2012/03/12 棚井 伸一郎「トレセン放浪記」
【トレセン放浪記】関西馬は関西圏のレースしか出られない!?
先々週の弥生賞をコスモオオゾラが制すると、ハナズゴールがチューリップ賞、そして、アイムユアーズが先週のフィリーズレビュー、パララサルーがアネモネSを勝ち、これまでに行われたクラシックのトライアルすべてを関東馬が制する活躍を見せています。
この活躍に“関東馬の逆襲が始まった”と伝えるメディアも出ているのですが、現場の関係者たちからは「まだその差は開いたまま」という冷静な声が多く聞かれます。昨年の同じ時期との比較では重賞勝ちこそ増えているものの、フェブラリーSに出走したのはスマイルジャックただ1頭という状況で、「むしろ差が開いてしまっている」と指摘する声もあります。
そのような状況のなか、未勝利、500万下の馬に関して、新たな規定を設けることが調整されています。それにより、各馬がそれぞれのエリアで走らざるを得ない状況になりそうです。
例えば未勝利、500万下の馬がレースに出走する時、現在は東西同じで『1?5着の優先出走権』や『出走間隔が開いている方が優先』という規定が適用されています。それが今度から関東圏のレースでは関東馬、関西圏のレースでは関西馬が優先されることになるのです。
つまり、前走2着の関西馬が関東圏のレースに出走する場合、関東馬でフルゲートになってしまったら出走することができないのです。フルゲートに満たないレースにしか、出走できるチャンスがないと言っても過言ではありません。もちろん、関東馬が関西圏に遠征するケースでも同じ規定が適用されます。この規定改正はまだ正式に発表はされていませんが、関東馬に追い風という見方がされています。
前々から美浦トレセンは地理的な条件で、栗東トレセンよりも圧倒的に不利と言われ、東西格差の要因のひとつに数えられています。その不均衡の是正が急務なのですが、移転等の経費を捻出するのは不可能ということで、今回の規定改正がその対応策と言われています。
この改正はJRAが輸送費の削減を狙ってのことという見方もされています。ただ動機はどうあれ、かつての日本もそうだったように、関東馬と関西馬がGIなどのビッグレースで激突する、アメリカなら西海岸と東海岸の馬がGIで激突することによって、競馬が盛り上がってきた経緯もあるのです。
公平な勝負をするには、同じ施設で、同じ条件で競争するのが理想です。すぐに同じ条件にするのが無理ならば、それを是正する策が必要になってきます。このままでは東西格差は広がるばかりで、競馬の人気も売上も上がりません。やはり、今の歪(いびつ)なシステムは改善に向かっていかなくてはならないでしょう。
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