2011/11/17 【月刊UMAJIN編集部】インタビュー・コラム「「独占!」【月刊UMAJIN編集部】インタビューコラム」
長谷川仁志/本紙の2歳戦総括「一番馬を追え!!」vol.4
競馬専門紙「ダービーニュース」の本紙予想を務める長谷川仁志が、今年行われた全2歳戦を開催ごとにプレイバック。POGファン必見、将来性の高い馬を中心に“走る”2歳馬をズバッと診断するぞ!
◇4回東京、5回京都
4回東京3週目、ハナズゴールはコスモネモシンのようなタイプに!
4回東京開催1週目は土曜5Rの牝馬限定戦、芝1600m戦に素質馬が揃った。1番人気のウィケットキーパー(牝、父アグネスタキオン、母コートアウト、国枝)は今年の安田記念2着馬ストロングリターンの半妹。2番人気のパストフォリア(牝、父シンボリクリスエス、母ハッピーパス、藤沢和)はご存知シンコウラブリイの血統で、目下売り出し中のラヴェルソナタの半妹だ。この前評判を覆して勝ったのは、11番人気のハナズゴール (牝、父オレハマッテルゼ、母シャンハイジェル、加藤和)。4角最後方から大外一気。レースの上がりを0秒8上回る、34秒1の鬼脚を発揮して尚、余裕さえ感じられた。414キロの小柄な牝馬でも長い脚を使えるし、勝負根性も十分。牝馬重賞戦線に乗ってくることは確実で、コスモネモシンのようなタイプに育つのではないか。
2日目は5Rの芝1800m。このレースには、アストンマーチャンの半弟にあたり、父がディープインパクトという、オコレマルーナ(牡、父ディープインパクト、母ラスリングカプス、堀)が注目を集めた。ライバルのサトノグロリアス(牡、父ジャングルポケット、母マンハッタンセレブ、藤沢和)の内に潜り込んだ時は何とかなると思わせたが、意外とエンジンのかかりが遅い。ラストは狭い処に入って首、鼻だけ届かなかった。パドックで馬っ気を出すなど若さが感じられたし、実力でないのは確かだろう。ただ、よく出来たディープ産駒とは思うにしても、それより先のインパクトが現状では希薄。むしろまだ途上の風情で差し切ったサトノグロリアスを評価しておきたい。祖母がサトルチェンジ。マンハッタンカフェの甥にあたる。
5日目の芝1600mを差し切ったハイリリー(牝、父アグネスタキオン、母テイクミーハイヤー、尾形)は、1週前、ダートの新馬を快勝したツクバヤマノオー(牡、父スペシャルウィーク、母レスリーズラブ、尾形)と稽古で互角に動いていた。その割には低評価だったのは1番人気のローレンルーナ(父マインシャフト、4着だけどダートで一変するはず)を筆頭に素質馬が多かったからだが、そんな状況にもかかわらず、重馬場を上がり33秒7で突き抜けたのだから、さすがタキオン産駒との印象を持った。良馬場、それも平均以上の展開で同じ脚を使えるかが焦点だが、柔軟性のある馬体からは可能にも思えてくる。次がオープンなら別として、500万下なら狙い。
3週目からは重の芝1400mを1分22秒6で逃げ切ったダイワインスパイア(牡、父ダイワメジャー、母ダイワパッション、池上)。前日よりも乾いていて、またペースも違うものの、先のパストフォリアの勝った未勝利を1秒8も上回る好時計、しかも2着に2馬身半の楽勝だった。稽古では古馬のダイワナイトなどと併せて遅れていたが、それだけ密度の濃い調教をこなしていたのだろう。直線で少しふらついた以外はセンスのある勝ちっぷり。母が重賞ウイナーだし、芝の短距離ならオープンでも通用しそうな手応えがある。
4回東京最終週、ストローハットはマイルGI戦線で頭角を現してくる
オープンのいちょうSは頭数も少なく、メンバー全体のレベルも低かった。しかも不良馬場で、今後、どれだけ参考になるかは微妙だが、勝ったアーデント(牡、父ディープインパクト、母グレイトフィーヴァー、加藤征)は前半、折り合いを欠きながら、急追のピタゴラスコンマを鼻差振り切った。まだまだ未完成だが、間隔をあけて段階を経ての使い方に好感が持てる。重賞勝ち負けのレベルには達しているとは思えないが、こうした馬は背伸びをしない限りは良くなってくるはずだ。
最終週は9日目、芝2000mの新馬に良血馬が出揃った。勝ち時計の2分3秒5は天皇賞・秋を初め、レコードが2レースもマークされた日にしては物足りないが、これは一にも二にもスローペースのため。上がり3Fは11秒6-11秒1-11秒4と優秀なものだった。2番手から抜け出したフェノーメノ(牡、父ステイゴールド、母ディラローシェ、戸田)は展開も向いたが、ステイゴールド産駒にしては大型でしっかりした馬体の持ち主。おそらく母父のデインヒルが出ているのだろう。中距離タイプで上級進出は間違いない。
2着のシャドウパーティー(牡、父キングズベスト、母グリンティングデザート、堀)は上がり3F33秒7と最速の脚で首差まで追い詰めた。内容は勝ち馬を凌ぐし、直線はスタンドを気にして内に逃げていたというから、まともなら勝っていた可能性もある。エイシンフラッシュ、ワークフォースでブレイクしたキングズベスト産駒。直前の追い切りでは天皇賞2着のダークシャドウの外に併せて食らいついていたほどだから、相当な器かもしれない。
このシャドウパーティーの1週前の稽古で互角に動いていたのがストローハット(牡、父フジキセキ、母ウォートルベリー、堀)。札幌の新馬はスタートでアオッて3着に敗れていたが、2戦目はテンに少し折り合いを欠いたものの福永が我慢させて、芝1800m1分47秒4。前年の東スポ杯2歳Sと比較しても0秒1差の好時計で楽勝した。フジキセキ産駒だが、母父がソヴィエトスター直子なのでマイラータイプ。順調ならマイルGI戦線で頭角を現してくることだろう。
5回京都、デイリー杯2歳S覇者クラレントは2000mまで!?
