都合上、佐倉京助氏執筆「【5/28 東京11R・2023年日本ダービー】配当の鍵を握るのはスキルヴィング…!?」は2つの記事が掲載されておりますが内容は同じものとなります。
【第218夜-01・2023年日本ダービー】
(※昨日お断りしたように、前日と同じ冒頭文を掲載させていただきます)
UMAJINさんのサイトがリニューアルしましたね!
前よりもスッキリした感じで、見やすくなった印象が。特に僕が気に入ったのが、レースから予想記事を探せるところ。
これだと自分が買おうと思っていたレースの予想をすぐに検索できるんですよね。個人的には、待ってました! という機能。これ絶対便利なヤツ。やっぱり馬券を買う人の身になったシステムって大事ですよね。
あと、これからはレースごとに予想記事を出すようになるとともに、それぞれを有料販売したり無料公開できるようになるのだとか。
有料にするか無料にするかは、各予想家の判断に委ねられるとのこと。
というわけで、僕も一部を有料にしてみることにします! 有料で僕の記事が読まれるのか、ちょっとドキドキしますが、せっかくの転換期ですし、ここはチャレンジしてみよう、と。
最初悩んだのが、僕の長い枕(YES/NOみたいな長い枕じゃなくて冒頭記事のことデス)を有料記事に載せるか無料に載せるか。
僕の予想記事を見てくださっている奇特な方は、あの長ーい枕を毎週楽しみにしてくれている方なんじゃないか? と(え? 断じてそんなことはない??) 「わざわざ有料で見てくれる方」≒「奇特な方々の中でも特に奇特な方」だと思うので、ならば枕は有料のほうに載せるべきではないかと考えたわけです。
ただまあ、枕については自分の好きなことや訴えたいことを書いているわけで、それは多くの方々の目に触れてほしいもの。そう考えたら、無料記事に載せたほうがいいな、という結論にいたりました。
え!? どっちにも長い枕を書けばいいじゃないかって!? え? え? みんなそんなに僕の枕が読みたいのかな??(絶対にそんなことはない!!!!)
というわけで、リニューアル後も引き続きご贔屓いただければ幸甚の極みでございます…!
それでは、予想に参ります。
東京のメインは、日本ダービー(芝2400m)。
皆さん、皐月賞のソールオリエンスは異常に強く見えませんでしたか?
なぜ強く映ったのか? その秘密はラスト3ハロンのラップに隠されています。
皐月賞のラスト3ハロンのラップは、「12秒7=12秒5=12秒0」。最後の2ハロンでラップが加速しています。
一般的に、勝負どころで全力を発揮したあとは各馬余力がないので最後の1、2ハロンはラップが落ちる(減速する)もの。それが落ちずに加速するということは、そのレースや上位馬のレベルが高いことを表します。
まして中山はゴール前に急坂が控えるコース。にもかかわらず、そこで加速するということは、より力がないとできないことです。ましてやGIの大舞台で。
それがいかにすごいことであるかを理解してもらうために、1990年以降の皐月賞でラスト2ハロンのラップが加速していた(減速していなかった)レースの勝ち馬を以下に列挙します。
■1991年 トウカイテイオー
12秒4=12秒3=12秒3
■1993年 ナリタタイシン
11秒9=11秒8=11秒8
■1994年 ナリタブライアン
12秒1=12秒0=12秒0
■1999年 テイエムオペラオー
12秒1=12秒1=11秒8
■2000年 エアシャカール
12秒3=12秒0=12秒0
■2005年 ディープインパクト
11秒8=11秒4=11秒3
■2019年 サートゥルナーリア
11秒7=11秒6=11秒4
わざわざ戦歴を挙げなくても、誰もが名馬だと思える馬ばかり。7頭中、三冠馬が2頭、二冠馬が2頭。GI7勝馬が2頭もいるのですからね。
反対に、“皐月賞一発屋”に終わった馬は含まれていないと言っていい。ナリタタイシンとサートゥルナーリアはその後GIには勝てませんでしたが、それは脚元や体調に問題を抱えていたから。それでも2頭とも古馬GIで2着に来ています。
このように、ラスト2ハロンが加速した皐月賞を制した馬はほぼハズレなく、歴史的な名馬になりうるということなのです。
また、上記7頭のダービーの成績は【3.1.2.1】というもので、極めて高い好走率を示しています。唯一馬券を外したサートゥルナーリアもコンマ1秒差の4着には来ており、また同馬はのちに「なぜか東京は走らない」ことも判明いたしました。
さらに、今年の皐月賞を高く評価できるのは、ラスト1ハロンのラップの“加速度”です。過去の7例のラスト1ハロンのラップの上がり方を見ると、最大でも1999年テイエムオペラオーの「12秒1⇒11秒8」のコンマ3秒加速。7レースのうち4レースはラスト2ハロンは同タイムでありました。
ところが今年の皐月賞は「12秒5⇒12秒0」と、コンマ5秒も加速しているのです。これは強烈な瞬発力と言わざるを得ない。
ソールオリエンスの走りが人々の目に“異常に強く”映ったのは、この尋常ではない加速ラップを目の当たりにしたからです。前を行くタスティエーラが減速していないのに、それを並ぶ間もなく差し切ってしまったのですから。
しかも周知の通り、今年の皐月賞は異例の重馬場で行なわれたうえに、前半1000m通過が58秒5という殺人的なハイペース。普通このペースでレースが流れれば、たとえ後方に位置したからといっても最後は脚色が鈍り、ラップは減速が続く消耗戦になるもの。
にもかかわらず、驚異的な加速ラップを刻みつけたわけです。
このレースがレベルが低いはずがありません。とんでもないレースとしか言いようがありません。
だから皐月賞が終わった直後から、今年のダービーはその1、2着馬の一騎打ちで決まると見ていました。青葉賞のあとはその思いがさらに強まり、それは天皇賞・春の予想記事にも記しています。
大本命・タイトルホルダーに死角あり!? 新潟メインはバットを長く持って…【天皇賞・春、谷川岳S】
https://uma-jin.net/new/salon/salon_detail/12391/0/101
(青葉賞の回顧のあと)
さて、問題は1着のソールオリエンスと2着のタスティエーラのどちらを本命にするか。
