2017/09/23　 月刊「UMAJIN」編集長・山田「月刊「UMAJIN」編集長・山田の重賞「穴ライズ」」

[オールカマー(GII)] 不遇の中山キラーが鬱憤を晴らす

今週一番の注目はダービー馬レイデオロの秋初戦となる神戸新聞杯だが、世代トップの強豪が毎年集まるレースだけあって波乱度は低め。むしろ穴党にとっては、東のGII・オールカマーが狙いどころだろう。過去10年で6番人気以下の伏兵が11頭好走しており、神戸新聞杯の7頭を大きく上回る。おまけに今年は、昨年のゴールドアクターや3連覇の偉業を成し遂げたマツリダゴッホのような絶対的王者も不在で、いかにも難解な一戦だ。過去のAJCCや有馬記念のコラムで何度か記したように、中山の非根幹長距離はその特殊な形状から、コース適性が結果を左右しやすい舞台。前述の2頭以外にもドリームジャーニーやトウショウシロッコ、シンゲンのように、複数回馬券に絡む馬は多く、適性の有無が与える影響は大きい。

もちろん非根幹距離に限らず、シンプルに中山巧者が穴を開けている点もポイント。新潟開催だった2014年を除く過去9年で、馬券圏内に来た伏兵は9頭。このうち7頭は、中山の芝重賞で3着以内か、準オープン以上のレースを勝った経験があった。中山巧者が人気の盲点になる原因は、開催スケジュールの関係。4月の第3回開催終了から9月まで、中山開催には芝の養生のため約5カ月の長いブランクが設けられている。しかもただ長いだけでなく、間を埋める夏のローカル開催には、中山に類似する形状のコースが存在しないのだ。例えば同じように間隔の空く東京には新潟、京都には小倉と、それぞれ形状の似たコースがあるのだが、中山ほどの急坂と高速馬場を併せ持つコースはない。そのため生粋の中山巧者はこの期間、極論すると適鞍がなくなってしまうことになり、夏競馬で成績を下げる→久々の中山で鬱憤を晴らす、という流れがパターン化しやすいというわけだ。

ただし、当然ながら中山巧者なら何でもいいわけではない。オールカマーの本質を暴くには、舞台の同じAJCCとの比較が有効だ。あちらは真冬のタフな芝で行われるのに対し、オールカマーの開催される9月は、パンパンの芝での開催が通例。そのため走破タイム、上がり3Fともにオールカマーが断然速く、したがって瞬発力のいる中距離馬向きのレースになる傾向にある。馬場状態の違いを如実に表しているのが、2009→2010年とAJCCを連覇したネヴァブションの成績。同馬は日経賞やステイヤーSなど中山の長距離で結果を残したステイヤーだが、AJCCには計4走出走して3回好走している一方、オールカマーは2回出走したものの、どちらも掲示板にすら入れなかった。つまりネヴァブションの例からわかるように、このレースで求められるのは、中距離寄りの中山適性。先週のセントライト記念で、優勝馬ミッキースワローが上がり3F33秒4の脚を繰り出したことも考えると、コテコテのステイヤータイプは厳しく、時計勝負にも対応可能な中距離タイプの中山キラーが狙い目と見る。

【オールカマーの“穴”ライズ特注馬】
注）ツクバアズマオー
中山の急坂にめっぽう強く、他馬が伸びあぐねるなかグイグイ差してくる決め手が魅力。昨年の当レース3着、中山金杯優勝など中山実績は上位。ここ2走は大敗続きも、道悪が合わなかったり、他馬と接触するなど消化不良のレース。得意コースでの巻き返しに期待。

注）マイネルミラノ
コース不問のイメージが強いが、中山は計4勝を挙げている舞台。近走は後続に張り付かれる展開もあって不完全燃焼だが、一か八かの逃げ馬だけにフタ桁着順は気にならない。要はマイペースの逃げが打てるかどうかで、マークの緩む今回あたりが買い頃だ。

注）ブラックバゴ
中山の3歳重賞を連続好走し、クラシックでも期待されたがその後低迷。しかし同じく中山で行なわれた4走前を前々から押し切ると、前走は後方から鋭く差し切ってオープン入り。後方一辺倒の脚質が改善され、素質馬が軌道に乗ったとなれば久々の重賞でも侮れない。

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