2017/05/27　 月刊「UMAJIN」編集長・山田「月刊「UMAJIN」編集長・山田の重賞「穴ライズ」」

[日本ダービー(GI)] 皐月賞≠弥生賞＝ダービーという方程式

ソウルスターリングが桜花賞の鬱憤を晴らした先週のオークス。3着にも桜花賞惨敗のアドマイヤミヤビが入線した一方、桜花賞の1、2着馬はそれぞれ馬券圏外に敗退した。着順が入れ替わった原因はさまざまあるが、先週の当コラムで記したように桜花賞が特殊な馬場状態で施行された影響は大きい。同じことは、今週の日本ダービーにも当てはまる。近年の皐月賞は“超”がつくほどの高速馬場が通例で、今年も当然のようにレースレコードを更新。レース内容の特殊性を踏まえれば、皐月賞の結果がそのままダービーに結びつくとは考えにくく、逆に穴馬発掘の面白みが潜んでいると言えよう。

もうひとつ、青葉賞を圧勝したアドミラブルの存在も、盲点を生む要因を後押しする。皐月賞が9→4→12人気決着と、引き続き3歳牡馬路線が主役不在の感は否めず、そこへ彗星のごとく現れた同馬に注目が集まるのは当然だろう。そのぶん他馬への視線は分散し、そこに“人気の盲点”が生まれても不思議はない状況にある。まず穴馬のあぶり出しにあたって、出走メンバーの実力比較にピッタリの馬がいる。それは青葉賞2着のベストアプローチだ。同馬は京都2歳Sでカデナから0秒4差、セントポーリア賞でダイワキャグニーから0秒4差、弥生賞で再びカデナから0秒3差、そして青葉賞はアドミラブルから0秒4差。単純な物差し論ではあるが、一連の内容からアドミラブルと、その他の路線組に大きな差はないと考えられる。

とくに注目したいのは、前述のカデナやダイワキャグニーらが顔を揃えた弥生賞。弥生賞は皐月賞と同舞台で行われる重要トライアルだが、そのわりに近年は本番・皐月賞との関連性は低い。一方、弥生賞とダービーの関連性は高く、過去10年で弥生賞を経由した馬が毎年1頭以上はダービーで馬券に絡み、優勝馬は4頭にのぼる。中山芝2000mの弥生賞と東京芝2400mのダービー。一見、異質なふたつのレースだが、弥生賞と皐月賞の異なるレースの性質をひも解けば、その答えは明確となってくる。皐月賞はスタートからゴールまで1F11秒?12秒前半のよどみないペースで流れるのに対し、弥生賞とダービーは道中に1F12秒後半のラップを含む緩急のあるペースから、ラスト3Fの瞬発力勝負へ突入するレースになりやすい。つまり、皐月賞＝持続力、弥生賞・ダービー＝瞬発力と、求められるスピードの質が異なり、ひいては「皐月賞≠弥生賞＝ダービー」という方程式が成り立つというわけだ。

今年の弥生賞は勝ち時計2分3秒2と、近年の良馬場開催では最も遅く、加えて道中に13秒台のラップが2本もある極端な展開だった。そして勝ち馬カデナが皐月賞で振るわなかったこともあり、その評価は低い。しかし、前述の4着ベストアプローチが青葉賞で好走し、9着ダイワキャグニーもプリンシパルSで巻き返したように、他の路線と遜色ないメンバー構成だったことがうかがえる。むしろ例年以上に時計を要し、極端な瞬発力勝負になったぶん、よりダービー好走に必要な適性が試されたと言える。ならばダービー攻略のヒントは皐月賞ではなく、弥生賞にあると見るべきだ。

【日本ダービーの“穴”ライズ特注馬】
注）カデナ
弥生賞は逃げ馬が残る流れを大外から差し切る強い競馬。前傾ラップの経験がないまま挑んだ皐月賞は、追走に脚を使ってしまい本来のキレ味が出なかった。皐月賞前の5戦はすべてスローから上がり最速で勝ち負け。瞬発力勝負になれば巻き返せる。

注）ダンビュライト
弥生賞ではカデナの決め手に屈したが、レースの質がまるで異なる皐月賞で好走と、展開不問の柔軟性は大きな強み。ベストパフォーマンスが中京の新馬、東京のサウジアラビアRCと、父譲りのダイナミックな走りは広いコースでこそ生きる。

注）ダイワキャグニー
前走プリンシパルSは従来のレースレコードを0秒8も更新するハイレベルの一戦で、これを前々で運んで自ら時計を引き上げたのだから強い。東京コースは3戦3勝。大敗した弥生賞は、力負けというよりイレ込みで力を出しきれなかった。見直す余地あり。

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