「先ほどの7例を見れば、素直にソールオリエンス本命でいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、勝ったソールオリエンスと同じくらい、2着のタスティエーラは強い走りをしていたんですよね。
先述したように、今年の皐月賞は超ハイペースに流れ、逃げ先行馬が壊滅したレース。掲示板はおろか9着にも入れなかったほど。そんな激流のなか、唯一タスティエーラだけが先行しながら2着に粘ったのです。
もうこれだけでも高い評価を与えることができるのに、前記のラップを見れば明白、タスティエーラだって最後まで脚色は鈍っていなかったのです。普通あのペースで先行したら、最後は脚が上がりますよ。
ソールオリエンスが強いのは間違いなく、かりに良馬場で普通のペースに流れたとしても、勝ち負けにはなっていたでしょう。それでも展開や流れが同馬に向いたのは事実で、それが勝ちっぷりに“尾ひれ”をつけた。
一方、タスティエーラはあの“逆境”のなか、強いソールオリエンスのコンマ2秒差に踏ん張ったのです。これが良馬場のスローペースであれば、もしかしたら逆転の目もあったかもしれない。少なくとも、もっと接戦になったことは間違いありません。
また、タスティエーラは父がサトノクラウンであることから中山向きで、しかも重馬場も向いたと世間では思われている様子。けれども僕は、タスティエーラは現時点では東京のほうが合うと思うし、馬場も良馬場のほうがいいと見ている。
それは快勝したデビュー戦や弥生賞を見れば明らかで、この馬の持ち味は“スピード”と“いい脚が長く持続すること”だと思うからです。
東京のCコースは先行有利な馬場になりやすく、良馬場ならなおさら。日曜日に雨が降る確率はかなり低く、今年のダービーはほぼ確実に良馬場で行なわれます。土曜の10R・古馬2勝クラスの葉山特別では芝1600mで1分31秒6の好時計がマークされました。高速決着になることも間違いありません。
出走メンバーを見ても強力な逃げ先行馬は少なく、ハイペースなんてトンでもない、超スローペースまで考えられます。それなら好位から競馬ができるタスティエーラに分があります。
それに、それこそソールオリエンスのほうが中山向きであり、重馬場がドンピシャだった可能性もある。良馬場の東京コースだとパフォーマンスを落とすことも考えられ、そうなればタスティエーラが同馬に先着できるのではないか……。
しかもオッズを見れば、ソールオリエンスは単勝2倍を切る圧倒的人気に推されているのに対し、タスティエーラは驚くことに4番人気に甘んじている。“期待値”を考えても、“万馬券”の看板を鑑みても、ここはタスティエーラを本命にするのが正着なのではないか、と。
だから、ギリギリまでタスティエーラを本命にしようと考えていました。
しかし、ある一頭の馬の存在に気がつき、考えが変わりました。“腹”が決まりました。
それはレーベンスティールという馬です。
同馬は5月14日に東京芝1800mの1勝クラスを勝利したのですが、そのレース内容がすさまじかった。後続を5馬身以上突き放したのみならず、このレースの後半5ハロンのラップは「12秒8=12秒7=11秒6=10秒8=10秒9」とほぼ加速ラップ。そのうえ最後の2ハロンでは10秒台を連発していたのです。
ちょっとこんなラップにはお目にかかったことがない…と思って調べたところ、東京芝1800mでラスト1ハロンが11秒を切ったことは、古馬戦を含めても過去10年でたった2レース。もうひとつの例はバルデスの新馬戦で同じ10秒9だったのですが、こちらは前半1000mが65秒2という超スローペース。また、ラスト2ハロン目は11秒0と、ギリギリではあるものの11秒を切ることはできませんでした。
こんなスーパーラップで圧勝したレーベンスティールは文句なしに力のある馬。その同馬とソールオリエンスは東京の新馬戦で激突し、叩き合いの末にソールオリエンスがクビ差先着していたのです。
この新馬戦も強烈なラップであり、それは「13秒1=12秒4=12秒3=11秒5=11秒0=11秒0」と、実に後半6ハロンで加速していました。
コースは東京でもっとも力比べになりやすい“展開いらず”の芝1800mです。この走りを見れば、ソールオリエンスが良馬場の東京でパフォーマンスを落とすなんてことは、考えられません。叩き合った“ライバル”レーベンスティールが自身の走りでそれを証明してくれたのです。
思い起こせば京成杯だって、「12秒6=12秒4=12秒2=12秒2=11秒7=11秒5」と強烈な加速ラップ。つまりソールオリエンスはデビューから3戦無敗のみならず、すべて加速ラップで勝利していたわけです。
こんな馬、見たことがありません。ディープインパクトですら成し得ていないのですから……。
タスティエーラは大好きな馬で、それこそデビュー前から熱烈に応援していた馬。共同通信杯から3戦連続で◎印を打ち、馬券的にも苦楽をともにした“盟友”です。オッズもつくし、こちらを本命にしたい気持ちは強い。
けれども、ソールオリエンスの一連の記録には、穴党の僕も“降参”しました。それは、“能力至上主義”を根底に抱える僕の予想スタンスの矜持でもあります。
今年の日本ダービーの本命は、5番のソールオリエンスです。
対抗はもちろん、12番のタスティエーラ。不動の対抗とは、まさに同馬のことを指します。
タスティエーラについて、僕自身引っかかったのは、ローテーション。確勝を期して臨んだ共同通信杯は、福永元騎手の“騎乗ミス”により、まさかの4着。優勝はおろか2着賞金すら積めず、陣営は弥生賞に向かわざるを得ませんでした。
その弥生賞は完勝だったものの、レースパフォーマンスは明らかに高くはなかった。中2週での臨戦過程は若駒には厳しかったと言わざるを得ない。
“余計な一戦”を挟みながらも、皐月賞では2着に激走。しかし、あの過酷な馬場・展開では明らかにダメージが残ります。
結果、報道されているように、タスティエーラは堀厩舎が通常使用しているノーザンファームしがらきではなく、ノーザンファーム天栄に放牧に出されました。しがらきは美浦から遠く長距離輸送の疲労が心配されたために、ノーザンサイドの意向で近場の天栄が選ばれたのです。
