2012/05/25 『うまカレ』所属現役大学生「競馬学概論」
【競馬学概論】最終回は競馬の祭典日本ダービーを血統分析!
こんにちは、早大お馬の会佐藤です。「競馬学概論」は今回が最終回となります。昨年函館記念の回から44講。少しでも皆さんの予想に役立ったのならば、うまカレ一同大変光栄です。
最終回は東京優駿(日本ダービー)。すべての競馬関係者は言います。ダービーは特別なレースだと。日本ダービーは私が競馬を見始めるきっかけとなったレースでもあり、全力で予想したいところです。
まずはダービーの血統傾向から。サンデー産駒がいなくなった2007年以降、ダービー好走馬の特徴が、その後安田記念などマイルで好走しているという点。良馬場の瞬発力勝負になりやすく、2400mらしからぬスピードが要求されるレースと言えます。ここ5年馬券になっている馬15頭の血統的特徴は、
1.8割にあたる12頭が父サンデー系か、母父サンデー系
2.スピードが武器のミスプロ系は、スローからの瞬発力勝負が得意なキングマンボ系以外来ていない
3.馬券になった馬の7割が、スタミナと瞬発力に優れたドイツ血統や、スタミナ型ノーザンダンサー系、末脚の持続力が武器のロベルト系を持っている。
この3つが挙げられます。以上の特徴を踏まえ、血統注目馬、注目馬の血統分析を行っていきましょう。
血統注目馬
☆ディープブリランテ
(父サンデー系ディープインパクト、母父ネヴァーベンド系ルーソヴァージュ)
名門バブルカンパニー一族出身の本馬。バブルカンパニー一族は過去にバブルガムフェロー、ザッツザプレンティ、ショウナンパントルなどを輩出し、GIの大舞台に強い一族として知られています。
芝で高速決着が相次ぐここ数年。ドイツ血統が特にその馬場に適性が高く、そのドイツ血統の根元にいる一頭が、1900年代前半の名種牡馬ブランドフォードです。このブランドフォードの血はサンデーと相性がいいことで近年見直されてきており、ディープインパクト、オルフェーヴルも、血統表にブランドフォードの名前があります。本馬はそのブランドフォード直系にあたるバステッドの4×5を持っています。
母父は大舞台を苦にしない底力を持つリヴァーマン直仔のルーソヴァージュ。血統表にはヨーロッパの2400mG1を勝った馬の名前が並んでおり、距離延長は苦にならないはずです。前走は先行馬に厳しい競馬でしたが、血統的にむしろ東京のクラシックディスタンスで爆発しそうな要素が多く見られます。
ここ数戦折り合い難を露呈し、その影響で終いが甘くなり誰かに差されるという競馬が続いていますが、陣営は様々な工夫をこらしたことで、だいぶマシに。NHKマイルCで騎乗停止になった岩田騎手が2週間付きっきりで調教するなど、手を尽くした今回。一生に一度の舞台で深い輝きを見せてくれることを期待しましょう。
☆ヒストリカル
(父サンデー系ディープインパクト、母父ノーザンダンサー系ノーザンテースト)
カンパニーの半弟で、トーセンホマレボシとは母が違うだけで完全同配合の本馬。毎日杯から直行という異例のローテでダービーに挑みます。
トーセンホマレボシの母エヴリウィスパーからはどちらかというとパワー型の小回り向き先行馬が出やすく、ヒストリカルの母ブリリアントベリーからは芝向きの、斬れが武器の産駒が出ます。
この兄弟は半兄レニングラードが距離をこなしているように、本質的にはスタミナを持っていることから、2400mは守備範囲です。この兄弟の特徴から、いずれはもう少し前で競馬する馬になるでしょう。しかし現状は広いコースで脚をじっくり溜めるのが向いていることから、東京替わりもマイナスにはなりません。母母父が短距離的スピードを持つクラフティプロスペクターで、スピードの裏付けもあります。
絶好枠の1枠2番から内でじっくり溜めて、最後にうまく末脚爆発となれば、歴史に残るダービー馬の仲間入りが可能でしょう。
続いて、有力馬の血統分析です。
・ゴールドシップ
(父サンデー系ステイゴールド、母父パーソロン系メジロマックイーン)
内田博幸騎手の離れ業により皐月賞馬となった本馬。母母父がエンジン掛かりが遅めのプルラリズムということもあり追えば追うほど伸びます。内田騎手は手が合っており、直線長いコースも問題ないでしょう。
ただ、ステイゴールド産駒は中山で勝ち切り東京で惜敗するところがあり、実際同産駒で東京GIを制したのはオルフェーヴルのみ。いわゆる『黄金配合』ですが、オルフェーヴル兄弟がノーザンテーストの機動力、器用さを持っていることを考えると、良馬場の東京でスローで流れた場合取りこぼす可能性は十分あるはずです。