5回京都開催、まずは3日目に行われたGIIデイリー杯2歳Sの回顧から。勝ったのは夏の京都デビューから放牧で成長を促されていたクラレント。直線は内の窮屈な処に入りながら割って出てダローネガを瞬時に捕えた。GIIにしてはメンバーが小粒だったし、勝ち時計の1分34秒9も前年、レーヴディソールの1分33秒6と比較すると平凡の域を出ないが、実戦向きのいい勝負根性と一瞬の切れを持っているので、ステージが上がっても相手なりには走ってきそうだ。これで1400m、1600mと連勝した訳だが、ダンスインザダークの牡馬でもダンシングブレーヴ×テスコボーイの母系はスピードタイプなので、距離は延びても2000mが上限かもしれない。
ダローネガは半馬身差の2着だが、スタートで出遅れて外々を追い上げる不利。勝ち馬と比較すると距離ロスは甚大ではなく、負けて強しといえる。こちらもまたいい根性を持っているが、野路菊S、そして今回とうまい使われ方をしてきたのも否定できず、暮れの大一番などに入ると底力の差が出る可能性もある。
5回京都、萩Sの3、4着馬はマイル以下の距離でもう一度!
7日目、オープンの萩Sは人気薄のスノードン(牡、父アドマイヤムーン、母スノーリンクス、安田)が接戦をものにした。人気のショウナンラムジが若干、折り合いに気を使いすぎた面もあり、恵まれたことも否定できないが、前走、新潟の未勝利勝ちから大幅にパフォーマンスを上げたのも確か。アドマイヤムーン産駒で母の父がキングマンボ直子のレモンドロップキッド、祖母の父がウッドマンとミスプロで固められた配合に、変身の理由があるのかもしれない。
2着のショウナンラムジ(牡、父ダンスインザダーク、母フォーカルスター、矢作)は位置取りの差が出た形。また直線は窮屈な処もあった。開幕週とはいえ、2戦目勝ちが1600m1分33秒4のコースレコード。内回りと外回りの差はあるが、デイリー杯を1秒5も上回っていた。気性が激しく、テンション、折り合いが鍵となるが、スピード能力は朝日杯に出走してきても遜色ないだろう。ダンスインザダーク産駒が京都を得意にしているのは今に始まったことではないが、クラレントの母父がダンシングブレーヴで、ショウナンラムジはダンシングブレーヴ直子のホワイトマズル。この配合にニックスがあるようだ。
3着エタンダール(牡、父ディープインパクト、母ミスベンバリー、藤原英)、4着アナスタシアブルー(牝、父ファルブラヴ、母ライラプス、松田国)も勝ち馬から0秒2差。いくらも負けてない。共にオープン通用の資質を持っている。エタンダールは母父がモンジューで、2400mで未勝利を勝ったクリサンセマムの全弟。距離は2000m以上あったほうが良く、ファルブラヴ牝馬のアナスタシアブルーは逆にマイル以下が適している。
▼【関連リンク】
★月刊「UMAJIN」最新号の詳細はコチラ↓
http://shop.uma-jin.jp/
★月刊「UMAJIN」最新号のオンラインショップはコチラ↓
楽天ブックス→ http://books.rakuten.co.jp/rb/12755573/
セブンネット→ http://www.7netshopping.jp/magazine/detail/-/accd/1200944030/
Fujisan→ http://www.fujisan.co.jp/product/1281680751/