この話を聞けば、多くの人がタスティエーラを敬遠すると思います。「しがらきに輸送できないほど皐月賞の疲労があるうえに、慣れない天栄では馬もゆっくり休めないのではないか」と。この事実をもって、タスティエーラを軽視する予想家もちらほら見かけます。
しかし、この「タスティエーラの天栄放牧」は、堀厩舎が疎遠な天栄に頭を下げたとか、そんな低次元な話ではありません。これは「今年のノーザンファームはタスティエーラにダービー奪取のすべてを託した」ということなのです。
それを象徴するのが、今回タスティエーラの天栄放牧に際して、これまでしがらきでタスティエーラを世話していた担当者が、わざわざタスティエーラのためだけに天栄入りし、同馬のケアに努めていたことです。僕はそこまでノーザン育成事情に詳しいわけではないものの、これは異例中の異例の措置なのではないでしょうか。
おそらくこの担当者派遣だけでなく、ノーザンファームは総力を挙げて、天栄でのタスティエーラのケアに手を尽くしたはずです。ソールオリエンスは最大のライバルである社台ファームの生産馬。皐月賞3着のファントムシーフも谷川牧場の生産馬でありますし、これら他の牧場の生産馬にダービーの大舞台で負けるわけにはいかないからです。
「堀厩舎と疎遠な天栄ではちゃんとしたケアは受けられないのでは?」などと浅ましいことを考える人もいるかもしれませんが、ノーザンファームにいるようなトップホースマンが大切な生産馬に対して、そんなことをするわけがありません。「異例の天栄入り」は、「ノーザンファーム最高のケアが受けられる」と考えるのが正解だと考えます。
実際、美浦に帰厩後のタスティエーラの様子を見ると、確かに皐月賞の疲れはいくらか感じられるものの、それでも目立った反動は感じられない。調教でもいい時計をマークしていましたし、字面の上では順調そのもの。
先にもさんざん述べたように、皐月賞で見せたパフォーマンスはソールオリエンスにも見劣らないもの。少なくともこの世代では、ソールオリエンス以外に力で負ける馬は見当たりません。
皐月賞で120%の騎乗をしてくれた松山騎手から初騎乗のレーン騎手に替わるのは、確かに嬉しくはない。けれどもそれも、ノーザンサイドの本気度の表れではあるわけです。
ここ最近、ファンの評価が落ちているレーン騎手ですが、だからといって彼の騎乗技術がいきなり低下したはずもない。皐月賞で2着に走ったにもかかわらず4番人気止まりと、思いのほか人気がないのは、この乗り替わりも多分に影響しているのでしょうが、だったらそれは“買いのサイン”ともいえます。「カタカナから買っとけばよかった!」は敗者がよく使うセリフです。
シルシは○印だけど、タスティエーラは“心の本命”。タスティエーラよ、精一杯頑張って! O君、ゴメン!
単穴は18番のサトノグランツを抜擢します。
理由は当然ながら、京都新聞杯の勝利を評価したから。
まず前提として、皐月賞組はソールオリエンスとタスティエーラの2頭が頭ひとつ抜けていて、3着以下はそこまで評価できない。3着から9着までは差し有利の流れに乗じた馬ばかりですから。よって3番手は別路線組から選びたい。
そして今年の京都新聞杯ですが、一見すると1着のサトノグランツはタイム差なしのクビ差の勝利。3着以下もそこまで差がなく、凡戦のように映ります。サトノグランツ自身の走りもじりじりと脚を伸ばしてやっと勝ったように、まったく強く見えません。
ところが後半5ハロンのラップを見てみると、「12秒4=11秒8=11秒3=11秒2=11秒4」と速いラップが並ぶ上、ラスト1ハロンでコンマ2秒減速する以外は、加速ラップにもなっています。
後半5ハロンのタイムは58秒1。京都新聞杯が5月開催の京都芝2200mに落ち着いた2002年以降で、後半5ハロンが59秒を切ったことは、トーホウアランが勝った2006年と今年しかありません。しかもその2006年のタイムは58秒8であり、今年はそれより実にコンマ7秒も速かったのです。また、トーホウアランはダービーでは凡走したものの、のちに京都大賞典など重賞2勝を加える活躍を遂げました。
また別の角度から、距離2000mを超える3歳重賞で、後半5ハロンのタイムが58秒5以内だったレースを調べると、近5年では6レース。そのうち3レースはGIレース(スターズオンアースのオークス、シャフリヤールおよびコントレイルのダービー)で、残る2つはサートゥルナーリアが勝った神戸新聞杯とオーソリティ優勝の青葉賞。錚々たるメンバーというほかありません。
これらを見ればご理解いただけると思いますが、地味に映った今年の京都新聞杯は、実は“隠れハイレベルレース”だったのです。
しかもこの加速気味の速いラップをサトノグランツは中団から差し切りました。前を行く馬も脚はほとんど止まっていないわけで、それをねじ伏せるようにして先着した走りは、見た目をはるかに上回る強い走りだったと言うことができます。
また、ラップ云々の前に、京都新聞杯はダービートライアルである青葉賞よりも、ダービーとの関連度は高い。それは京都新聞杯組が過去10年で【2.1.0.19】と2頭の勝ち馬と1頭の2着馬を輩出しているのに対し、青葉賞組は【0.0.3.20】と3着馬しか出せていない事実からも明らかです。
中3週の青葉賞組より、中2週の京都新聞杯組のほうが優勢なのは、ひとつは京都新聞杯組の出走馬のほとんどが関西馬で地元競馬であること。もうひとつは東京芝2400mに比べれば、京都芝2200mのほうがまだ軽いコース設定だから。つまり青葉賞組より消耗度が少ないのです。
皐月賞組は中5週と字面の数字では有利ではあるものの、各馬が全力をぶつけ合うGIであるうえに、今年は極悪馬場で行なわれたのですから例年以上に消耗したはず。その点では、軽いメンバー相手の京都新聞杯組はかなり有利なのではないか。
それと、大外の18番枠は世間は悲観的にとらえているようですが、僕はまったく逆で、これは歓迎すべき枠だと。
まず、内枠有利が“定説”と言われるダービーですが、ここ2年のレースを見る限り、そこまで内有利にはなっていません。JRAも馬場の造りを変えてきたフシがあります。
