2012/02/17 渡辺 壮「砂に埋もれた金脈を掴み取れ!」
【フェブラリーS】推理?渡辺壮が展開を読む!
編集:このコラムも5日目になりました。いよいよ枠順も発表され、レースが近づいてきましたね。
渡辺:そうだね。展開やライバルの出方など、ジョッキーも今から色々と考えている頃だろうね。
編集:ちなみに、渡辺さんが現役の騎手時代、レース前夜は調整ルームでどうやって過ごされていたんですか。
渡辺:もちろん一人の時は新聞を見ながらレースをイメージしていたし、時には食堂でジョッキー仲間とご飯を食べたり一杯やったりしていたよ。
編集:その話の中心は、やっぱりレースについてですよね。
渡辺:もちろん。たとえば自分が逃げ馬に乗るとして、同じように逃げ馬に乗るジョッキーに「今回も逃げるの?」とかそれとなく聞いたりしてね。相手が後輩だったりすると「ここは先輩を立てると思って控えてくれよ」ってカマをかけたり(笑)。
編集:レースの駆け引きが、前日の調整ルームから始まっている訳ですね。
渡辺:そういう事。だから、トランセンドの藤田ジョッキーと、エスポワールシチーの(武)豊ジョッキーも、今から腹の探り合いをしているかもしれないよ。
編集:興味深いお話で後ろ髪を引かれますが、それでは本日枠順が決まりましたので、有力各馬が引いた枠についてお話を伺っていきたいと思います。まずはトランセンド。8枠15番を引きました。
渡辺:外枠の多い馬で、今回も外を引いたね。それでもこの枠ならスタートが少々遅かったとしても被される事はないから、むしろ良かったんじゃないかな。
編集:去年のこのレースは6枠12番でした。今回は更に外に入りましたが…。
渡辺:枠自体が内か外かっていうよりも、エスポワールシチーの内に入るか外に入るかがが気になっていたんだ。
編集:といいますと?
渡辺:これでもしエスポよりも内に入っていたら、エスポが逃げの手に出た場合や、何らかの理由でスタートが遅かった場合、被されて苦しくなると思っていたんだ。
編集:5枠9番のエスポワールよりも外に入りましたね。
渡辺:この枠だったら、多少の出遅れならハナは切れなくても2番手の外めは確保できる。そうすればエスポを見ながら競馬ができるからね。いいと思うよ。
編集:それでは、今お話が出てきたエスポワールシチーの枠はいかがですか?
渡辺:トランセンドよりも内に入ったから、“行けたら行く”っていう構えは見せるんじゃないかな。
編集:武豊騎手のコメントを読むと、何か秘策がありそうな気がしてならないんですが。
渡辺:手の内を見せたくないんだろうけどね。あれだけ言葉を濁しているという事は、もう8割方はハナに行くのを決めているのだと思う。ただ、南部杯の時がそうだったように、行ったら行ったで苦しくなるのは確か。トランセンドだけじゃなく、今回のメンバーは他の有力馬でも先行脚質の馬が多いからね。ペースが速いと思ったら控えるのか、豊ジョッキーの手綱捌きに注目したいね。
編集:グランプリボスは7枠13番を引きました。砂を被らずにレースを運べるという意味ではちょうどいい枠のように思いますが。
渡辺:トランセンドが行った後、すぐに外に出せるからね。内田(博幸騎手)君がどう乗るかはわからないけど、この枠ならレースはしやすいと思うよ。ただ、最近はスタートがあまり良くないのが気になるね。位置取りが後ろになるとちょっと苦しくなる気がするんだよなぁ……。
編集:(VTRで確認)…… 確かにマイルCSも阪神Cもスタートで少しアオっていますよね。
渡辺:共同通信杯のゴールドシップのように、内田ジョッキーもテンから仕掛けていくんじゃないかな。やっぱり初ダートの馬に砂を被せたくはないからね。
編集:なるほど。スタートが肝心になりそうですね。それから、渡辺さんが「乗ってみたい」とおっしゃっていたダノンカモンは6枠11番。ジョッキーの立場から、この枠はどう思いますか?
渡辺:スタートも速いし、スッといい位置を取れるから、レースは本当にしやすいと思う。このメンバーの中でも一番乗りやすい馬なんじゃないかな。力を出し切るには申し分ない枠だと思うよ。
編集:そのすぐ内に入ったのがワンダーアキュート。こちらはいかがですか?
