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コラム

2011/01/28  【月刊UMAJIN編集部】インタビュー・コラム「「独占!」【月刊UMAJIN編集部】インタビューコラム」

国枝栄/ゴールを目指して

関西馬有利の予想を覆し、マツリダゴッホで有馬記念を優勝した国枝栄調教師。例年関東リーディングの上位にいるが、昨年は全国リーディングでも、藤沢和調教師に次ぐ41勝を挙げ2位に躍進。獲得賞金に限れば関東1位である。そんな師に今年の意気込み、そして常にリーディング争いができる秘訣、そして美浦に新しくできた全天候型のポリトラックコースについて話を聞いた。(2008/2/13発売 ウマジン!No.112に収録)

全国リーディング2位に

ゴールした瞬間、場内がどよめいた昨年の有馬記念。勝ったのは9番人気の伏兵マツリダゴッホだった。『状態が良かったので、一発あると思っていた』とは管理する国枝栄調教師の言。天皇賞・秋で15着惨敗後、ジャパンCには目もくれず、有馬記念一本に的を絞り、いち早く放牧に出した師の選択が功を奏したのだ。

 そして、この勝利の瞬間、松田博調教師の40勝を抜き、国枝師は中央競馬全国リーディングトレーナー2位を確定させた。常にリーディングトップを走る同じ関東の藤沢和調教師(昨年は2年連続、通算13回目の全国リーディング首位獲得、国枝師とは7勝差)の背中もいよいよ見えてきたのではないか。そのことについて国枝師に聞くと、

「まァ、(全国2位は)たまたまだよ。もちろん毎月通信簿(成績)が出るから、1着をより多く獲りたいという気持ちはあるけどね。ふじさん(藤沢和師)とは古い付き合いで、競馬の世界に入ってすぐに知り合ったから、かれこれ30年の付き合いになるかな。彼はパイオニアだし、トップの座にずっといる男。彼がいるから、自分らもがんばっているというのはあるよね。当然、目標にしているし、いずれは追いつくつもりではいるよ」

 ここ4年連続で関東リーディング2位。その上にはいつも藤沢和師がいた。どんなに仲が良くても、そこは勝負の世界。『今年こそ』という言葉はなかったが、いつまでも2位に甘んじているつもりはないようだ。

一頭一頭の状態を見極める
 それにしても、毎年コンスタントに30?40勝を挙げているのはすごいことである。なぜそこまで安定した成績が残せるのか。過去の成績を調べてみると、00年までは20勝前後だったのが、01年に初めて30勝の大台を突破してからは、ほぼ毎年30勝以上をマークしている。

「う?ん、01年は特別なことはなかったと思うけど、その前後にブラックホークがうちにいたでしょ。あれがやっぱり転機になったんだろうね」と国枝師はいう。

 98年ダービー卿CT(GIII)を勝ち、国枝師に初めて重賞タイトルをプレゼントしたブラックホーク。その後も99年スプリンターズS(GI)、01年安田記念(GI)を制した名馬である。GI馬との出会いで、師も何かを掴んだのだろう。そのブラックホークをはじめ、さまざまな馬を育ててきた国枝流の調整法とはいったいどのようなものなのか。

「当たり前なんだけど、やっぱり馬をよく見ることだろうね。すべてが自分の思い通りにはいかないけど、一頭一頭把握しておくことが大事。ウィークポイントのない馬なんていないわけで、たとえば今日は腹が減っている馬もいれば、そうでもない馬もいる。馬一頭にしても日々状態が違う。それを見極めて、今一番最適な調整法を選択しなければならないんだ。そして、馬を調整していくなかで、もっとも重要なのが追い切りなんだよね。

 競馬というのを考えたときに、一番重要なところはゴールでしょ。これによって成績も馬券もあるわけだから。そこから逆算していくと、4コーナー、3コーナー、スタート、追い切りという順番になっていく。で、われわれ(厩舎サイド)ができることは追い切りまで。だから、いかに効果的な追い切りができるかが重要になってくるんだ」

 師いわく、効果的な追い切りとは、レース当日に一番いい状態にもっていくことだという。普段、馬は調教で負荷をかけ、能力(筋肉)を向上させる。人間も同じだが、筋肉は過負荷をかけることで、筋肉を形成する筋繊維の一部が損傷し疲労する。そこからいったん筋力は低下し、元の状態まで回復。そして再び同じ負荷を与えられたときに備えて、元の状態よりも筋繊維を成長させる性質をもっている。

