2011/11/29 渡辺 壮「砂に埋もれた金脈を掴み取れ!」
【ジャパンCダート】序章?渡辺壮が前哨戦を徹底回顧!(後編)
(明日以降の更新スケジュールは以下の通り)
11月30日12時頃:独断?渡辺壮の「俺ならこう乗る」前編 エスポワールシチーなど
12月 1日12時頃:独断?渡辺壮の「俺ならこう乗る」後編 トランセンドなど
12月 2日12時頃:推理?渡辺壮がJCダートの展開を読む!
12月 3日18時頃:決断?渡辺壮 JCダートの最終結論
12月 4日17時頃:完結?渡辺壮のJCダート徹底回顧
(前編より続き)
それから、11月6日に京都競馬場で行われたみやこS。ここをステップに臨んでくる馬が多いので詳しく振り返りたい。
トウショウフリークがハナを切って平均ペースの流れ。この馬の場合はテンにそれほど速い馬ではないので、スタートしてからかなり追っ付けて行く形になった。恐らくエスポワールシチーよりも外の枠だったらハナには行けなかっただろうし、テンに急がせた事で馬にも無理がかかったように思うが、それでも道中の折り合いも付いて楽な逃げが打てたのは良かった。ただ、エスポワールシチーがすぐ後ろでいつでも交わせるくらいの手応えだった。これでエスポワールが早めに動いて交わされていたら2着はなかったはずで、エスポワールが我慢してかわいがってくれたからこその2着だったと思う。
未勝利からオープンまで5連勝して、重賞初挑戦だった前走でも2着。力を付けているのは間違いないが、一線級に混じると決め手の面で見劣る感は否めない。ゆえに今回もハナを主張してこの馬の競馬をさせると思うが、スタートダッシュという点でもエスポワールやトランセンドの方が遥かに上で、もし外枠にでも入ったらスンナリとハナを切る事はできないだろう。それに、連勝時の逃げ切りはいずれも平均以下のペースで、GIの速い流れを逃げるとなると相当苦しくなるはず。色々注文が付くという意味でも、いきなりGIのメンバーに入ると厳しいと思う。ただ、この馬の出方がレースの流れを左右するので、レースの展開の鍵を握る馬である事には違いない。
順番が前後してしまったが、勝ったエスポワールシチーは、南部杯(4着)であの速い流れでハナを切った事で馬に負荷を掛けたのが、このみやこSで生きたと思う。直線で追われてからもうひと伸びしていたし、去年のフェブラリーSを勝った時のような走りができていた。それでも当時はまだ完調ではなかっただろうし、みやこSを使っての上積みも小さくないはず。
それに、登録のあったJBCクラシックを見送って、このみやこSに使ってきたという点も見逃せない。勝つ事によって馬は自信を付けるものだが、最近はなかなか勝ち切れない競馬が続いていただけに、ここを勝った事の意味は大きい。「ホップ・ステップ・ジャンプ」ではないが、まさに理想的なローテーションでジャパンCダートに臨めると思う。
3着だったニホンピロアワーズは、中団のインコースで折り合ってロスのない競馬ができていた。直線はこの馬なりに伸びてはいたのだが、勝ち馬に詰め寄るだけの決め手はなかった。どうもワンパンチ足りない感じで、トランセンドやエスポワールシチーを逆転できるだけの手応えはない反面、この馬の場合は少々メンバーが強くなっても相手なりに走れるというのが長所。逆転までは考えにくいが、決して力のない馬ではないのでGIのメンバーに入ってもバカにはできない。よほど道中の位置取りが悪くならない限り、ここも大崩れはないと思う。
東海S以来の休み明けだったワンダーアキュートは4着。3?4番手の好位でスムーズな競馬ができたし、距離ロスも少なかったので、ジョッキーとしてはうまく乗っていたと思う。ただ、直線は伸びてはいてもジリ脚で決め手に欠けるように見えた。展開の助けがないと厳しいと思うし、距離ももう少しあった方がレースはしやすいはず。休み明けを叩いた上積みは見込めても、今回もみやこSと同じ1800mという事を考えると、一瞬の瞬発力や切れ味という点で見劣りするのは否めず、トランセンドやエスポワールシチーを差し切るというシーンはイメージしにくい。
いずれにしても、ここを勝ったエスポワールシチーは素直に評価するべきだと思う。
最後に、11月13日に東京競馬場で行われた武蔵野S。勝ったナムラタイタンは出走してこないので、2着のダノンカモンから振り返りたい。前走の南部杯と同じような感じで先行してスムーズに運べたし、直線で一旦は先頭に立つという完璧な競馬ができたと思うが、南部杯と同様、ゴール前で交わされるという内容。能力はあっても、最高の競馬が二度続けてできても勝ち切れないのだから物足りなさが残るし、距離に関してもベストは1400mで、1600mはギリギリという印象を受ける。今回は更に1ハロン延びる事を考えると、やはり苦しいと思う。
それと、武蔵野Sではブリンカーを着用していたので、この点について触れてみたい。「抜け出してから気を抜く面がある」ので、それを矯正する意味で着けられたようだが、南部杯も武蔵野Sも苦しくなって頭が上がったように自分には見えたので、気を抜いたというよりも距離に不安があると見た方がいいと思う。特に南部杯の時はトランセンドとピッタリ馬体が合っていたので、そういう時に馬は余裕がないから物見などしないもの。そこでフワッとなったあたり、気を抜いたのではなく、やはり我慢が利かなかったからだと思う。そこでブリンカーを着けると、最後まで気を抜かない代わりに道中も気を抜けなくなるので、最後に苦しくなるのを早めてしまう。従って、ブリンカーを外さないと1800mは持たない。周りを見せて遊ばせながら行かないと、直線で早めにバテが来る事になりそう。ブリンカーを着けるかどうか、陣営の判断にも注目したい。
4着のダイショウジェットは4?5番手で折り合ってロスのない競馬ができていた。ただ、直線もこの馬なりに伸びてはいても4着まで。柴山ジョッキーは最高にうまく乗っていたと思うが、それでもここまでが精一杯だったのだから、あまり強気にはなれない。最近は浦和で交流重賞を勝ったし、GIでもそれなりに着順をまとめているのだが、この馬も距離が延びるのが決してプラスとは言えないだけに、常識的には厳しいと思う。
7着のテスタマッタはかなり掛かっていた分、直線で伸び切れなかった。1600mでこれだけ行きたがったのだから、更に1ハロン延びると余計に折り合いが心配。この時はテン乗りのベリージョッキーだったので、乗り慣れた四位騎手に乗り替わるのはプラス。ただ、折り合いを第一に考えなくてはならないので、後方でジッと我慢する乗り方をするしかないし、仮に折り合ったとしてもトランセンドやエスポワールシチーをまとめて負かせるだけの決め手もない。1400?1600mで決め手を生かすタイプだと思うし、阪神1800mはマーチSで勝っているとはいえ、あの時とはメンバーが全然違う。いずれにしても厳しいと思う。
ここまで主なステップレースについて振り返ってみた。過去のレースを振り返る事で、見えてくるものが意外にも多いのは、ここまで読んでいて分かっていただけるのではないだろうか。ウマジンネットの「元騎手の相馬」のコーナーで毎週全レースを振り返っているので、そちらも併せてチェックしてもらえれば、競馬の見方も変わってくると思うのでオススメしたい。
明日と明後日の2日間に渡って、「渡辺壮の俺ならこう乗る!」と題して“自分ならこうやって乗る"という観点で1頭ずつ解説したいと思う。ぜひチェックしてみて欲しい
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