2010/07/23 棚井 伸一郎「トレセン放浪記」
飼い葉食いが悪い馬への“珍”対処法
毎日、トロけてしまいそうなくらい暑い日が続いています。美浦トレセンでも、朝8時にも関わらず30度を超える猛暑ぶり。こうなると“食欲減退”という方も少なくないはずで、そうめんやざるそばなどを食する機会が自然と多くなるのではないでしょうか。
一方、馬たちの場合は、暑さに左右されるということではなく、トレーニングによる疲労やストレスなどによって、「飼い葉食いが悪い」と言われる食欲減退を示すケースが少なくありません。
多くの厩舎では、食いの悪い馬たちに対して、飼い葉の種類や、与える方法、あるいは時間など、様々な工夫が施されているのですが、草食動物である馬の習性を考えたスタイルを取り入れている厩舎も増えているようです。
それは、地面に生えている草を食べるという本来の状況と同じように、地面に飼い葉桶を置くというもの。寝ワラで隠れてしまったり、ときには排泄物が入ってしまったりということもあるそうですが、「馬によってはそうすることでよく食べるようになる馬もいます」という声をよく耳にします。
ヨーロッパの古い厩舎では、馬房の奥に水飲み場と飼い葉を置くところが備え付けられている光景がみられます。そのスタイルについて、日本では「馬が落ち着くため」という解釈をする人もいますが、どうやら昔はお金持ちが厩舎を持っていて、その廊下を歩くときに、馬がこぼした飼い葉が散らかるのを嫌って、入り口側ではなく、奥にしたというのが真相なようです。
食べる物だけではなく、そのスタイルまでがアスリートである競走馬たちに欠かせない栄養補給。十二分に行われるために、様々な工夫が施されているということなのです。