2012/04/30 長谷川 仁志「仁志長谷川の○○な回顧」
【メイン回顧】野性味が失われたオルフェーヴル
驚愕の結果となった今年の天皇賞・春。波乱を演出したのは14番人気のビートブラックだが、ダイヤモンドSや日経賞といった、最近の古馬中長距離戦線で見られたシーンが、古馬の最高峰である天皇賞・春で起こってしまった。特に今回の天皇賞・春と日経賞についていえることは、決して勝ち馬がスローで逃げたわけではないということ。今回は前半の1000mが60秒0で中盤の1000mが61秒9となり、終盤の1000mが60秒を切る時計。勝ち馬が出した2400mの通過2分25秒9は確かに速い時計で、後ろの騎手が“速い”と錯覚してしまう流れかもしれない。とはいえ、オルフェーヴルにいたっては2400mの通過が2分30秒台となり、4?5秒は離されていることになる。これはペース音痴と思われてもしかたがない。
そして、勝ち馬のビートブラック。ディープインパクトのレコードにコンマ4秒差は立派だが、当日の未勝利戦で1分33秒1が出る今の馬場を考えれば全てを鵜呑みにはできない。ただ、菊花賞で3着に入線しているように元々底力はある馬。今後も注意は必要だろう。
2着のトーセンジョーダン。岩田騎手はある程度出して行き3番手集団を追走。また、この位置だからこそ2着にこれた。速い流れの3200mで結果を残せたのは今後に繋がるはず。
ウインバリアシオンは3着。これまでのレースよりも前目での競馬を試みたが、後ろにオルフェーヴルがいるので動くに動けず。これはどの馬にもいえるが、2着以下の騎手全てがオルフェーヴルに気を取られていた。
4着のジャガーメイルは、さすがに一昨年の勝ち馬で、底力は健在といったところ。
GI初挑戦となったギュスターヴクライは5着。力は出し切っているが、数戦前までは条件戦を走っていた馬で、ブエナビスタなどといった、古馬の有力どころと戦っていた馬との差が今回の5着という結果になった。
15着のローズキングダムはスローの追い込み馬になってしまった。もう一度花を咲かせるのなら安田記念に向かうという手もある。
ここで、今回のポイント。天皇賞・春が特殊な流れだったのは下記のラップを見れば一目瞭然。もしマクリを打つなら赤字の12秒台が3つ続いたところ。ここでマクリを打てば勝機もあったが、どの馬も動けなかった。
参考ラップ
13.0 - 11.6 - 11.3 - 11.7 - 12.4 - 11.9 - 11.9 - 12.7 - 12.7 - 12.7 - 12.1 - 11.9 - 11.4 - 11.7 - 12.3 - 12.5
そして、オルフェーヴル。池添騎手が折り合いに専念し、道中は思い描いていた展開となったが、いかんせん位置取りが悪すぎた。また、パドックからもこの馬からが持つ圧倒的なオーラが感じられず、調教再審査などの色々な要素が加わりこの馬が持つ野性味が失われた気がしてならない。ヤンチャな面を見せての11着と、何もせずに終わってしまった11着では結果こそ同じだが中身は違う。オルフェーヴルを優等生の型に嵌めてはいけない。
最後に先週、一番自信があったレースはルーラーシップが勝った香港のQEII世C。この馬のベストは2000m?2200mで、決してステイヤーではない。また、大きなフットワークと走法から、レコード決着となった昨年の天皇賞・秋のような速い時計勝負は向くはずはなく、金鯱賞やAJCCなど力の要る馬場が得意。2分2秒ぐらいの決着となる香港は最高の舞台で、まず負けないと思っていた。この結果ヨーロッパの馬場が向いているという意見も出てきたが、そこまでヨーロッパの競馬は甘くはない。ましてや凱旋門賞は2400mで行われる。ならば、アーリントンミリオンなど米国の競馬を使ってみるのも一つの手であろう。米国なら芝のGIをいくつも勝てる器だ。そして、最後はBCクラシックに向かうというのも面白いと思う。
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