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2018年08月12日(日)
ジャックルマロワ賞(GI)芝1600m
- 【レース格】★★★★
- 【総賞金】70万ユーロ
- 【開催競馬場】ドーヴィル
- 【勝馬】アルファセントーリ
- 【騎手】C.オドノヒュー
- 【トレーナー】J.ハリントン夫人
見解
【結果詳報】
現地時間8月12日、フランスのドーヴィル競馬場で行われた直線芝1600mのGI・ジャックルマロワ賞は、1番人気に支持されたコルム・オドノヒュー騎手騎乗のアルファセントーリ(Alpha Centauri)が先団から抜け出して優勝。愛1000ギニーから続くG1連勝記録を4に伸ばした。
日本からの出走馬はいなかったものの、国内でも馬券発売が行われた今年のジャックルマロワ賞。馬場状態は、週の半ばに降った雨の影響によって稍重になった。人気は3歳勢に集中したが、中でも抜けた人気になったのがGI戦3連勝中のアルファセントーリ。同じ3歳牝馬で前走のロートシルト賞を勝ったウィズユー(With You)が2番人気、以下、ジャンプラ賞の1、2着馬インテロジャント(Intellogent)とカスカディアン(Cascadian)が、4番人気、3番人気で続いた。
レースは、スタートでアクシデンタルエージェント(Accidental Agent)やザラメア(Zalamea)が1馬身ほど出遅れ。そのほかの各馬に大きな遅れはなく、サクセスデイズ(Success Days)が馬場の中ほどを、ウィズユーが外ラチ沿いを通ってレースを引っ張る。
サクセスデイズを先頭とする4頭の集団とウィズユーを先頭とする7頭の集団は、それぞれがほぼ一列のままで、終盤まで動きを見せない。しかし、残り600mを切るとウィズユーの真後ろにいたアルファセントーリが馬場の内へ。楽な手応えのままウィズユーをかわすと、そのまま一気に先頭に躍り出る。そして、これを追うように後続もスパートを開始。各馬が横に広がっての追い比べとなり、アルファセントーリの直後に控えていたレコレトス(Recoletos)やローマナイズド(Romanised)が脚を伸ばす。それでも、こうした追い込み勢をよそにアルファセントーリはリードを拡大。2番手に上がったレコレトスが懸命に前を追ったものの、最後までこれを寄せ付けず、最後は2馬身半の差をつけてゴールした。
2着はレコレトスで、そこから3馬身半離れた3着争いは、外ラチ沿いで粘ったウィズユーと内から追い込んだヌールアルアワの争いになったが、ウィズユーが凌いで3着を確保。そのほかの上位人気馬ではカスカディアンが8着、インテロジャントが6着に敗れた。
勝ったアルファセントーリは、父Mastercraftsman、母Alpha Lupi(母の父Rahy)という血統の3歳牝馬。今シーズンは、不良馬場で行われた初戦の愛1000ギニートライアルこそ10着に敗れたものの、続く愛1000ギニ?を制してG1初制覇を成し遂げると、その後もコロネーションS、ファルマスSと牝馬限定のマイルGI戦を3連勝してここに臨んでいた。通算成績は9戦6勝。
【展望】
現地時間8月12日(日本時間同日深夜)、フランスのドーヴィル競馬場では直線芝1600mのGI・ジャックルマロワ賞が行われる。
1920年に死去したドーヴィル競馬協会の会長ジャック・ル・マロワ氏の名を冠したレースとして、1921年に創設されたジャックルマロワ賞。当時は3歳限定の競走だったが、1952年に古馬にも門戸が開かれた。GIの格付けを得たのは1971年になってからだが、ヨーロッパのマイル路線ではイギリスのクイーンアンSやサセックスS、クイーンエリザベス2世Sと並ぶ最高峰のレースとして位置付けられている。
長い歴史を振り返ると、その勝ち馬には名牝ミエスクやその娘イーストオブザムーン、スピニングワールド、ドバイミレニアム、ゴルディコヴァといったマイルのチャンピオンホースが名を連ねており、その中には日本のタイキシャトルも含まれる。1998年のこのレースに出走したタイキシャトルは、圧倒的1番人気に応えて優勝し、日本調教馬として同レース初制覇を果たすとともに、前週のモーリスドゲスト賞を制したシーキングザパールに続く海外GI制覇という快挙を成し遂げた。なお、このレースには同馬以外にもギャロップダイナ(1986年12着)、テレグノシス(2003年3着)、ローエングリン(同10着)の3頭が挑戦しているほか、騎手では武豊騎手が2008年に同年の英1000ギニー馬ナタゴラとのコンビで2着になるなど計5回、蛯名騎手が1996年にシャンクシーとのコンビで3着に入るなど計2回騎乗している。
次に、舞台となるドーヴィル競馬場についてだが、競馬場があるのはパリから西北西に車で2時間ほどの場所にあるカルヴァドス県のドーヴィル。2011年に行われた主要国首脳会議(G8サミット)の開催地にも選ばれた町で、かつては富裕層向けのカジノやホテルが人気だったが、現在は華やかさよりも美しい港や町並みが広がるリゾート地として有名である。
そんな地にあるドーヴィル競馬場では、初夏を除いてほぼ毎月のように競馬が行われているが、特に大きな盛り上がりを見せるのが夏の開催で、当地で行われるGIは全て7月と8月に組まれている。
コースは右回りで、1周2200mの芝コースの内側に1周2100mのオールウェザーコースが設けられている。これらの周回コースに加え、4コーナー奥に伸びる形で1600mの直線コースが設置されており、ジャックルマロワ賞もこの直線コースを使用して行われる。