もうひとつ、サトノグランツは多頭数競馬の経験がそこまで多くないこと。ここ2戦はどちらも12頭立てで激しく揉まれるような場面はありませんでした。こういった馬は多頭数で揉まれると力を発揮できない危険があるのですが、この枠ならそのリスクも低下します。
さらにサトノグランツの川田騎手も関東圏では内枠より外枠のほうがいい印象があります。実際、過去5年、東京の芝重賞について調べてみると、1、2枠ではなんとゼロ勝。内目の1-4枠は勝率6.7%、連対率20.0%に対し、外目の5-8枠は勝率12.5%、連対率34.4%で、外枠のほうが勝ち負けに加わってくるのです。
川田騎手は慣れない関東圏で内枠を引くと、なぜか不利を受けたり、追う格好がバラバラになるケースが見受けられる。リバティアイランドが唯一取りこぼしたアルテミスSも3枠3番と内枠でした。彼を関東圏で買うなら外枠のほうが安心できるのです。
このような理由から、枠順発表でサトノグランツが大外枠に入ったとき、僕は思わずガッツポーズしてしまいました。「これで人気がガタ落ちする!」と。
実際、事前の予測オッズでは5番人気が予想されていたものの、この枠の“おかげ”で前日段階では8番人気に甘んじています。これは絶好の大チャンス。手掛けるのは、東京芝2400mの鬼・友道調教師。昨年のダービーに勝ち、今年のオークスでもハーパーを2着に走らせました。師の手腕に期待です。
☆印は7番のフリームファクシ。以前はそこまで買っていなかった馬なのですが、きさらぎ賞の記録を改めて調べたところ、評価が一変しました。
勝ち時計の1分59秒7というタイムは3歳春の若駒としては相当優秀だし、後半5ハロンのタイム58秒5も出色。3歳春までの芝2000mの重賞で後半5ハロンが59秒を切ったレースは、過去5年でわずか3例しかなく、そのうち2月の早い時期のレースはフリームファクシのきさらぎ賞だけだったのです。(残りの2レースはいずれも4月のフローラS)
皐月賞は9着に敗れたものの、陣営のコメントによれば道悪はまったく向かないとのこと。良馬場に替われば、きさらぎ賞の走りを再現できる可能性がある。鞍上も吉田隼騎手に替わって、この枠から先行してくれれば、一発大駆けもあるかもしれません。
注印には6番のショウナンバシット。皐月賞で後方から脚を伸ばした組の中では、この馬の走りがもっとも見どころがありました。
まず道中は馬場のいい外目を回した差し勢とは異なり、ショウナンバシットは状態の悪い内々を通っています。4角手前で押し上げてきたときも荒れたインを通っており、ここまでの消耗度は他の差し馬よりもかなり大きかったはずです。
それでいて、状態がマシな外目を通った3着ファントムシーフと4着メタルスピードにはコンマ2秒差に走っており、6着シャザーンにはアタマ差先着したわけです。
こう見ればショウナンバシットのパフォーマンスのほうが上だと思うのに、人気はこの4頭の中でもっとも下の13番人気。だったらこの馬を重視しないわけにはいきません。配当跳ね上げという点ではもっとも期待がかかる馬であります。
反対の意味で配当アップに“貢献”してくれそうなのが、2番のスキルヴィング。僕の評価が極めて低い馬であり、2番人気の同馬が馬券から消えてくれれば、それなりに配当は上がるはずですから。
青葉賞組がダービーに勝てないのは周知の事実。しかも以前はウインバリアシオンやフェノーメノなどが2着に来ていたのに、ここ10年は3着止まりと、“悲願”はむしろ遠ざかっている。
これは明快な理由があり、近年の芝の大レースは消耗度の少ない馬が活躍するようになっているから。タフな東京芝2400mを中3週で連続好走させるのは、現代競馬では“無理筋”なのです。
そのうえ、近10年の好走馬3頭は青葉賞で4コーナーを4番手以内で通過していました。ダービーは1800mでも先行できるようなスピードを持った上質馬が集うレース。2400mのトライアルでも先行できないようなスピードに欠ける馬が勝ち負けできる舞台ではないのです。
スキルヴィングの青葉賞4角通過順位は11番手。それ以前のレースを見てもすべて後方追走でスピードの欠片もありません。
それに今年の青葉賞は掲示板すべてを差し追い込み馬が独占した一戦。展開に恵まれた勝利だったのは明白で、3着には11番人気のティムールが入線したくらい。同馬は土曜日の1勝クラスも勝てなかった馬ですよ。
スキルヴィングがダービーで勝つというのなら、このティムールが5、6着に来てもおかしくないはず。そんなこと、ありえないですよね。というわけで、スキルヴィングは飛び希望の連下△です。
そのほかのシルシや序列は以下に記しました。買い目と一緒に発表します。
〈東京11R・2023年日本ダービー予想〉
◎5 ソールオリエンス
○12 タスティエーラ
▲18 サトノグランツ
☆7 フリームファクシ
注6 ショウナンバシット
△1 ベラジオオペラ
△13 シーズンリッチ
△14 ファントムシーフ
△2 スキルヴィング
△9 グリューネグリーン
【馬単ウラオモテ】5⇔7、12、18(6点)
【馬単1着流し】5⇒1、6、13、14(4点)
【馬単ウラオモテ】12⇔6、7、18(6点)
【3連単フォーメ】5、12⇒5、7、12、18⇒1、2、5、6、7、9、12、13、14、18(48点)
連下の最後にはシンガリ人気の9番グリューネグリーンを忍ばせてみました。いや、皐月賞を見ると、直線でけっこう頑張っていたように映ったものでして…。これが万一3着にでも入ったら、ソールオリエンスが勝っても配当爆上がりするんですが、さすがに無理かな。大汗
買い目は本命ソールオリエンスと対抗タスティエーラのダブル本命の格好。基本的にはこの2頭の一騎打ちと見ているので、馬券の大本線は5⇔12の馬単ウラオモテになります。
予想屋としてはソールオリエンスに勝ってほしく、一個人としてはタスティエーラに勝ってほしい。この2頭の1着同着が理想なんですけど、それも無理な相談ですね。
これまでの競馬人生の中で、もっともドキドキしながら迎えるダービー。自分なりの大勝負をするつもりです。
それでは、無敵の現状維持を突破せよ!
