2011/05/30 棚井 伸一郎「トレセン放浪記」
【トレセン放浪記】増える鼻出血とその背景(1)
ダービーが終わり今週は安田記念。そして、6月18日からは中山・阪神・函館の3場開催と、いよいよ夏競馬が始まります。
梅雨が明けて夏へと向かって気温がどんどん上昇していくわけですが、この時期に増えると言われているのが鼻出血、いわゆる鼻血です。同じ鼻血でも馬には大まかに分けて2つの症状があり、ぶつけたりすることで鼻の粘膜を傷つけてしまう“外傷性”のケースと、肺での出血が鼻から出てくる“運動誘発性”のケースがあります。
現在JRAでは、競走中に鼻出血を発症した馬について、外傷性でなければ「1カ月の出走停止」というルールが定められています。これは肺での出血によって呼吸に障害が出る可能性があり、能力発揮という観点からも影響が出るとされているからです。
結果的に勝利を挙げることができましたが、09年のジャパンCでウオッカが競走中に鼻出血を発症。また、同年の3月にドバイに遠征した秋華賞馬・ブラックエンブレムも競走中に発症しました。こうしたケース以外にも毎週レースのあと、JRAから発表される出来事の欄に『○○○○○号は鼻出血のため1カ月間出走停止』という文字を見かけるのですが、実際に現場でも「鼻出血が多くなっている」という声を厩舎関係者から聞きます。
肺からの鼻出血というのは慢性化することも珍しくないのですが、症状が軽いため出血を繰り返す馬は少なくないと言われています。しかし、競走馬の診察に当たっている獣医の方々も厩舎関係者と同じように「鼻からの出血は確認されていないものの、肺出血を起こしている馬は相当な数に上るはず」と懸念しています。
米国では『ラシックス』など止血剤を投与して競走することが許されていますが、日本やヨーロッパではそれが認められていません。頻発してしまうと競走生命にも影響を及ぼす鼻出血。それが今増えている背景には意外な原因があるとされているのです。
(次週に続く)
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