渡辺:これもレースはしやすそうだね。それに、東京大賞典の時もそうだったけど、この馬の場合は内ラチを頼って走らせた方がいいタイプのように思う。いいスタートを切って中団よりも前の位置のインコースでロスのない競馬ができれば、チャンスはあると見ているよ。
編集:あと、追い込み馬のシルクフォーチュンは2枠3番を引きました。ちょっと内過ぎるかなという気もするのですが……。
渡辺:こういうタイプは枠がどこだろうが同じレースをするだけ。思い切って最後方まで下げて、直線で外に出すっていう競馬をさせれば、別に内枠でも問題はないよ。
編集:そのほかで気になった馬はいますか?
渡辺:トウショウカズンは距離延長に不安があるだけに、できればインコースでロスなく競馬をさせたいクチ。それだけに外枠(7枠14番)を引いたのは気になる。そのまま外を回らされるようだと、ちょっと苦しいかもしれないね。
編集:それでは、渡辺さんに今年のフェブラリーSの展開を大胆に予想していただきましょう! まず注目のハナ争いですが…。
渡辺:トランセンドが逃げると思うけど、エスポワールシチーの武豊ジョッキーも逃げようと思っているはず。それを藤田ジョッキーが行かせるかどうかに焦点が集まるけど、藤田ジョッキーもいい頃のエスポを見ていて、この馬の怖さを知っているはずだから、ハナは譲らないと思う。
編集:ひとつ気になるのが、去年のフェブラリーSでも南部杯でもそうでしたが、東京の1600mは芝からのスタートのせいかテンにモタついていますよね。その点はどうご覧になっていますか?
渡辺:確かにそうだね。変に内に入って外から被されるっていうのが一番嫌なパターンなんだけど、幸い今回は外枠を引いたから、その心配はないだろう。だからトランセンドがここもハナは譲らないと思う。エスポも砂を被せたくはないだろうから、ハナに行けなかったら2番手の外めからの競馬になるかな。
編集:この2頭にとって、短距離でハナを切れるスピードがあるケイアイテンジンは気になる存在ですよね。
渡辺:確かに厄介な存在ではあるね。藤田ジョッキーや武豊ジョッキーにとってみれば、「競り掛けてこないでくれ」っていうのが本音かもしれない。ただ、この2頭に競り掛けていくとなると、道中で相当脚を使わされる羽目になるから…。後藤ジョッキーも無理に競り掛けていくような事はないと思うんだけどな。
編集:なるほど。それではその後ろの好位勢になると…。
渡辺:ダノンカモン、ワンダーアキュート、トウショウカズン、グランプリボス、ナイキマドリードあたりかな。
編集:そして中団に控えるのは…。
渡辺:テスタマッタ、タガノロックオン、セイクリムズン、ヤマニンキングリー、ライブコンサートあたりかな。中団はちょっとゴチャつくかもしれないから、好位の馬はあまりポジションを下げたくないところだね。
編集:それから後方にかけてとなると。
渡辺:スマイルジャック、ヒラボクワイルドに最後方がシルクフォーチュン。こういう隊列になるかと見ているんだけど。
編集:やはり人気を背負う馬がハナを争うとなると、ペースは速くなりそうですね。
渡辺:エスポワールシチーの武豊ジョッキーがどこまでトランセンドを追い掛けるか。これによってペースは変わってくると思う。ただ、豊ジョッキーも簡単には食い下がらないだろうから、ペースは速くなると見ている。去年のフェブラリーSの前半の1000mが1分00秒1で、南部杯の時は57秒8だったけど、どちらかというと南部杯の時のようなペースになると見ている。そうすると、後方で終いの脚に賭けるシルクフォーチュンあたりも面白いかもしれないね。いずれにしてもジョッキーの駆け引きを堪能できる、面白い競馬になるんじゃないかな。
編集:今日はどうもありがとうございました。2000以上の勝ち星を挙げた実績と経験に裏打ちされた渡辺さんのお話は勉強になる事ばかりです! また明日もよろしくお願いします。
渡辺:こちらこそ。まずは明日の東京ダートの傾向をしっかり見極めたいね。その上で最終結論を出すつもりだけど、恐らくかなり思い切った買い目になると思う。期待して欲しいね!
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