2023/05/28 03:04
【5/28 東京11R・2023年日本ダービー】配当の鍵を握るのはスキルヴィング…!?


※弊社記事管理システムの都合上、佐倉京助氏執筆「【5/28 東京11R・2023年日本ダービー】配当の鍵を握るのはスキルヴィング…!?」は2つの記事が掲載されておりますが内容は同じものとなります。
【第218夜-01・2023年日本ダービー】
(※昨日お断りしたように、前日と同じ冒頭文を掲載させていただきます)
UMAJINさんのサイトがリニューアルしましたね!
前よりもスッキリした感じで、見やすくなった印象が。特に僕が気に入ったのが、レースから予想記事を探せるところ。
これだと自分が買おうと思っていたレースの予想をすぐに検索できるんですよね。個人的には、待ってました! という機能。これ絶対便利なヤツ。やっぱり馬券を買う人の身になったシステムって大事ですよね。
あと、これからはレースごとに予想記事を出すようになるとともに、それぞれを有料販売したり無料公開できるようになるのだとか。
有料にするか無料にするかは、各予想家の判断に委ねられるとのこと。
というわけで、僕も一部を有料にしてみることにします! 有料で僕の記事が読まれるのか、ちょっとドキドキしますが、せっかくの転換期ですし、ここはチャレンジしてみよう、と。
最初悩んだのが、僕の長い枕(YES/NOみたいな長い枕じゃなくて冒頭記事のことデス)を有料記事に載せるか無料に載せるか。
僕の予想記事を見てくださっている奇特な方は、あの長ーい枕を毎週楽しみにしてくれている方なんじゃないか? と(え? 断じてそんなことはない??) 「わざわざ有料で見てくれる方」≒「奇特な方々の中でも特に奇特な方」だと思うので、ならば枕は有料のほうに載せるべきではないかと考えたわけです。
ただまあ、枕については自分の好きなことや訴えたいことを書いているわけで、それは多くの方々の目に触れてほしいもの。そう考えたら、無料記事に載せたほうがいいな、という結論にいたりました。
え!? どっちにも長い枕を書けばいいじゃないかって!? え? え? みんなそんなに僕の枕が読みたいのかな??(絶対にそんなことはない!!!!)
というわけで、リニューアル後も引き続きご贔屓いただければ幸甚の極みでございます…!
それでは、予想に参ります。
東京のメインは、日本ダービー(芝2400m)。
皆さん、皐月賞のソールオリエンスは異常に強く見えませんでしたか?
なぜ強く映ったのか? その秘密はラスト3ハロンのラップに隠されています。
皐月賞のラスト3ハロンのラップは、「12秒7=12秒5=12秒0」。最後の2ハロンでラップが加速しています。
一般的に、勝負どころで全力を発揮したあとは各馬余力がないので最後の1、2ハロンはラップが落ちる(減速する)もの。それが落ちずに加速するということは、そのレースや上位馬のレベルが高いことを表します。
まして中山はゴール前に急坂が控えるコース。にもかかわらず、そこで加速するということは、より力がないとできないことです。ましてやGIの大舞台で。
それがいかにすごいことであるかを理解してもらうために、1990年以降の皐月賞でラスト2ハロンのラップが加速していた(減速していなかった)レースの勝ち馬を以下に列挙します。
■1991年 トウカイテイオー
12秒4=12秒3=12秒3
■1993年 ナリタタイシン
11秒9=11秒8=11秒8
■1994年 ナリタブライアン
12秒1=12秒0=12秒0
■1999年 テイエムオペラオー
12秒1=12秒1=11秒8
■2000年 エアシャカール
12秒3=12秒0=12秒0
■2005年 ディープインパクト
11秒8=11秒4=11秒3
■2019年 サートゥルナーリア
11秒7=11秒6=11秒4
わざわざ戦歴を挙げなくても、誰もが名馬だと思える馬ばかり。7頭中、三冠馬が2頭、二冠馬が2頭。GI7勝馬が2頭もいるのですからね。
反対に、“皐月賞一発屋”に終わった馬は含まれていないと言っていい。ナリタタイシンとサートゥルナーリアはその後GIには勝てませんでしたが、それは脚元や体調に問題を抱えていたから。それでも2頭とも古馬GIで2着に来ています。
このように、ラスト2ハロンが加速した皐月賞を制した馬はほぼハズレなく、歴史的な名馬になりうるということなのです。
また、上記7頭のダービーの成績は【3.1.2.1】というもので、極めて高い好走率を示しています。唯一馬券を外したサートゥルナーリアもコンマ1秒差の4着には来ており、また同馬はのちに「なぜか東京は走らない」ことも判明いたしました。
さらに、今年の皐月賞を高く評価できるのは、ラスト1ハロンのラップの“加速度”です。過去の7例のラスト1ハロンのラップの上がり方を見ると、最大でも1999年テイエムオペラオーの「12秒1⇒11秒8」のコンマ3秒加速。7レースのうち4レースはラスト2ハロンは同タイムでありました。
ところが今年の皐月賞は「12秒5⇒12秒0」と、コンマ5秒も加速しているのです。これは強烈な瞬発力と言わざるを得ない。
ソールオリエンスの走りが人々の目に“異常に強く”映ったのは、この尋常ではない加速ラップを目の当たりにしたからです。前を行くタスティエーラが減速していないのに、それを並ぶ間もなく差し切ってしまったのですから。
しかも周知の通り、今年の皐月賞は異例の重馬場で行なわれたうえに、前半1000m通過が58秒5という殺人的なハイペース。普通このペースでレースが流れれば、たとえ後方に位置したからといっても最後は脚色が鈍り、ラップは減速が続く消耗戦になるもの。
にもかかわらず、驚異的な加速ラップを刻みつけたわけです。
このレースがレベルが低いはずがありません。とんでもないレースとしか言いようがありません。
だから皐月賞が終わった直後から、今年のダービーはその1、2着馬の一騎打ちで決まると見ていました。青葉賞のあとはその思いがさらに強まり、それは天皇賞・春の予想記事にも記しています。
大本命・タイトルホルダーに死角あり!? 新潟メインはバットを長く持って…【天皇賞・春、谷川岳S】
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(青葉賞の回顧のあと)