共同通信杯で良の東京をこなしていますが、冬の東京の少頭数。東京の多頭数重賞の瞬発力勝負がこなせるかどうかは未知数とも言えます。付けて▲の評価でしょうか。
・フェノーメノ
(父サンデー系ステイゴールド、母父ノーザンダンサー系デインヒル)
青葉賞を完勝してダービーに挑む本馬は、ゴールドシップと同様、父ステイゴールド。ダービーと同じ舞台で完勝は評価できます。
配合的にはナカヤマフェスタに近く、伯父にジャパンカップ2着のインディジェナス、東京3戦3勝の実績を考えれば、ここも好勝負可能です。ただ、様々な要因から突き抜ける配合とも思えないだけに、買うなら基本は2、3着付けだと思います。
リボーの血を持っている馬はダービーと相性が良く、リボーの5×5のクロスを持っているのは好感。GIの舞台でも怪物ぶりを発揮できるでしょうか。
・アルフレード
(父ロベルト系シンボリクリスエス、母父ヘイロー系サンデーサイレンス)
NHKマイルCで復活の2着。鞍上に日本が誇る名手・武豊騎手を迎え、ダービーに挑みます。
ダービーで好成績を残しているロベルト系とサンデーの組み合わせですが、母の伯父がサクラバクシンオーで距離を心配する声が根強く聞かれます。ただ、2代母の伯父はアンバーシャダイ。本質的な距離適性はマイラーでしょうが、3歳春までは距離もこなせます。
大外枠に入ってしまいましたが、そこは武豊騎手の腕に賭けましょう。マイラー的スピードはメンバー随一。叩き3戦目で調教も完璧、ハマれば一発あります。
初の一口出資馬がダービーに出てくれたことには、アルフレードに感謝の言葉しかありません。名手を背に、一つでも上の着順を目指してほしいものです。
・グランデッツァ
(父サンデー系アグネスタキオン、母父ノーザンダンサー系マルジュ)
皐月賞5着からの巻き返しを狙う本馬ですが、半姉が桜花賞馬マルセリーナ、そして母系に重ねられてきたのはマルジュ、ディスタントリレイティヴ、ファイナルストローとマイラーばかり。皐月賞でも指摘したのですが、2000m以上のGIで大外枠を引いて盛り返せる配合ではありません。
今回も17番枠からの発走。厳しい戦いとなるでしょう。
・ワールドエース
(父サンデー系ディープインパクト、母父ズルムー系アカテナンゴ)
世代トップクラスの実力を持ち、前走皐月賞も負けて強し、東京替わりはプラスと見られている本馬。ドイツ血統が入っている分持続力のある末脚、小回りへの対応力が補強されるなど、ダービーでも好走する力はあります。ただ、弱点がないわけではありません。
サンデー系×ドイツ血統の牡馬は総じてエンジンの掛かりがワンテンポ遅いところがあり、内を突くと良さが出ないのです。大外を回しているのはそのため。サンデー産駒がいなくなったダービーで、4コーナー大外を回って馬券になった馬はゼロ。よほど飛び抜けた力がない限り届かないケースは十分考えられます。
調教も少々緩めで、この調教で大外回って上がり33秒台前半を叩き出せるのか、疑問符が付きます。ちなみに、皐月賞で大外一気で馬券になった馬は、軒並みダービーで馬券になっていません。ここも△までの評価が妥当と思われます。
まとめ
血統注目馬…ディープブリランテ、ヒストリカル
▲…ゴールドシップ、フェノーメノ
△アルフレード、ワールドエース
消し…グランデッツァ
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
さて、うまカレでは様々なコンテンツを通じて皆様に競馬の面白さ&楽しさを伝えようとしております。そのコンテンツのひとつとして『うまゼミ!!』を土曜日18時頃からUstreamにて放送しております。今週は東京優駿(日本ダービー)。血統、ラップなどからこの一戦を大学生達が徹底分析していきます。ぜひご覧になってみてください。
…44講目、最後の競馬学概論が終わりました。少々寂しいです(笑)
私自身、『競馬学概論を参考にしました!』という声を頂く度に、このコラムを充実した内容にしようと努力してきました。
血統、ラップなど、競馬には様々な予想ファクターがあります。それぞれとても奥深く、興味深い分野。これを読んでくれている皆様が、また新しい予想ファクターを研究するきっかけとなったのなら、大変嬉しい限りです。
44講も続けられたのは読者の皆様のおかげです。うまカレ一同、大変感謝しております。またどこかでお会いするかもしれません。その時はまたよろしくお願いします!『競馬学概論』ご愛読、ありがとうございました。 (うまカレ元代表・早大お馬の会会長 佐藤 航)
★佐藤君の前回担当はNHKマイルC
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