2012/04/16 吉岡 司「週刊・若駒総評」
【若駒総評】切れ味ある悍性の強いタイプは消耗も大きい
昨年はオルフェーヴルが3冠を達成した牡馬クラシック戦線。第一弾・皐月賞はフルゲートの18頭で争われたが、土曜の雨の影響も残り発表は稍重。道悪の巧拙、そしてコース取りが明暗を分けた一戦だといえよう。
勝ったのはゴールドシップ。昨年の覇者と同じくステイゴールド産駒で、母の父はメジロマックイーン。マイナス8キロという馬体重であったが、まったく減った印象は受けなかった。柔らかみのある馬体でリラックスして周回できており、返し馬でも伸び伸びと駆けていた。仕上がりは良好だ。
ゴールドシップはパワフルで、持久力のある走りが身上。それだけに、この日の馬場もある程度こなせると判断できた。逆に、以前から芝のスピード競馬になった時にどう対応するかが一番の懸念材料だったため、今回は時計の掛かる馬場になったのが幸いした印象だ。しかもゴール前で渋太いタイプだけに、直線で先頭に立てば簡単にかわされることはない。そこを熟知していた鞍上の好判断、そして勇気がもたらした殊勲だ。
人気を背負っていた2頭についても触れよう。先に2番人気ワールドエースから。この馬は初めての長距離輸送だったが前回と同じ馬体重で出走してきた。対して1番人気グランデッツァはマイナス6キロ。外見的に細くは映らなかったがデビュー以来最低の馬体重だった。
元来、切れ味のある悍性の強いタイプは、実戦で全能力を発揮してしまうために、使い減りするタイプが多い。グランデッツァもこのタイプで、スプリングSからの上積みはどうかというパドック状態だった。しかも、脚長のスラッとした肢勢、蹄の反回もしっかりした走りをする馬で、前走こそ馬場を克服したが、本来は土台がしっかりとした馬場で切れ味を発揮するタイプだろう。下が緩い馬場で全能力を発揮できるかは疑問だった。
それはワールドエースにもいえることで、軽快なフットーワークで駆ける馬であり、馬場の悪いところは通れない。ただ負けたとはいえ、ワールドエースの馬体は今年の3歳馬では最有力だと感じる。446キロの馬体重だったが、それ以上に体を大きく見せていた。今回は二人引きだったが、輸送してもイレ込むことはなかったし、伸びやかな歩様で動きにも窮屈さがない。返し馬でも四肢の伸びが良く、惚れ惚れする動きだった。
「やはりこの馬は走る!」というのが、皐月賞で受けたインパクトだ。
3着ディープブリランテは、今回は鼻革を着用していた。パドックの前半ではリラックスしていたが、周回を重ねるごとに、うるさくなってきてしまった。この馬の場合は能力ではなく、気性面に課題が残っている印象を受ける。
4着コスモオオゾラも、周回を重ねるごとにうるさくなってきたが、許容範囲ではあった。返し馬でも伸び伸びと走っていたし、体調面の良さは伝わってきたが、勝ち時計が2分1秒3では対応できない。道悪適性はやはり高く、もし皐月賞がさらに馬場の悪かった土曜に行われていたら、もっと上の着順もあったかもしれない。
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