さて、問題は1着のソールオリエンスと2着のタスティエーラのどちらを本命にするか。
「先ほどの7例を見れば、素直にソールオリエンス本命でいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、勝ったソールオリエンスと同じくらい、2着のタスティエーラは強い走りをしていたんですよね。
先述したように、今年の皐月賞は超ハイペースに流れ、逃げ先行馬が壊滅したレース。掲示板はおろか9着にも入れなかったほど。そんな激流のなか、唯一タスティエーラだけが先行しながら2着に粘ったのです。
もうこれだけでも高い評価を与えることができるのに、前記のラップを見れば明白、タスティエーラだって最後まで脚色は鈍っていなかったのです。普通あのペースで先行したら、最後は脚が上がりますよ。
ソールオリエンスが強いのは間違いなく、かりに良馬場で普通のペースに流れたとしても、勝ち負けにはなっていたでしょう。それでも展開や流れが同馬に向いたのは事実で、それが勝ちっぷりに“尾ひれ”をつけた。
一方、タスティエーラはあの“逆境”のなか、強いソールオリエンスのコンマ2秒差に踏ん張ったのです。これが良馬場のスローペースであれば、もしかしたら逆転の目もあったかもしれない。少なくとも、もっと接戦になったことは間違いありません。
また、タスティエーラは父がサトノクラウンであることから中山向きで、しかも重馬場も向いたと世間では思われている様子。けれども僕は、タスティエーラは現時点では東京のほうが合うと思うし、馬場も良馬場のほうがいいと見ている。
それは快勝したデビュー戦や弥生賞を見れば明らかで、この馬の持ち味は“スピード”と“いい脚が長く持続すること”だと思うからです。
東京のCコースは先行有利な馬場になりやすく、良馬場ならなおさら。日曜日に雨が降る確率はかなり低く、今年のダービーはほぼ確実に良馬場で行なわれます。土曜の10R・古馬2勝クラスの葉山特別では芝1600mで1分31秒6の好時計がマークされました。高速決着になることも間違いありません。
出走メンバーを見ても強力な逃げ先行馬は少なく、ハイペースなんてトンでもない、超スローペースまで考えられます。それなら好位から競馬ができるタスティエーラに分があります。
それに、それこそソールオリエンスのほうが中山向きであり、重馬場がドンピシャだった可能性もある。良馬場の東京コースだとパフォーマンスを落とすことも考えられ、そうなればタスティエーラが同馬に先着できるのではないか……。
しかもオッズを見れば、ソールオリエンスは単勝2倍を切る圧倒的人気に推されているのに対し、タスティエーラは驚くことに4番人気に甘んじている。“期待値”を考えても、“万馬券”の看板を鑑みても、ここはタスティエーラを本命にするのが正着なのではないか、と。
だから、ギリギリまでタスティエーラを本命にしようと考えていました。
しかし、ある一頭の馬の存在に気がつき、考えが変わりました。“腹”が決まりました。
それはレーベンスティールという馬です。
同馬は5月14日に東京芝1800mの1勝クラスを勝利したのですが、そのレース内容がすさまじかった。後続を5馬身以上突き放したのみならず、このレースの後半5ハロンのラップは「12秒8=12秒7=11秒6=10秒8=10秒9」とほぼ加速ラップ。そのうえ最後の2ハロンでは10秒台を連発していたのです。
ちょっとこんなラップにはお目にかかったことがない…と思って調べたところ、東京芝1800mでラスト1ハロンが11秒を切ったことは、古馬戦を含めても過去10年でたった2レース。もうひとつの例はバルデスの新馬戦で同じ10秒9だったのですが、こちらは前半1000mが65秒2という超スローペース。また、ラスト2ハロン目は11秒0と、ギリギリではあるものの11秒を切ることはできませんでした。
こんなスーパーラップで圧勝したレーベンスティールは文句なしに力のある馬。その同馬とソールオリエンスは東京の新馬戦で激突し、叩き合いの末にソールオリエンスがクビ差先着していたのです。
この新馬戦も強烈なラップであり、それは「13秒1=12秒4=12秒3=11秒5=11秒0=11秒0」と、実に後半6ハロンで加速していました。
コースは東京でもっとも力比べになりやすい“展開いらず”の芝1800mです。この走りを見れば、ソールオリエンスが良馬場の東京でパフォーマンスを落とすなんてことは、考えられません。叩き合った“ライバル”レーベンスティールが自身の走りでそれを証明してくれたのです。
思い起こせば京成杯だって、「12秒6=12秒4=12秒2=12秒2=11秒7=11秒5」と強烈な加速ラップ。つまりソールオリエンスはデビューから3戦無敗のみならず、すべて加速ラップで勝利していたわけです。
こんな馬、見たことがありません。ディープインパクトですら成し得ていないのですから……。
タスティエーラは大好きな馬で、それこそデビュー前から熱烈に応援していた馬。共同通信杯から3戦連続で◎印を打ち、馬券的にも苦楽をともにした“盟友”です。オッズもつくし、こちらを本命にしたい気持ちは強い。
けれども、ソールオリエンスの一連の記録には、穴党の僕も“降参”しました。それは、“能力至上主義”を根底に抱える僕の予想スタンスの矜持でもあります。
今年の日本ダービーの本命は、5番のソールオリエンスです。
対抗はもちろん、12番のタスティエーラ。不動の対抗とは、まさに同馬のことを指します。
タスティエーラについて、僕自身引っかかったのは、ローテーション。確勝を期して臨んだ共同通信杯は、福永元騎手の“騎乗ミス”により、まさかの4着。優勝はおろか2着賞金すら積めず、陣営は弥生賞に向かわざるを得ませんでした。
その弥生賞は完勝だったものの、レースパフォーマンスは明らかに高くはなかった。中2週での臨戦過程は若駒には厳しかったと言わざるを得ない。
“余計な一戦”を挟みながらも、皐月賞では2着に激走。しかし、あの過酷な馬場・展開では明らかにダメージが残ります。
結果、報道されているように、タスティエーラは堀厩舎が通常使用しているノーザンファームしがらきではなく、ノーザンファーム天栄に放牧に出されました。しがらきは美浦から遠く長距離輸送の疲労が心配されたために、ノーザンサイドの意向で近場の天栄が選ばれたのです。
