2012/02/14 渡辺 壮「砂に埋もれた金脈を掴み取れ!」
【フェブラリーS】着眼?グランプリボスの砂適性と、エスポの乗り替わり
初ダートとなるグランプリボスの砂適性と、本来ならダートの大将格と言えるエスポワールシチーの武豊騎手へ乗り替わるメリットと危険性。昨日も書いたように、今年のフェブラリーSを占う意味でも重要な2つのポイントについて、ジョッキーならではの目線で解説していきたい。
このフェブラリーSは、芝のGIのちょうど谷間の時期に行われる事から、芝路線から転戦してくる馬が毎年何頭かはいるものだが、そのほとんどが着外に沈んでいる。一昨年のローレルゲレイロ(7着)、4年前のヴィクトリー(15着)、9年前のエイシンプレストン(16着)といったGI馬ですら、ダートで揉まれた猛者たちの後塵を拝している。芝からダートに替わると、馬はどうしても戸惑うもの。そこへもってきて、いきなりダートのトップクラスの馬に混じって走ると差が出るのは、ある程度仕方のない事だと思う。しかしながら、転戦馬の多くはローテーションの関係で力をフルに発揮できる状態ではなかった。つまり、いい状態でこのレースに臨んできた馬がほとんどいなかったと思われる。
それでは、今年のグランプリボスはどうだろうか。まだ4歳と若いし、朝日杯FS、NHKマイルCとGIを2つ勝っているように能力が高いのは誰もが認めるところ。前走の阪神Cではハナ差の2着と明らかに上昇カーブを描いている。状態面に関しては最終的には追い切りを見てからの判断になるが、少なくとも臨戦過程としては悪くない。
あとはダートの適性があるかどうか。芝馬にありがちな一瞬の切れで勝負する瞬発力タイプではなく、この馬の場合はどちらかというと長くいい脚を使って力強く伸びるタイプ。後に安田記念を勝つリアルインパクトを二度に渡って捻じ伏せた京王杯2歳Sと朝日杯FSは、まさにそういった伸び脚だったし、NHKマイルCでも直線で追い出されてからのフットワークはいかにもパワー型といった感じ。サンデーサイレンスの肌にサクラバクシンオーという血統、500キロを越す大型馬と、ダートをこなせる下地は揃っていると言えるだろう。
芝からの転戦組で一番気になるのは、砂を被った時にどうかという事。砂を被って怯んだりしているようでは勝負にならないし、砂を被さないように外を回るとなると、どうしても距離ロスが生じる。砂を被っても前向きに走れるのが一番いいのだが、達者なジョッキーが乗ると馬の後ろにいても砂を被らないようなレースが不思議とできるのだ。前の馬と接触しないギリギリのところまでくっつければ、蹴り上げた砂は胸前よりも下に当たるので顔には当たらない。砂を嫌う馬は顔に当たるのは嫌がるが、体や脚に当たっても嫌がらないもの。それだけの技術を持ったジョッキーが乗れば、砂を嫌がる馬が馬の後ろに入っても大丈夫。内田ジョッキーが乗るのは心強いと言えるだろう。
それに、この馬の場合は芝のレースを見ていても引っ張り切れないくらいの手応えで行くだけに、砂を被せて気を紛らわせるくらいの方がちょうどいいかもしれない。もちろん「やってみないと分からない」という未知のゾーンではあるが、以上の事を踏まえると、グランプリボスがダートをこなせる可能性は十分あるというのが自分の見立てだ。
それから、エスポワールシチーには怪我で戦線離脱した佐藤哲三ジョッキーに代わって武豊ジョッキーが騎乗する。
あくまでも一度きりの代打。次も乗るという訳ではないので、乗る方にしてみれば気楽。ただ、豊ジョッキーにしてみれば、お手馬であるスマートファルコンがドバイでトランセンドと対戦する可能性があるだけに、「トランセンドに楽に勝たせたくはない」という気持ちがあるかもしれない。そうなると、行ける範囲でハナに行くと思う。それに、(佐藤)哲三ジョッキーがレースでも調教でも付きっ切りで、手塩にかけて育ててきたという手前、厩舎サイドも哲三ジョッキーに乗り方の指示は出しづらいと推測する。ところが、一度きりの代打という事であれば、「バテてもいいから、思い切ってハナに行ってみてよ」と指示を出す可能性も十二分にあるだろうし、そうなれば彼もそれに応えるような乗り方をするはず。したがって、エスポワールがハナを奪う可能性は十分あると見ている。ただし、あくまでも枠順の関係や馬の状態次第だと思うので、その辺については木曜更新分の追い切り診断と、枠順確定後の金曜更新分で説明したい。
明日は「俺ならこう乗る」と題して、ジョッキー目線で1頭ずつ解説するつもり。明日も必ず目を通していただきたい。
★【ダートマスターへの道】渡辺壮、過去のコラムはコチラ
★渡辺壮らが乗り役目線で注目馬をPick UP!【元騎手の相馬】はコチラ
★馬三郎・弥永TMや平松さとしなど【UMAJIN.netコラム】一覧はコチラ!
Tweet | シェア |