さて、ここからは出走予定馬11頭について触れていきたい。当初、今年のジャックルマロワ賞にはサトノアレスやGIII・メシドール賞制したジェニアルといった日本調教馬が出走を予定していたが、ともに体調面や外傷を理由に回避することに。そのため、日本の競馬ファンにとっては楽しみが減ってしまったが、ヨーロッパを代表するマイルGIに相応しいメンバーが揃った。
そんな中、今年最も有力と見られているのが、現在GI戦3連勝中の3歳牝馬アルファセントーリ(Alpha Centauri)だ。同馬は2歳時の昨年にデビュー2連勝を飾り、続くGIII・アルバニーSや牝馬限定のGI・モイグレアスタッドSでも1番人気に支持されたほどの馬。それぞれ2、5着に敗れたことで評価を落とすことになったばかりか、不良馬場で行われた今シーズン初戦のGIII・愛1000ギニートライアルでも13頭立ての10着に敗れたため、本番のGI・愛1000ギニー(カラ、芝8F)では5番人気まで人気を下げていた。しかし、レースでは中団追走から直線で大外を追い込んで優勝。ほぼ1年ぶりとなる勝利を挙げると、英愛仏の1000ギニー優勝馬3頭が揃い踏みとなったロイヤルアスコット開催のGI・コロネーションS(アスコット、芝7F213yd)では2着馬に6馬身差をつける圧勝、従来のコースレコード1秒以上短縮する圧倒的なパフォーマンスを披露して再び評価を取り戻した。前走のGI・ファルマスS(ニューマーケット、芝8F)は、前2走に比べると相手関係が楽だったとはいえ、2着に4馬身半差をつける楽勝でGIを3連勝。3歳のマイル路線では牡馬を含めてもナンバーワンではないか、という見方が強まっている。今回、初めて牡馬やこの路線のトップクラスを相手にすることになるが、3歳牝馬は55kgで出走できるため最大で4.5kgの斤量差がある。唯一、不安があるとすればモイグレアスタッドSや愛1000ギニートライアルでの敗戦の原因になった道悪だが、現状では雨が降ることはなさそう。馬場さえ渋らなければここでも上位争い必至ではないだろうか。
一方、そのアルファセントーリにとって最大のライバルになりそうなのは地元フランス勢。特に、このレースと相性が良いオリビエ・ペリエ騎手が手綱をとる4歳馬レコレトス(Recoletos)は、今年に入ってマイル路線に転向して重賞を2勝、2走前のGI・イスパーン賞(パリロンシャン、芝1850m)では初GI制覇を果たしている。イギリスに渡って出走した前走のGI・クイーンアンSでは7着に終わったものの、地元では侮れないだろう。アルファセントーリとは違い、全6勝中5勝が稍重以上と道悪を苦にしない点にも好感が持てる。2004年にこのレースを勝った父ウィッパーとの親子制覇なるかも注目だ。
また、アルファセントーリと同じ3歳牝馬ウィズユー(With You)は、今回と同じドーヴィル競馬場の直線芝1600mで行われたGI・ロートシルト賞の勝ち馬。当時に比べると相手は遥かに強くなるが、ドーヴィル競馬場では過去2戦2勝と好相性を誇っているほか、こちらも全3勝が稍重以上ということで道悪は苦にしない。今シーズンはここまで3戦1勝という成績だが、敗れた2走前の仏オークスや3走前のサンタラリ賞にしても、勝ち馬ローレンスとの差は僅かであり、悲観するような内容ではなかった。アルファセントーリと同様に斤量面の恩恵がある3歳牝馬なだけに、ここでも上位争いに絡んできても不思議はない。
インテロジャント(Intellogent)は、ウィズユーと同じようにドーヴィルの直線芝1600mを舞台にして行われた3歳馬のGI・ジャンプラ賞の優勝馬。こちらもGI勝ちはその1勝だけだが、2走前の仏ダービーでも差のない4着に入っているように実力は世代上位と思われる。マイルでは3着以下に敗れたことがない馬だけに、こちらも気になる1頭である。
そのほかのフランス勢では、初の重賞かつGIへの挑戦だったジャンプラ賞でインテロジャントを追い詰めたカスカディアン(Cascadian)が不気味。古馬勢はレコレトスを除くとレベルが一気に落ちる印象で、ヌールアルアワ(Noor Al Hawa)、トレスフリュオース(Trais Fluors)、ザラメア(Zalamea)の3頭は苦戦を強いられそうだ。
逆に、遠征組で注目したいのは4歳馬アクシデンタルエージェント(Accidental Agent)。イギリスからやってくる同馬は、初のGI挑戦だった2走前のロッキンジSこそ6着に終わったが、前走のGI・クイーンアンS(アスコット、芝8F)では11番人気タイという低評価を覆して勝利している。大駆けした印象も強いが、当時3着だったライトニングスピアが続くGI・サセックスSを制していることを考えると、ノーマークにはしづらい。初の国外遠征となる今回は、アクシデンタルエージェントにとって試金石になりそうな一戦だが、ここも勝つようであれば、一気にマイル路線の主役に上り詰める可能性もある。
残るはアイルランドからやってくるケン・コンドン厩舎の2頭。このうちローマナイズド(Romanised)は今年の愛2000ギニー(カラ、GI、芝8F)の優勝馬だが、前走のGI・セントジェームズパレスSでは見せ場すら作れずに7着に敗れた。2歳時のGIII・ソラリオSでは、今年の英ダービー馬マサーの2着に入った実績などもあるが、成績にはムラがあり、ここではアテにしづらい。これが初のマイル戦になる上、GIでは苦戦が続いている僚馬サクセスデイズ(Success Days)も、今回に関しては厳しい戦いになると予想される。
※記載している出走予定馬については8月10日(午後2時)時点でのものであり、今後、出走取消等により出走しない場合もありますので予めご了承ください。