この話を聞けば、多くの人がタスティエーラを敬遠すると思います。「しがらきに輸送できないほど皐月賞の疲労があるうえに、慣れない天栄では馬もゆっくり休めないのではないか」と。この事実をもって、タスティエーラを軽視する予想家もちらほら見かけます。
しかし、この「タスティエーラの天栄放牧」は、堀厩舎が疎遠な天栄に頭を下げたとか、そんな低次元な話ではありません。これは「今年のノーザンファームはタスティエーラにダービー奪取のすべてを託した」ということなのです。
それを象徴するのが、今回タスティエーラの天栄放牧に際して、これまでしがらきでタスティエーラを世話していた担当者が、わざわざタスティエーラのためだけに天栄入りし、同馬のケアに努めていたことです。僕はそこまでノーザン育成事情に詳しいわけではないものの、これは異例中の異例の措置なのではないでしょうか。
おそらくこの担当者派遣だけでなく、ノーザンファームは総力を挙げて、天栄でのタスティエーラのケアに手を尽くしたはずです。ソールオリエンスは最大のライバルである社台ファームの生産馬。皐月賞3着のファントムシーフも谷川牧場の生産馬でありますし、これら他の牧場の生産馬にダービーの大舞台で負けるわけにはいかないからです。
「堀厩舎と疎遠な天栄ではちゃんとしたケアは受けられないのでは?」などと浅ましいことを考える人もいるかもしれませんが、ノーザンファームにいるようなトップホースマンが大切な生産馬に対して、そんなことをするわけがありません。「異例の天栄入り」は、「ノーザンファーム最高のケアが受けられる」と考えるのが正解だと考えます。
実際、美浦に帰厩後のタスティエーラの様子を見ると、確かに皐月賞の疲れはいくらか感じられるものの、それでも目立った反動は感じられない。調教でもいい時計をマークしていましたし、字面の上では順調そのもの。
先にもさんざん述べたように、皐月賞で見せたパフォーマンスはソールオリエンスにも見劣らないもの。少なくともこの世代では、ソールオリエンス以外に力で負ける馬は見当たりません。
皐月賞で120%の騎乗をしてくれた松山騎手から初騎乗のレーン騎手に替わるのは、確かに嬉しくはない。けれどもそれも、ノーザンサイドの本気度の表れではあるわけです。
ここ最近、ファンの評価が落ちているレーン騎手ですが、だからといって彼の騎乗技術がいきなり低下したはずもない。皐月賞で2着に走ったにもかかわらず4番人気止まりと、思いのほか人気がないのは、この乗り替わりも多分に影響しているのでしょうが、だったらそれは“買いのサイン”ともいえます。「カタカナから買っとけばよかった!」は敗者がよく使うセリフです。
シルシは○印だけど、タスティエーラは“心の本命”。タスティエーラよ、精一杯頑張って! O君、ゴメン!
単穴は18番のサトノグランツを抜擢します。
理由は当然ながら、京都新聞杯の勝利を評価したから。
まず前提として、皐月賞組はソールオリエンスとタスティエーラの2頭が頭ひとつ抜けていて、3着以下はそこまで評価できない。3着から9着までは差し有利の流れに乗じた馬ばかりですから。よって3番手は別路線組から選びたい。
そして今年の京都新聞杯ですが、一見すると1着のサトノグランツはタイム差なしのクビ差の勝利。3着以下もそこまで差がなく、凡戦のように映ります。サトノグランツ自身の走りもじりじりと脚を伸ばしてやっと勝ったように、まったく強く見えません。
ところが後半5ハロンのラップを見てみると、「12秒4=11秒8=11秒3=11秒2=11秒4」と速いラップが並ぶ上、ラスト1ハロンでコンマ2秒減速する以外は、加速ラップにもなっています。
後半5ハロンのタイムは58秒1。京都新聞杯が5月開催の京都芝2200mに落ち着いた2002年以降で、後半5ハロンが59秒を切ったことは、トーホウアランが勝った2006年と今年しかありません。しかもその2006年のタイムは58秒8であり、今年はそれより実にコンマ7秒も速かったのです。また、トーホウアランはダービーでは凡走したものの、のちに京都大賞典など重賞2勝を加える活躍を遂げました。
また別の角度から、距離2000mを超える3歳重賞で、後半5ハロンのタイムが58秒5以内だったレースを調べると、近5年では6レース。そのうち3レースはGIレース(スターズオンアースのオークス、シャフリヤールおよびコントレイルのダービー)で、残る2つはサートゥルナーリアが勝った神戸新聞杯とオーソリティ優勝の青葉賞。錚々たるメンバーというほかありません。
これらを見ればご理解いただけると思いますが、地味に映った今年の京都新聞杯は、実は“隠れハイレベルレース”だったのです。
しかもこの加速気味の速いラップをサトノグランツは中団から差し切りました。前を行く馬も脚はほとんど止まっていないわけで、それをねじ伏せるようにして先着した走りは、見た目をはるかに上回る強い走りだったと言うことができます。
また、ラップ云々の前に、京都新聞杯はダービートライアルである青葉賞よりも、ダービーとの関連度は高い。それは京都新聞杯組が過去10年で【2.1.0.19】と2頭の勝ち馬と1頭の2着馬を輩出しているのに対し、青葉賞組は【0.0.3.20】と3着馬しか出せていない事実からも明らかです。
中3週の青葉賞組より、中2週の京都新聞杯組のほうが優勢なのは、ひとつは京都新聞杯組の出走馬のほとんどが関西馬で地元競馬であること。もうひとつは東京芝2400mに比べれば、京都芝2200mのほうがまだ軽いコース設定だから。つまり青葉賞組より消耗度が少ないのです。
皐月賞組は中5週と字面の数字では有利ではあるものの、各馬が全力をぶつけ合うGIであるうえに、今年は極悪馬場で行なわれたのですから例年以上に消耗したはず。その点では、軽いメンバー相手の京都新聞杯組はかなり有利なのではないか。
それと、大外の18番枠は世間は悲観的にとらえているようですが、僕はまったく逆で、これは歓迎すべき枠だと。
まず、内枠有利が“定説”と言われるダービーですが、ここ2年のレースを見る限り、そこまで内有利にはなっていません。JRAも馬場の造りを変えてきたフシがあります。