「追い切りをやりすぎてしまえば、状態が下降気味のときに出走させることになるし、かといって軽すぎると能力は向上しない。それと、人間なんかでもそうなんだけど、たとえばプロ野球選手なんかは、どこか爆弾をかかえているでしょ。ヒジがおかしかったり、腰が痛かったりとか。それをマッサージなどで壊れないようにだましだまし試合に出ている。馬も同じで、前回レースを使ったことで、脚元や腰がおかしくなったとしても、うまく調整して使わないといけないんだ」

 いかに馬のピークをレース当日にもっていくか。そして、いかに故障しないように調整するか。追い切りなどのさじ加減は調教師の判断次第である。師がいったように、そのためには一頭一頭の状態を把握しておかなければならないのだ。

ポリトラックの評価

 追い切りといえば、昨年、美浦トレセンにポリトラックコースが新設された。いわゆる全天候型のトラックで、ウリは雨が降っても馬場状態が変化しないというもの。西高東低を逆転できる関東の秘密兵器として期待されているのだが、国枝師はポリトラックをどう評価しているのだろうか。

「いいと思うよ。雪は別にして、雨でも晴れのときと同じ状態だから。それに馬が走ってもボコボコにならないしね。荒れた馬場は脚元に負担がかかってしまうから、われわれ(調教師)はすべてのトラックの馬場コンディションを把握しておかなければならない。効果的な追い切りも大事だけど、それ以前に安全に行えるかが重要だからね。その点でいえば理想のトラックだよ。ただ、トレーニング効果としてはちょっと疑問かな。よくマスコミやファンが関東の秘密兵器として期待しているけど、その考えの根底にはポリトラックで追い切ることによって、馬の能力が上がると思っているからでしょ。そう考えると、どうかな。ポリトラックはすごく走りやすくて時計が出やすい。人間でもそうだけど、舗装された道路を走るのと、砂利道や砂浜で走るのとでは走りやすさがまったく違うでしょ。ようは時計が出てしまうポリトラックは負荷がかかっていない可能性があるんだ」

 では、国枝師にとって一番効果的な追い切りができるのはどのトラックなのだろうか。

「個人的意見だけど、坂路が一番いいと思う。馬の重心というのは胸前にあるから、負荷も前脚にかかりやすい。だから馬の故障はほとんど前脚に起きるんだ。だけど、坂路は坂だから、前よりも後ろに負荷がかかる。それに下はクッション性のいいウッドチップだから、安全に効果的に追い切りができるんだよ。気になるとしたら、何回も坂路で追い切っていると、腰に疲れがたまっていくことかな。ようは度が過ぎたらダメってことだよね」

 われわれファンからしてみても、ポリトラックで追い切った馬の評価は難しい。ただ、国枝師の言葉から推測すると、すでに馬体が完成されており、レースを使い続けている馬は、状態維持という意味で効果があるのかもしれない。これはぜひ馬券の参考にしたいところだ。

調教師に必要なもの

 最後に調教師として成功するには何が必要なのかを聞いてみた。

「全体をよく見渡さないとダメだよね。スタッフに対しても期待するばかりでは誰もついてこない。相手を許すことが必要だよ。ほとんどは失敗で、自分の思い通りになることなんてめったにないんだから。野球だって3割打てば上等でしょ? 100%を求めるのは酷。いつもいつも期待ばかりしていては、誰も自分の意図を理解してくれない。だから精神論なんてもってのほかだよ。根性だけでなんとかなるんだったら、みんな成功しているんだから。その状況をいかに広い視野で見ていくかが大事だよね」

 有馬記念を制したマツリダゴッホの今後はドバイ→香港→宝塚記念を予定している(検疫上の問題でドバイに行けない場合は日経賞を予定)。有馬記念では挑戦者だったが、今後はグランプリ覇者の名に恥じないよう、受けて立つぐらいの気持ちで仕上げていくと師は明言。そして、春の3歳クラシックはステルスソニックに期待しているそうだ。2戦目の京成杯こそ負けたが悲観していないとのこと。経験を積んでいけばダービーも狙えると語ってくれた。

 今日も国枝師は一頭一頭ジックリと馬を観察しているはずだ。自分の管理している馬を真っ先にゴールさせるために??。


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