2016/10/27 平松さとし「世界の騎手列伝」
【世界の騎手列伝 vol.56】トミー・ベリー(PART-2)
11月の第一火曜日は、オーストラリアでは特別な日である。
“国民全員の手を止める”と言われるメルボルンCの開催日で、開催場となるフレミントン競馬場があるヴィクトリア州ではナント“メルボルンCデー”という祝日になる。
今年この南半球最大の一番に出走する日本馬がカレンミロティックだ。そして、同馬の鞍上を任されたのが、オーストラリアの名手、トミー・ベリーである。
1991年1月21日、オーストラリアで双子の弟ネイサンと共に、元騎手であり調教師の父・ケビンの下で生まれ、育った。そんな環境で育ったため、双子は「物心がついた時には騎手を目指し」、当然のように共に騎手となった。
トミーは父の厩舎で見習い騎手となった。見習いの減量特典があるのは4年間だが、それまでにカントリー地区で25勝、シティで50勝すれば見習いを脱することができる。多くの見習い騎手はそれに達せず、4年の期間を満了するのだが、トミーは僅か3年と少しでこれをクリア。12年にはエポレットでゴールデンローズSを勝利し、早くもGIジョッキーとなった。
翌13年にはシドニー地区のリーディング調教師であるゲイ・ウォーターハウスからも依頼を受け、GI中のGIといえるゴールデンスリッパーSを優勝。すると香港のジョン・ムーア調教師から突然の騎乗依頼が舞い込んだ。そして香港へ行った初日にいきなりクイーンエリザベス二世盃をミリタリーアタックに騎乗して勝ってみせた。
翌14年にはデザインズオンロームで香港ダービーを優勝。しかし同じ頃、双子の弟ネイサンが急逝。トミーは悲しみを乗り越え、香港でQEII(デザインズオンローム)、シンガポールではシンガポール航空国際C(ダンエクセル)とGIを制覇した。
15年に入ってからはシャトークワとのコンビでオーストラリア国内のGIはもちろん香港スプリントを制すなど、国内外で活躍を続けている。さて、メルボルンCでカレンミロティックをどう乗りこなすのか、期待したい。(文中敬称略)
【世界の騎手列伝 vol.13】トミー・ベリーPART-1)はコチラ!
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