もうひとつ、サトノグランツは多頭数競馬の経験がそこまで多くないこと。ここ2戦はどちらも12頭立てで激しく揉まれるような場面はありませんでした。こういった馬は多頭数で揉まれると力を発揮できない危険があるのですが、この枠ならそのリスクも低下します。
さらにサトノグランツの川田騎手も関東圏では内枠より外枠のほうがいい印象があります。実際、過去5年、東京の芝重賞について調べてみると、1、2枠ではなんとゼロ勝。内目の1-4枠は勝率6.7%、連対率20.0%に対し、外目の5-8枠は勝率12.5%、連対率34.4%で、外枠のほうが勝ち負けに加わってくるのです。
川田騎手は慣れない関東圏で内枠を引くと、なぜか不利を受けたり、追う格好がバラバラになるケースが見受けられる。リバティアイランドが唯一取りこぼしたアルテミスSも3枠3番と内枠でした。彼を関東圏で買うなら外枠のほうが安心できるのです。
このような理由から、枠順発表でサトノグランツが大外枠に入ったとき、僕は思わずガッツポーズしてしまいました。「これで人気がガタ落ちする!」と。
実際、事前の予測オッズでは5番人気が予想されていたものの、この枠の“おかげ”で前日段階では8番人気に甘んじています。これは絶好の大チャンス。手掛けるのは、東京芝2400mの鬼・友道調教師。昨年のダービーに勝ち、今年のオークスでもハーパーを2着に走らせました。師の手腕に期待です。
☆印は7番のフリームファクシ。以前はそこまで買っていなかった馬なのですが、きさらぎ賞の記録を改めて調べたところ、評価が一変しました。
勝ち時計の1分59秒7というタイムは3歳春の若駒としては相当優秀だし、後半5ハロンのタイム58秒5も出色。3歳春までの芝2000mの重賞で後半5ハロンが59秒を切ったレースは、過去5年でわずか3例しかなく、そのうち2月の早い時期のレースはフリームファクシのきさらぎ賞だけだったのです。(残りの2レースはいずれも4月のフローラS)
皐月賞は9着に敗れたものの、陣営のコメントによれば道悪はまったく向かないとのこと。良馬場に替われば、きさらぎ賞の走りを再現できる可能性がある。鞍上も吉田隼騎手に替わって、この枠から先行してくれれば、一発大駆けもあるかもしれません。
注印には6番のショウナンバシット。皐月賞で後方から脚を伸ばした組の中では、この馬の走りがもっとも見どころがありました。
まず道中は馬場のいい外目を回した差し勢とは異なり、ショウナンバシットは状態の悪い内々を通っています。4角手前で押し上げてきたときも荒れたインを通っており、ここまでの消耗度は他の差し馬よりもかなり大きかったはずです。
それでいて、状態がマシな外目を通った3着ファントムシーフと4着メタルスピードにはコンマ2秒差に走っており、6着シャザーンにはアタマ差先着したわけです。
こう見ればショウナンバシットのパフォーマンスのほうが上だと思うのに、人気はこの4頭の中でもっとも下の13番人気。だったらこの馬を重視しないわけにはいきません。配当跳ね上げという点ではもっとも期待がかかる馬であります。
反対の意味で配当アップに“貢献”してくれそうなのが、2番のスキルヴィング。僕の評価が極めて低い馬であり、2番人気の同馬が馬券から消えてくれれば、それなりに配当は上がるはずですから。
青葉賞組がダービーに勝てないのは周知の事実。しかも以前はウインバリアシオンやフェノーメノなどが2着に来ていたのに、ここ10年は3着止まりと、“悲願”はむしろ遠ざかっている。
これは明快な理由があり、近年の芝の大レースは消耗度の少ない馬が活躍するようになっているから。タフな東京芝2400mを中3週で連続好走させるのは、現代競馬では“無理筋”なのです。
そのうえ、近10年の好走馬3頭は青葉賞で4コーナーを4番手以内で通過していました。ダービーは1800mでも先行できるようなスピードを持った上質馬が集うレース。2400mのトライアルでも先行できないようなスピードに欠ける馬が勝ち負けできる舞台ではないのです。
スキルヴィングの青葉賞4角通過順位は11番手。それ以前のレースを見てもすべて後方追走でスピードの欠片もありません。
それに今年の青葉賞は掲示板すべてを差し追い込み馬が独占した一戦。展開に恵まれた勝利だったのは明白で、3着には11番人気のティムールが入線したくらい。同馬は土曜日の1勝クラスも勝てなかった馬ですよ。
スキルヴィングがダービーで勝つというのなら、このティムールが5、6着に来てもおかしくないはず。そんなこと、ありえないですよね。というわけで、スキルヴィングは飛び希望の連下△です。
そのほかのシルシや序列は以下に記しました。買い目と一緒に発表します。
〈東京11R・2023年日本ダービー予想〉
◎5 ソールオリエンス
○12 タスティエーラ
▲18 サトノグランツ
☆7 フリームファクシ
注6 ショウナンバシット
△1 ベラジオオペラ
△13 シーズンリッチ
△14 ファントムシーフ
△2 スキルヴィング
△9 グリューネグリーン
【馬単ウラオモテ】5⇔7、12、18(6点)
【馬単1着流し】5⇒1、6、13、14(4点)
【馬単ウラオモテ】12⇔6、7、18(6点)
【3連単フォーメ】5、12⇒5、7、12、18⇒1、2、5、6、7、9、12、13、14、18(48点)
連下の最後にはシンガリ人気の9番グリューネグリーンを忍ばせてみました。いや、皐月賞を見ると、直線でけっこう頑張っていたように映ったものでして…。これが万一3着にでも入ったら、ソールオリエンスが勝っても配当爆上がりするんですが、さすがに無理かな。大汗
買い目は本命ソールオリエンスと対抗タスティエーラのダブル本命の格好。基本的にはこの2頭の一騎打ちと見ているので、馬券の大本線は5⇔12の馬単ウラオモテになります。
予想屋としてはソールオリエンスに勝ってほしく、一個人としてはタスティエーラに勝ってほしい。この2頭の1着同着が理想なんですけど、それも無理な相談ですね。
これまでの競馬人生の中で、もっともドキドキしながら迎えるダービー。自分なりの大勝負をするつもりです。
それでは、無敵の現状維持を突破せよ!
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